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先に口を開いたのは彼の方だった。
「……リスナーさん、ですよね。」
……やっぱるぅ💛くんなんだ……。
私は、嬉しさと、申し訳無さと、切なさと混乱でいっぱいな感情を抑える為に、とりあえず少しだけ目を逸した。
「…はい。」
答えに一瞬迷った。けど、隠す理由なんてすぐに思いつかなかったし、どうせ隠しようがない。
「なんで、”あの時”わかったんですか?」
「あのとき?」
「ほらその、白川さんが僕の曲を聴いていたときです。」
見てたんだ。少し恥ずかしい。
「……推し始めてから、今日の今日まで、るぅ💛くんの曲をずっと聴いてましたから。曲の構成の仕方に面影があったので。」
さっき、ここに来る途中で聴いてた音楽も、るぅ💛くんが作った曲だった。とても落ち着くから。
「引退してから、バレないようにって、少し変えてたんですけどね…。バレちゃいましたか。」
本当に申し訳ないことをしたと思っている。ずっと隠して来たのに、私が暴いてしまって、しかもそれが元リスナーなんて。
「…私、やっぱやめます。」
「え?」
「今回、作るのやめます。一緒にいたら、るぅ💛くん、困ってしまうので…」
「なんで?」
「え?」
「だって音楽、作りたいんですよね?」
「それは………はい…。」
「で、今日は僕と作るために来たんですよね?」
「……。」
「作りたく、ない?」
「っ…!?」
急に目の前のるぅ💛くんが耳元で囁いてきた。え、なにファンサ!?stpr時代で培ったファンサテクをこんなとこで使うんですか!?ていうか私ただでさえ男性の免疫ないんですけど!?
「つっ…、作ります…。」
「では、これからしばらくよろしくお願いしますね。」
るぅ💛くんが笑う。すっごく清らかな笑顔で。でも気のせいか、少しの圧があった…。
「……。」
さくと初めて対話して別れた後、るぅ💛は先に部屋を出た。
後にした部屋からは、るぅ💛が出た瞬間、『ヤバいヤバいヤバいどーしよ!?』と、慌てるさくの声。
「やっぱりやめておいた方が良かったかな…。」
少し不安になるが、その反面、大丈夫だろうという信頼がどこからか湧いてくる。
数日前、初めて、さくが制作を手伝ったという曲をいくつか聴いたるぅ💛は衝撃を覚えた。
作詞はさくの先輩がある程度作ったらしいが、そこからさらに良くしたのがさくだと言う。しかも、作曲についても作曲家に、こうした方がいいんじゃないか、と的確に言ったそうだ。
今の曲とstprだった時の曲を同じ人物が作ったと判別出来るのも凄い。
サポートだし、まだまだ全然未熟だとはいえ、これがまだ半年未満の者のだとは少し信じがたい。
それに、彼女は自分のことを配慮してくれた。もしかしたら、自分を良く見せようとした演技かもしれないけど、
『誰かに自慢したいぃぃ…。けど絶対ダメだよ私!?』
彼女の大きい独り言が聞こえる。それを聞いてるぅ💛は思わず小さく吹いてしまう。
と、同時に、
「一緒に作るの楽しみだなぁ…。」
と安心と期待を胸に歩き出すのだった。