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あの日は、とても寒い日だった。
おつかいを頼まれて外に出てたんだっけ。
そうじゃなきゃ僕はあの寒い冬の中、
外に出たりしない。
運が悪い
そう思っていた時に彼と出会った。
運命の、人に。
ジリジリジリジリ…ジリジリジリジリ
「あっつ〜…パタパタマジで今日暑くね?」
手で顔を仰ぎながら言う。顔には汗が垂れている
見ているだけで暑そうだ。僕には関係ないけど。
「エアコンを取り付けろっつーの…あっちー…」
ここは田舎中の田舎。周りを見ても田んぼや畑。
うちの学校――徳山高校は設備が全く揃っていない
未だにエアコンガスは設置されず2台の扇風機のみ
僕はちらりと彼らを見てすぐに机に突っ伏した
…寒い。
彼らにとって暑い夏でも僕にとっては何の代わり映えのない寒い日。
あ、蝉がうるさく鳴いてる所は違うけど。
…と考えているとと彼らの会話が耳に入って来た
「それな?まじで田舎すぎだろここ!なぁ寒川?」
田舎すぎるのは同意する。もう少し便利になっても良いと思…、
寒川?
「えっ」
思わず伏せた顔を上げた。
どうゆうことだ?なぜ僕に…あぁ、席が近い。
彼は誰とでも話せる奴だったけ。
勝手に納得していると彼が僕にまた話した。
「まじで山田の言う通りエアコンつけてほしいわ」
「寒川もそう思うだろ?」
ここで無理に合わせる必要はない。
そういうのは苦手なのだ。
「うーん…僕は夏でも春でも寒いからあんまり気にしたことないかも。」
「あーでも、エアコンは賛成ー…暖房が欲しいよ」
2人は一瞬驚いた顔をした。まぁ無理もない。
こんな暑い中、寒いなんて言ってる奴のなんか僕ぐらいだろう。
が、2人は驚いた顔から納得の顔に変わって言った
「あー…なんか納得だわ。寒川の近くに行くと何だか涼しいつーか…」
その言葉に山田が共感するように言葉を重ねる。
「それなっ!なんか心なしかひんやりしてる気がするし」
…え?
「それってほんとっ?ガタッ」
「え?あぁ、結構あるぞー思ったこと。な?原田」
「あぁ、まさか本当に寒いと思ってたことは知らなかったけどな」
…全然気づかなかった。
周りにも冷気を振りまいてたなんて。時々振り返られるのはそのせいか…
「つか寒川、まじで寒がってたなんてなー!」
「マフラーもおしゃれだと思ってつけてたかと思ってたぜ」
マフラー…
その言葉に反応した原田が言う。
「そういえばそのマフラー、ボロボロだよな、買い替えたりしないのか?」
「ふふ、無理だよ。変えるなんて」
「えー?なんでだよ?なんかあんのか?」
…だって、
マフラーを優しく撫でる。まるで愛するように。
「これは、
大事な目印だから」
ニコッと笑った。美しかった。
2人が笑った顔に見惚れているとき、僕はあのとき――9年前の出来事について思いを馳せていた。
僕が恋焦がれているあのマフラーをくれた彼に。
「…♡」
―――