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あてんしょん ⚽⛓️
○凪玲
○W杯優勝後の話
○成人済
○ナチュラルに同棲してます
○曲名が出てきます
○ナレは恋人同士(世間には非公開)
○チムレが玲王セコム起こしてます
○凪が独占欲強め
○捏造、キャラ崩壊、口調迷子
○凪視点
それでも良ければどうぞ!⬇
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千切豹馬@CHIGIRI_H
凪を手笛で呼びつける玲王wwwwww ちなみにこの後凪のリクエストで〇〇って歌を自慢の美声で歌ってて腹死んだwwww
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いつものように何気なくTwitterに投稿した千切の動画は、玲王の手から美しく流れ出る音楽により、餌に釣られる犬のような凪とのバカップルぶりが垣間見えるただの動画であった。
投稿した本人も、手笛で呼びつけた玲王も餌につられた凪もまさかこんなに世界中でバズるだなんてその時誰1人想像していなかった。
そう、俺たちは玲王の凄さに慣れすぎてしまっていたのだ。
投稿した当日の夜、同室の千切のスマホから通知音がピコンピコン毎分毎秒鳴っていて、玲王の膝枕を堪能して夢の世界へと旅立とうとしていた凪はイライラしていた。
「お嬢、通知切ってくれない?うるさくて玲王の膝で寝れない」
凪はモゾモゾと動いて玲王に甘えるように、玲王の腹に擦り寄りながら千切のことを鬱陶しそうに睨みつける。睨みつけられた千切はいつものように「このバカップルめ…」と、呆れながら憎まれ口を叩くだろうと予想していた凪は、通知音に驚いて固まる千切を見てなにかがおかしいとようやく察した。
凪を膝の上にのせて撫でていた玲王も千切の怯えるような表情に心配したのか、凪を起こして千切の座り込んでいる千切のベッドへと移動する。
「千切、お前大丈夫か?」
玲王に手を引っ張られて千切の前へ連れていかれた俺は、千切の状態なんて特に気にしておらず、千切を心配する玲王の心配そうな表情と声色に可愛いなぁ…と呑気なことをボケーッと考えていた。
「ヤバい玲王…悪い、お前の手笛の投稿バズっちまった…」
千切はヒクヒクと口角を無理やりあげたのだろう、作り笑いをしながら自身の先程投稿した玲王の手笛の動画を俺たちに見せるようにスマホを前にやる。
動画の再生数は脅威の1500万超でRT数が5.0万、いいね数はなんと30万という芸能人でもなかなか叩き出すことのできない数字を叩き出していた。これには玲王もびっくりしたようで俺と手を繋ぎながらピシャリと固まって動かなくなる。
一方、俺はこの時改めて玲王の凄さを体感した。天才ばかりがいるブルーロックでの生活のせいですっかり忘れていたのだ、玲王がありえないほどのスーパーマンであることを。玲王は自身で言うように何でもできてしまう(本人が無自覚の)天才なのだ。それを1番近くで見てきた俺は、玲王の凄さを当たり前に思えるように麻痺しまっていることにようやく気づいた。
「まさかこんなにバズるとは思ってなくって…ヤバイよな…今からでも消しとく…?」
千切は通知が鳴り止まないスマホをふるふると揺らしながら玲王を見つめる。玲王も玲王でありえないものを見るかのように千切のスマホを見ていた。
「いや。こんなにバズっちまったら転載されてるだろうし無駄だろ…」
玲王はまだ驚きが隠せないようで千切のスマホを凝視する。実を言うと俺も俺で焦っていた。それは何故かと言うとやはり、自身の恋人の凄さを自分だけ知っているという最高の思いをしていたのに、こうもあっさりと他人の目に触れ、尊敬され凄いともてはやされるのが気に入らないのだ。
