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数日後、私は再び仕事相手である推しと会うことになった。
理由はもちろん、どんな曲を作るかの話し合いだ。
最近ではリモートでやっているらしいが、私はまだ駆け出しのひよっこなので、近くで学んだほうが良いという、るぅ💛くんの判断らしい。私の推し優しすぎる。
話し合いの休憩中、私はふと思ったことを口にした。
「あの、私、なんて呼べばいいですか?」
「はい?」
「〇〇さんとか、るぅ💛くんとか、るぅ💛さんとか、なんて呼べばいいかわからなくて…。」
「あー…。」
ちなみに「〇〇」とはるぅ💛くんの作曲家としての名前らしい。本名かどうかはわからない。
「〇〇さん」だと違和感凄いし、「るぅ💛くん」だと言い慣れているけど馴れ馴れしいし、「るぅ💛さん」もどうだろうか。
「なんでもいいですよ。白川さんが呼びやすいので。」
なんでもいいが一番困るんだよなー…。でもマシなのは……
「じゃあ、るぅ💛さんでお願いします…。」
「わかりました。あっでも、他の人の前では呼ばないでくださいね?」
「それはもちろん!」
そんな感じで無事呼び方も決まり、私達は再び作業することになった。
「恋愛ソング…難しい……。」
「白川さんは恋とかしたことないんですか?」
「一応したことはありますが、頭湧いてる小学生の黒歴史ですよ。」
そう、今作ってるのは恋愛ソングなのだ。今回曲の提供先の人から、恋愛ソングをリクエストされたのだ。
「22年間、一度も誰かに好かれたことないっていうのを、もはやネタにしてますよ……。」
「異性と一度も二人きりででかけたことないんですか?それならまだつく…」
「ないです。」
るぅ💛さんが考え込んでしまった。本当にすみません。
「……あ。そういえば。」
「はい?」
「今度、花火大会があるらしいんですよね。」
「はなび…。あっ、そこで、インスピレーションを高めるってことですね!」
ちなみにインスピレーションの意味はしっかりとはわかってない。
「どうですか?」
「はい!行ってきます!」
すると、るぅ💛さんが怪訝な顔をした。
…なにかヤバいこと言っちゃった?
「……一人で行くつもりですか?」
「…?はい!一緒に行く人いないので!」
「女の子一人じゃ危ないですよ!?」
「いやいや女の子って!私もう成人ですよ!」
「関係ないです!」
るぅ💛さんが小さくため息をする。多分心配してくれている。正直嬉しい。ただ、私は子どもじゃないのだ。祭りくらい一人で行ける。
「……僕もついていきます。」
「……………え?」
「そっちの方が全然安全だし、なんなら曲作りでも同じ視点で見るのは大事ですから。」
「……。」
ぐうの音も出ない。なにより、曲作りの話も持ってこられたら言うとおりにするしかない。
「わ、わかりました…。」
これはデートじゃない仕事だ、と必死に自分に暗示をかける。そうでもないと、目の前の彼を意識しちゃいそうで…
「じゃあ、デート、楽しみにしてますね。」
るぅ💛さんが笑顔で言った。
……はい意識しちゃいました。何してくれてんですか本当に。
家に帰った私は、「推しとデート」ということをやっと自覚して、一人で叫んでたのだった。