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「痩せ我慢とかしなくていいから。俺の前では、特に」

「……ありがとうございます」


加東の視線が前方へ移ったことに気付き、准は彼の横顔を盗み見る。心の内ではかなり戸惑っていた。

彼が自分を見てないことに安心している。それは随分おかしな話だ。本当は誰よりも見てほしい……自分だけを見てくれたら、この上なく嬉しいはずなのに。一体何がしたいのか、准は自分の気持ちが分からなかった。

街はドレスアップし、夜の音と光が弾ける。やがて小綺麗なバルに到着し、店員に案内されるまま席に座った。

「よーし、まず准君が食べたいもの選んでね。あと俺のオススメも頼むからちょっと食べてみて」

彼の言葉に甘えて好きな料理を頼み、飲み物は暑いからビールを頼んだ。とりあえず喉が渇いてしょうがない為、すぐに乾杯した。


「……ふぅ。それじゃさっそく、准君の悩みを聴かせてよ。力になれるかどうかは分からないけど、せめて話だけでもね」


さっきまでと違う、加東の真剣な眼差しに准は緊張した。心の奥深くに隠してるものまで見抜かれそうな視線。……だからこそ、いっそ全部さらけ出してしまいたくなる。

でも、今の自分の悩みって何だろう。

貴方のことが気になってます、なんてことは口が裂けても言えない。相談が一世一代のプロポーズになる。

心の準備もしてないし、恋愛の話はNGだ。なら、行き着くところはアレしかない。


「……実は、最近知り合った奴のことでちょっと悩んでます」


運ばれてきた料理を口にしながら、ぽつりぽつりと心の底に沈んでいた言葉を吐き出した。

「あまり詳しく知らないのに、諸事情から毎日関わらなきゃいけないことになっちゃって。悪い奴じゃないと思うんですけど、緊張というか……よく分からない気持ちが胸ん中に生まれて」

「ほー。それで?」

「そいつは、俺の為に色々やってくれるんです。たまに迷惑だったりするけど、多分親切心で。だから別に好きなわけじゃないけど、俺もそいつになにか返せないかなって、ちょっと思い始めまして」

……あれ。

何だか、喋ってるうちに考えがまるっきり変わってるぞ?


額に嫌な汗が伝う。途中から完全にひとりで喋っていた。気付いたら運ばれてきた料理が冷めるほど、時間が経っていた。


おかしい。

涼についての相談に間違いはないけど、まるでもっと親密になりたい、というニュアンスで話してしまった。

加東さんに相談するにはあまり良い気がしない。……でも、もういいや。今日は深く考えず、とにかく飲むことにしよう!!




ファナティック・フレンド

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