玲王の凄さは俺が1番近くで見てきたし、1番よくわかっているのに、さも知っていたかのようにコメント欄では「流石御影コーポレーション御曹司」、「玲王様はやっぱり最高!!」という玲王の凄さを元々知ってますアピールは平和主義と自負している自分でも腹が立つ。
「ねぇ千切、このコメ欄の奴らブロックしてもいい?」
「はぁ!?!?ダメだろ!!!」
「凪何言ってんだよ!みんな褒めてくれてるだろ!?」
千切と玲王はそれまで放心状態だったのに、俺の一言で餌に群がる鯉みたいに詰め寄ってくる。玲王は寧ろどんどんよってきて欲しいけど千切はちょっと離れて欲しい。暑苦しい
「…おい凪お前、今俺のこと暑苦しいとか思ったろ?」
「うへぇ…すげぇね千切。エスパー?」
千切が呆れ顔ではぁ…と溜息をつきながら通知音が鳴るスマホの電源を落とす。玲王は俺と千切のやり取りに”?”という文字が頭の中でいっぱいになっているのだろう、首を傾げてポカンとしている。可愛い、本当に可愛い。存在が罪というオタクの名言があるけど今ならわかる。首がもげるくらい縦振りしたいくらいにはわかる。
心の中で荒ぶっている俺は、皆からよく言われるポーカーフェイスを発揮して何事もなかったかのようにTwitterを開いてトレンドを見る。やはりトレンドNo.1に見事ランキング入りしている玲王の名前を見ると、悲しくもあり嬉しくもある複雑な感情が入り乱れる。そんな俺の心情も知らずに俺に続いて玲王もTwitterを開いたのだろう、「おっ!トレンド入りしてんじゃん!」と嬉しそうに微笑む。
なんて罪な男なのだろう…と、恋人の罪作りな笑顔に溜息をつきたい気持ちを抑えて、嬉しそうに笑う恋人の唇に堪らずちゅっとキスをすると、千切にスパンッと気持ちいい音を立てて思いっきり殴られた。
「本日はなんと今Twitterで話題沸騰中の、御影 玲王さんと相棒の凪 誠士郎さんに来ていただきました!!」
パチパチと拍手をされながらスタジオに入る俺と玲王は、テレビでよく見る芸能人達に軽くお辞儀をしながらゲスト席へと着席した。
そう、俺たちは今生放送でテレビスタジオにいる。それは勿論俺の横にいる恋人の御影玲王が関係していた。
あの動画は案の定、バズりにバズりそれはもう多くの人の目に入り、世界中から玲王に対する賞賛の声が寄せられるビッグニュースとなった。 だからか、俺の出会う前に玲王と出会っている輩達がコメント欄に集結して、玲王の武勇伝を自身の武勇伝かと思うほどに語りまくった。
例えば『玲王は世界的にも有名なスタジアムでピアノの発表会をして見事に優勝した』とか、『柔道界隈では有名な師範をものの2ヶ月で倒した』とか、『有名な抽象画の展覧会で有名人から直々に絵を買い取りたいという申し出を貰うほどの実力』などなどかつての玲王の栄光が到底指で数えきれないほど書き込まれていた。
本当かどうかわからなかった俺は、ご飯を食べている時にこの書き込みの真偽を本人に話して事実確認をすると「え、なんでお前がそのこと知ってんの?」と、コメントの書き込みを全て肯定した。これには近くで食べていた潔もガタッ!!と大きな音を立てて椅子から転げ落ちるほど驚いていた。潔の隣にいた蜂楽も目を丸くして驚き、千切は乾いた笑いをしながら潔と同じく倒れ込んだ國神を起こしていた。
あまりの驚愕の事実に困惑したからなのか、珍しく潔から玲王に話しかけてきた。
「ち、ちなみにだけどさ…Twitterで出てきたこのテニスで全国優勝してる美少年ってお前じゃないよな…?」
潔は怯えるようにスマホを玲王に見せると、玲王はハハッと面白そうに笑ってみせた。その笑いを「これは玲王じゃなかったのか」と受け取った潔はホッとしたように胸をなで下ろしたが、笑顔で玲王が
「懐かしい写真だな〜!これいくつん時だ?」
と、言ったせいでサァーッと顔から血の気が消え失せ、膝がガクガクと笑っている。そんな潔を吹っ飛ばしていつもは絶対に絡んでこないはずの馬狼が玲王に迫ってくる。
「おい、これお前じゃねぇよな?」
