────首領の部屋にて
「其れで?相談とは何かな、中也君」
部屋に入って直ぐにそう切り出されたので、俺は少し戸惑ってしまった。
「あ、…はい、……相談でもあり、願望でもあるのですが」
「保護したい子供がいるんです」
「君も未だ子供に分類されるけれど……まあ、其れは置いておこう。君が云うからには何か事情が有るんだろう?」
前世と云うべきなのか判らないが、彼の世界の記憶は話がややこしくなってしまうから話さない方が善いだろう。
そう思って、俺は予め云うと決めておいた台詞を云った。
「貧民街の近くを偶々通りがかった際に、異能を持った子供も見つけました。見たところ、「衣服を変形させる異能力」でした」
「未だ完全には異能を制御出来てはいないですが、彼奴の異能は様々な事に使えると思います」
「ふむ……確かに。ちなみに、其の子供は今何歳かね?直ぐにポートマフィアの構成員として入れるのかな?」
「……」
「中也君?」
「…………13歳です」
「早くない?」
首領は苦笑いでそう云った。正直俺も早いかな、と思ったが、其処は譲れない。何故なら芥川は肺が弱いからである。
「彼奴は、────芥川龍之介、と云うのですが、肺に病を患っていて、出来るだけ早く彼処から連れ出したいのです」
「面倒は俺がみます。だから、どうか……」
「……うん、君の気持ちも覚悟も伝わったよ」
「善いよ、連れてきなさい。但し、確りと面倒をみること。まあ君のことだから其処は大丈夫だと思うけど」
「…有難う、御座います」
「嗚呼、そうだ。流石に貧民街から連れてきて直ぐにポートマフィアで働くのも大変だろうし、1年間は生活とかマナーとか色々教えてあげてよ」
「承知しました」
目頭が熱い。目の前が次第にぼやけてくる。
────嗚呼、此の人に仕えていて本当に善かった。
「あはは、何て顔してるんだい。折角迎えに行くのに。其れじゃあ台無しだよ」
「ッ、はい、すみません…本当に有難う御座います。では、失礼します」
あ、そうだ。と、部屋から退出しようとする俺の背中に掛けられた声。立ち止まり、何か有ったのかと振り向く前に、連れてきたら又見せに来てよ、と云われた。
はい、喜んで。
俺は笑顔でそう答えた。
コメント
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森さァァァん⤴︎ ⤴︎がいい人でよかったぁ( * ॑꒳ ॑*) 中也が喜んでるの尊い( ᷇ᴘ ᷆ ) 続き待ってます(*^^*)