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リハーサル終わりのスタジオ。
メンバーが帰っていって、残ったのはマサヒロとタクヤだけだった。
「タクヤくん、お疲れさまです。……少し、いいですか?」
「ん? いいけど。なに、ダメ出し?」
タクヤが冗談っぽく言うと、マサヒロは首を振って、少しだけ笑う。
「いえ。むしろ逆です。今日のパフォーマンス、すごく良かったので」
「お、珍しく素直に褒めるじゃん、マーくん」
「いつも素直ですよ。タクヤくんが聞き流してるだけです」
そう言いながら、マサヒロは自然に距離を詰める。
付き合ってからも、この“さりげなく逃げ場をなくす距離感”は変わらない。
「……で? 褒めるために呼び止めたわけ?」
「それもありますけど」
マサヒロはタクヤの前に立って、まっすぐ目を見る。
「リハ中ずっと……タクヤくんがメンバーと距離近いの、我慢してたので。
ちゃんと、独り占めしに来ました」
「……言い方が重いんだって」
タクヤは笑いながらも、少しだけ視線を逸らす。
その様子を見て、マサヒロは満足そうに目を細めた。
「照れてます?」
「……うるさい」
「可愛いです」
恥じらいもなく、ストレートな言葉だった。
「付き合ってから、マーくん遠慮なくなってない?」
「はい。恋人に遠慮する理由、ありませんから」
そう言って、マサヒロはタクヤの手首を軽くつかむ。
強くはないけど、離す気もない、いつものやり方。
「ちょ、ここスタジオ」
「誰もいません。……それに、キスくらい、いいですよね?」
「最初からする気じゃん」
「当然です」
間髪入れずに距離を詰めて、唇が触れる。
「……っ、ん……」
短くて、でも“確認”じゃなくて“所有”みたいなキス。
離れたあと、タクヤは小さくため息をついた。
「ほんと、グイグイ来るよな……マーくん」
「タクヤくんが、逃げないのが悪いです」
「……逃げる気、ないのバレてんのが悔しい」
マサヒロは少しだけ嬉しそうに笑う。
「タクヤくんがドラマでキスしてても、メンバーとの距離が近くても、我慢してるんですよ、俺」
「 僕の恋人なんですから…その分、覚悟しててください」
「はいはい……独占欲強すぎ」
そう言いながらも、タクヤはマサヒロの袖を軽くつかんで離さなかった。
「家…くるか?」
「お誘いなら、喜んで」
「うっさいっ…」
赤面しながら、「さ、帰りますよ」と言ってスタジオを出るマサヒロを追いかける。
マサヒロの背中を追いながら、タクヤは小さくため息をついた。
「ほんと、ずるい……」と呟いた声は、夜の空気に溶けて消える。
それでも足は、迷いなくマサヒロの隣へ向かっていた。
fin
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