そう言って見せてきたのは【謎の天才中学生現る!!】という記事の真ん中に写る美少年が水泳大会でトロフィーを両手に笑顔で微笑んでいた。
「おっ!!すげぇ懐いな!確かこれ中一の夏くらいか?そういや賞とったな〜!」
玲王はたはっ♪と優勝した光景を思い出したのか、楽しそうに笑うが目の前の馬狼は信じられないものを見るかのような目で玲王を見る。
「そういえば昔テレビにこの写真の子みたいな子が出てたよね♪もしかしてそれも玲王っち?」
動揺する潔と馬狼を置いていって蜂楽は玲王を楽しそうに見つめる。
「ん?それどの話だ?」
玲王は出てたことを肯定するが出ていることが多いらしくいつの事だか身に覚えがないようだ。それを見た潔は膝が笑っていたはずだったが、いつの間にか腰を抜かしていた。
「えっとねぇ…確かかっこいい曲のダンス踊ってたCMだったと思う!」
「えー…ダンス…」
蜂楽のキラキラした期待したような目に諭されて玲王は頭をぐるぐると回転させる。そして思い出したのかあっ!とした表情でにこやかに笑う。
「それ多分ダンスクラブの宣伝の時だわ!!いやぁ懐かしいな!!」
「凄いね玲王っち!!それじゃあそのダンスって今も踊れる?!」
「あぁ!!勿論踊れるに決まってんだろ?この俺だぜ?」
玲王は蜂楽のキラキラと輝く視線に有頂天になったのか、あからさまに上機嫌になって楽しそうに笑う。
「じゃあさ!!このELECTって踊れる?!実はCM見た時から玲王っちとデュエットしたいと思ってんだよね♪」
「ELECT…?あー…もしかして俺がCM受けた時に踊ったやつ?」
「そうそれ♪あのCM見つけてから玲王っちの真似して踊ってたんだよね!」
蜂楽はふふっと練習した過去を思い出して楽しそうに笑うから、玲王はそんな蜂楽にすっかり感化されてしまって「ちょっと曲聴いて思い出させろ!」と、意気揚々とYouTubeでダンスを見て思い出したのか曲を流しながら軽く踊ってから蜂楽に声をかける。
2人は楽しそうに笑い合ってボーッと玲王の過去の武勇伝のあまりの量の多さに、頭がパンクしかけていた俺に声をかけてスマホで動画を撮って欲しいと玲王に可愛くお願いされたので、喜んで動画を撮ると蜂楽は千切が起こしたバズり動画を知っているのにも関わらず、SNSに上げてしまい再生数がエグいことになってしまった。
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蜂楽 廻@BACHIRA_M
昔見たCMを本人と完全再現してみた♪
玲王っちのダンス今もキレキレで踊ってて楽しかった〜!!ヽ(*´∀`)ノ
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蜂楽はこのダンスをInstagramとTwitter、どちらにも上げてしまったせいで玲王の知名度はドカンと爆上げ。蜂楽の投稿のおかげで玲王の過去の壮烈な栄光の数々がSNSでは持ちきりだ。流石の玲王の両親も事の重大さに気づいたのだろう。蜂楽の投稿があった次の日には玲王は「両親に呼び出しくらった…」と、嫌々ながらも両親の待つ御影へと帰って行った。
そして今、既にサッカー関連で呼ばれてスタジオにいた蜂楽と潔、千切と國神に軽く小さめに手を振りながら玲王と席に座って、俺たちを知らない人のための紹介PVを大人しく見ている。数分の間玲王以外の奴のPVを眺めるのは流石に面倒くさくて、途中から集中できるように玲王に頭を撫でてもらいながら視聴していた。
「実は今日お呼びしたBLUEROCKの皆さんには、実は視聴者の皆様からお便りが来ております!!それではどうぞ!」
と、馬鹿みたいにはしゃぐ司会の芸能人はあからさまにニヤついていて気持ち悪かった。その気持ち悪い視線の先にいたのは自分の恋人だと気づいた時には、司会のやつを1発…いや、5発ぶん殴ってやりたいと思ったが玲王の印象が下がるのはナンセンスなので我慢した。
俺は静かに燃える怒りに頭を飲まれないように、玲王のキラキラと太陽のように輝いている綺麗な目を見ようと玲王の方を見ると、俺の視線に気づいた玲王はくしゃっとほのかに笑いながら俺の頭を撫でる。
そして始まった視聴者のお便りとやらはスタッフの自作自演でしかない、皆が内心気になっている玲王の動画についての内容ばかりだった。
『御影さんは御影コーポレーションの御曹司だから、昔からテレビに出ていたんですか?』
『御影選手は御影コーポレーション次期社長として色々な部門で章を取っていると、聞いるのですが本当ですか?』
『やはり小さい頃から御影コーポレーションの育児方針で、色々な事をやっているのですか?』
『御影さんは御影コーポレーションの代表である御影○○さんに言われてサッカーを始めたんですか?』
『何故こんなに賞を取っているんですか?御影コーポレーションを使ったりしてませんか?』
などなど、本当のファンなら聞かないであろう失礼なことばかり並べれる。しかも本当のファンの間では玲王のことは”御影”とは呼ばないという暗黙のルールがあるのにも関わらず、ここの視聴者もどきは暗黙のルールを無視して玲王を”御影”と呼んでくる。
御影と呼ぶ場合はフルネーム、というのも暗黙の了解であるのにも関わらず、ファンと言っている奴らはそれを軽々しく無視して玲王を御影、御影、御影と何度も苗字で呼んで最初はニコニコと笑っていた玲王もだんだんと、失礼な質問内容と御影の名前の量の多さに顔をひきつらせていった。
その玲王よりも酷かったのは玲王を”御影”と呼ぶ度に不機嫌オーラを出す俺と千切、國神だった。俺と千切はすぐ態度に出ると思っていた潔は、まさかの國神もむすっとしていることに気づいてあわあわと1人慌てている。
潔って本当顔に出やすくて分かりやすいよね。操りやすそーと少しでもスタッフに対する苛立ちを誤魔化そうと別のことを考えるも、しつこいくらいに”御影”、”御影”と連呼する司会者にいい加減嫌気がさしてきた。
やっぱ殴っとこうかな、と考えて斜め上にいる千切を見るといまわしげに司会に視線を寄越しており、片手はわなわなと震えて必死に怒りを堪えていた。千切の隣にいる國神もそれは等しく、千切のような”不快です”というあからさまな視線はないが、イラついているのは変わらず額には青筋がたっており、握りこぶしはギリギリと音を立てていた。
それに気づいた潔は顔を真っ青にして蜂楽を涙目で見つめるも、潔が視聴者のお便りを集中して聞けていないから自身を見てきたと勘違いした蜂楽は、「ほら潔、集中集中♪」と最高にぽわわんとした回答を笑顔で答えるせいで潔の目は絶望の色が濃くうつる。
そんな潔の諦めも知らずにスタッフと司会、他の芸人達は楽しくお便りにちょこちょこコメントしながら流し見ていく。イライラが最高点に到達しそうになった時、ようやく紹介動画が終わって司会が
「それでは見終わった感想はどうでしょうか?御影選手、やはり御影コーポレーションの次期社長として活動しているのですか?ここまで見て御影コーポレーションの育児方針に不満などはありますか?」
と、玲王をまたもや苗字で名指しする。質問内容もありえないほど失礼だしコイツマジでなんなの?ウッッッザ…なんなのコイツら、いくらなんでも玲王にも御影コーポレーションにも失礼すぎだろ。常識ママの腹ん中に置いてきた??と、ついに俺の堪忍袋の緒がブチ切れそうになった時
ダンッッッッッ!!!!!!!!と大きな音がスタジオに響いた。
「おい…お前らいい加減にしろよ。上辺だけで玲王のことを語りやがって、気持ち悪い笑顔顔面に貼り付けながら”御影”、”御影”、”御影”ってうるせぇんだよ。”御影”で玲王を決めつけてるお前らには何も話すことはねぇ」
そう言ってスタジオの床を足で思い切り踏みつけたのは、普段の温厚な奴とは思えないほどの風貌で額に青筋をたてた國神だった。 いつもの國神からは想像できないほどの國神の暴走に、ムンクの叫びのような顔面をした潔は、既に魂が抜け落ちて干からびた干し肉みたいになっていた。そんな潔を放置して次に口を開いたのは玲王に激甘対応をすることで有名な千切だった。
「ほんとそれ。お前らしつこいんだよ。”御影コーポレーションの御曹司で次期社長の玲王だから凄い”んじゃねぇっての。”玲王”がすげぇんだよ!!そこら辺わかってねぇやつらが玲王に気安く質問できると思ってんじゃねぇ、下衆共が!」
美人が怒ると怖い、というのはこのことである。流石の鈍感蜂楽もこの状況を察したのか視聴者もどきが言っていた内容を思い出してギロッとスタジオにいるヤツらを睨みつけらる。
「俺も國神とお嬢に賛成。お前ら何様なわけ?上から目線に玲王のことろくに知りもしないくせに一丁前に玲王を知った気になってんじゃねぇよ。大体お前らの自作自演のファンもどきのお便り紹介なんて俺らからしたら面倒臭いだけなわけ。ファンを偽造して常識もママのお腹に忘れてきた餓鬼に、玲王の凄さなんてわからないもんね?玲王が優しいからってつけあがってんじゃねぇぞ、カスが」
ズイズイと俺はイラつきを隠すことなく、司会の胸ぐらを掴んで詰め寄ってメンチをきると、それまでぽかんとしていた玲王が慌てながら俺を背後からギュッと抱きしめて司会に詰め寄る俺を止める。
「俺の代わりに怒ってくれてありがとな…國神、千切、凪。お前らが代わりに言ってくれてスッキリした…でもいくらなんでもやりすぎだ。俺のせいでお前たちの評判下げたかねぇ、だから一旦皆落ち着いてくれ…」
玲王の悲しそうな顔を見て冷静になった俺たちは席に座って、スタジオに入った時のように俺以外のメンバーは作り笑いをすぐさまつくる。(俺は表情筋が死んでいるから無理)
「あ…あぁ…あ、、、」
司会者は175cm越えのメンバーに凄まれて腰を抜かしながら白い顔で声を漏らす。生放送の為、カットも編集もできないため司会者の情けないかっこ悪い姿は見事に全国放送されている。
いい気味だな〜、なんて思って横にいる玲王を見るとやはり怒って貰えたのが余程嬉しかったのか、先程までのゴミを見るかのような目はすっかり消え失せて瞳に薄く涙の膜を張り優しい目になっていた。
千切と國神もそれを察したのであろう、司会者の介抱を番組スタッフ達がしている間に、2人がこちらに移動してきて笑顔で玲王に話しかけてくる。玲王も自分のために怒ってくれた2人の親友に対して楽しそうに笑いながら、かけがえのない2人の親友から向けられた親愛を見せた笑顔に応える。途中から蜂楽と潔もこちらに来て完全に他の芸能人達をそっちのけで話し出す。
「てかさっきの國神怖かったよな〜!俺失神してたわ」
「わ、悪ぃ…まさかあそこまで自分でもキレられるなんて知らなかったわ、、」
と潔の言葉に國神が申し訳なさそうに言い、落ち込みモードに突入しそうになっていた彼に千切は、励ますようにバンバンッと國神の背中を激しく叩く。そして笑顔で
「流石ヒーロー!!かっこよかったぜ!!」
顔からは想像できないほど漢前な笑みを作って、ヒーローと讃えて國神を立ち直させる千切はきっと、誰から見ても頼れる漢だと思う。少なくともここにいる俺たちは千切をそう思っている。
「し、CM入ります!!!!」
俺たちが玲王を囲んで楽しく雑談している時、スタッフの慌てるような声に反応してスタッフの声のする方を見ると、司会者の男がフラフラと死人のような顔をしてスタッフに抱えられていた。
やっと消えてくれた。と、一時的に司会を任されていた銭ゲバに対して思った感情はこれだけだった。玲王以外のメンバーはどうでもいいものを見るかのような目で司会者の姿を目の端に捉えて、すぐに何事もなかったかのように会話を再開する。玲王は申し訳なさそうな顔をしていたが蜂楽と潔の励ましによってすぐに笑顔になってくれた。
CMが終わり撮影を再開しようとした時、スタッフから司会者が急遽早退するということを伝えられ、俺たち以外にスタジオにいた芸能人の女性が代役として司会を務めることになった。
その後の撮影は実に順調で先程までの気まずい空気は一気に消えた。最初は怯えたように声をふるわせていた女性芸人だが、潔の「玲王の手笛みんな気になってるだろうから聴かせてやれば?」という助け舟により、玲王が手笛を披露すると一気にスタジオが明るくなって台本通りの撮影を再開する。
「突然ですが、BLUEROCKの皆さんに特別サプライズ映像を番組の方からご用意させていただきました!!」
女性芸人は元の元気を取り戻して楽しそうに場を取り持って、番組が用意した特別映像をスタジオのみんなで鑑賞する。
『えー、実は今回!御影コーポレーションの方から噂の御影 玲王選手についてご取材の許可をいただきました!!』
イェーイ!と画面越しで喜んでいるのは、急遽早退となった司会者だった。映像とはいえ憎らしい顔を見てまた苛立ちが湧いてくる。やっぱ殴っとけば良かった…と、思ったのもつかの間、司会者(前任)が御影コーポレーションのビルに入った瞬間に出てきた人物は、玲王が御影の中で最も信頼を寄せる女性だった。
「ばぁや!?!?」
画面越しであるにも関わらず、驚きを隠せない玲王はばぁやさんの登場により思わず叫んでしまい、申し訳なさそうにすみません…と小さく謝る。
『えぇ、私玲王ぼっちゃまの執事を務めさせて頂いております、ばぁやと申します。』
ばぁやさんはどこかのゾルディック家に使えている使用人のような風貌で、司会者をにっこりと見つめる。その圧は凄まじいもので初見の司会者は後ろに後ずさりながら苦笑いをする。玲王以外のスタジオにいる人を見るとおぉ…と驚きの声を漏らしていた。
『ど、どうも…それでは肝心の御影選手についてですが…『玲王坊っちゃまについてですが、簡潔に述べさせていただきますと素晴らしいお方です。』』
司会者の声をわざとさえぎって言葉を連ねるばぁやさんは、先程怒っていた國神よりも迫力満点の圧で司会者を黙らせる。
『予想ですが、あなた方の番組の視聴者の多くの方々は玲王坊っちゃまのことを”御影の次期社長”としてみていることでしょう』
ばぁやさんはにっこりと微笑みながらたんたんと話していくが、その目の奥には玲王に見せているような優しさと慈愛の形は一切もちあわせていない。あるのは憤怒と軽蔑だけ
『私から言わせていただきますと、玲王坊っちゃまにとって”御影”はただのケーキの蝋燭と同じ、ただの飾りでございます。』
『か、飾り…ですか?』
『えぇ。ただの飾りでございます、坊っちゃまは”御影”という器で収まることのない無限大に広がる器の持ち主でございますわ。玲王坊っちゃまの器量の良さを今世間が認識した今、坊っちゃまは”御影”というただの置物を人々に忘れさせるほど素晴らしい人間になるでしょう。』
『えっ…と、、そのばぁやさんが言っていることというのは多少の身内贔屓が含まれていないでしょうか?御影が飾りとか置物とか俺には理解できないのですが…』
早退した司会者はもうここにいないはずなのに、本当にイラついてくる。暫くこいつの顔も声も存在も感じたくないという程には毛嫌いしていることに俺は気づいた。そんな俺の気づきを忘れさせるほど、画面に映るばぁやさんの司会者を見る視線はいつものポーカーフェイスを消し去って冷たいものに変化していた。
『ホッホッホッ、面白いことを言うのですね。坊っちゃまは凡人とは程遠い世界を生きております。サッカーを始める前までの坊っちゃまは毎日を退屈そうに過ごしておりました、ですが誠士郎様に出会ってから玲王坊っちゃまは本来の輝きを取り戻し、再び動き出したのです。これは、長年坊っちゃまの傍に仕えさせていただいた私のお墨付きでございます。きっと画面の向こう側の坊っちゃまはご友人に励まされて涙を堪えていらっしゃるでしょう。…どうかその優しい心を忘れずにいてくださいまし。』
そう言って優しい表情を見せたばぁやさんの言葉を最後に映像は終了する。映像の中のばぁやさんの言葉に俺は「こんなことスラスラ言えちゃうばぁやさんだからきっと、誰よりも玲王にとって大切な存在なんだろうな…」なんて考えて胸が温まる。
スタジオがしん…と感動に包まれて静かになっていると、隣に座っていた玲王が俺の服を掴んできたので玲王を見ると目に涙を貯め、形のいい唇を涙を堪える為にきゅっと噛み締めていた。
ばぁやさんが羨ましいや…
泣きそうになっている玲王をぎゅっと抱きしめてやれば、胸の当たりが徐々にじんわりと暖かくなってくるのを感じた。でも俺はそれに気付かないふりをしながら玲王の頭をただひたすら撫でる。途中からスタジオ全体の暖かい視線を受けていることに気づいたが、お構い無しに玲王を撫で続ける。
暫くして玲王が泣き止んで離れようとしたけど、俺は玲王とのイチャイチャタイムとして有効活用しようと、ぎゅっと離れていこうとする玲王を抱きしめたら、俺たちのイチャイチャに耐えかねた千切がバシッと俺の頭を叩いて「こんな時までイチャつくんじゃねぇ!」と、僻みのアタックを決めてくるせいで玲王と離れさせられた。
そして全ての悲劇の元凶である司会者が消えたスタジオは、すっかり玲王に対する意識が変わって最初の時とは真逆の優しく暖かい視線で玲王を見つめていた。玲王もそれに気づいたのか恥ずかしそうに目を逸らしていた。
軽く世間話なんかで放送は順調に進んでいき、終わりの時間となって気まずかった放送は終盤では和やかなムードとなってスッキリした気持ちで終えることが出来た。撮影が終わった瞬間、玲王とろくに話すことが出来なかった芸能人たちが玲王に詰め寄って雑談を始める。最初は戸惑っていた玲王だが連絡先を交換し合うまでには打ち解けあえていた。
「凪、ありがとな。」
「え?なにが?」
収録が終わってみんなと別れた俺たちは、玲王と同棲している家へとタクシーで向かう。
「何がって…収録の時の…」
玲王は詳しく話すのが恥ずかしいからか、そっぽ向いて小さな声でポツリとこぼす。耳まで真っ赤にして呟いた精一杯の告白に俺はふっと笑いがこみ上げてきた。
「なっ、…!!笑うことないだろ!」
玲王は笑われたことが余程恥ずかしかったのか、ついさっきは逸らしていた目で俺をじとりと見つめる。
「……、しかった…」
「え?」
前半、玲王の声がタクシーのエンジン音によってかき消されてしまい、玲王の声が聞こえなくて思わず聞き返してしまう。
「ッ……!!だから!お前が俺のために怒ってくれて嬉しかったって言ってんだよ!言わせんなよバカ!!」
玲王は茹でダコになりながらポカポカと優しく俺を叩いてくる。ダメだ、ニヤける。あぁもう、俺の恋人が可愛すぎて死んじゃいそう…
煩悩を膨らませながら 俺は玲王のポカポカを堪能していると、タクシーはいつの間にか自宅に着いており、素早く運賃を払ってタクシーから降りる。玲王は顔から熱が抜けないのだろう、茹でダコのままで顔をパタパタと仰いでいる。そんな玲王を見て耐えられるはずのなかった俺は、周りも確認せずに玲王の唇へとキスをした。
後日、俺と玲王のキス写真が出回って、玲王の手笛動画以上の再生数といいねが表示されているのを知るのは、俺と玲王が熱い熱い夜を交じ合わせた日の朝だった。
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後日談📺
玲王を卑下した司会の芸人は芸能界を引退。(御影コーポレーションからは名誉毀損で訴えられて慰謝料請求をされた)
「玲王くんが可哀想」、「ファンを偽造して自作自演なんてありえない」、「質問内容がいくらなんでも失礼すぎるでしょ…ありえない」と、番組を批判する声が殺到して番組は廃番となった。
一方、國神&千切の印象は爆上がり、凪と玲王はキス写真のせいで、玲王パパ達に呼び出されて説教を受けることとなるのはまたのお話で♡
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