♡、//、濁点喘ぎあり
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桃side
(うぅ…痒いっ!)
とある夏の日。
俺は久々に有給を取って、普段中々プライベートで遊ぶ事が叶わないりうらと共に、近場のショッピングモールへ出掛けに来ていた。
隣にりうらがいるにも関わらず、俺の視線の行先はいつ頃危害を加えられていたのか、右の手首で膨らむ桃色と赤色が混ざった様な刺され跡。
(掻くべきか、掻かないべきか…)
どこかで虫刺されは掻きすぎない方が良い、と言っていたのを聞いた事があるが、時間が経過するにつれ山を増していくその存在に、痒みも比例して増していく。
現在は拳を作って、手のひらの膨らんだ部分に爪を食い込ませる事でなんとか痒みを抑えてはいるが、この状況はいつまで続くのだろう。
「ないくん、それ虫刺され?」
「…へっ?あ、う、うん。いつ刺されたかわかんないんだけど、結構痒くて」
俺があまりにも静かだったからか、それとも単に無意識の中俯いてしまっていたのか、左隣を歩くりうらは体を前に屈めて、俺の右手首を覗き込んでくる。
「塗り薬とか持ってないの?」
「最近は刺されすぎて、痒みを感じてなかったからさ…家でも切らしてて、持ってないんだ」
「そっかぁ、じゃあ買って帰らないとだね。…あ、じゃあちょっとした紛らわし程度なんだけど、今俺虫刺され用のパッチ持ってるんだ。ないくんに貼ってあげるよ」
「えっ、いいの?ありがとう」
小さなショルダーバッグの中から、箱に入ったパッチを一枚取り出して、りうらは丁寧に俺の右手首の跡に貼り付けてくれる。
そしてついでなのか、俺が痒みを感じ無かった所為で無視していた虫刺されの箇所にも、そのパッチを貼ってくれた。
「あとは…あ、首の後ろも刺されてるね」
「え、別に後ろは刺されてな…」
「でも赤くなってるよ。痒くないの?」
「うん…って、あ?!//」
りうらが自分の首の後ろを人差し指で指し、心配そうな声で赤くなっている箇所を示してくれたが、突然俺の体はピタリと硬直状態に陥る。
固まった俺の脳内にフラッシュバックされるは、昨日の夜の出来事。
全てを察してしまった俺は、一気に顔全体の体温が上昇しながらも、首を傾げるりうらに慌てて断りを入れた。
「…ないくん?どうしたの?」
「だ、大丈夫!パッチごめんね、ありがとう!」
「え、あ、うん…どういたしまして?」
困惑した表情を浮かべながらも小さく頷くりうらを横目に、俺はため息を吐きながら、ポケットから取り出した携帯電話で、昨日の夜俺の側にいた相手へ「お前ふざけるなよ」とメッセージを送った。
「あはは、じゃありうらに俺がつけた跡がバレたわけねw」
「笑い事じゃないよ、本当にもう…//」
俺の隣で氷結の缶を持ち、ほんのり紅く染まった顔でまろは自身の膝を叩きながら、大口を開けて笑う。
りうらに跡を見られた時の事を思い出した俺は、羞恥心で再び顔が赤く染まるのを感じて、頬を両手で隠した。
「ていうか、あのキスマいつ付けたの…」
「ないこが昨日の行為で意識飛ばした後。あまりにも無防備だったもんだったから、つい」
「つい、じゃないんだよ…//」
気持ちの紛らわしとして、家に残っていたつまみを箸で摘んで口の中に含む。
お酒に合う様に作られているからか、少し味の濃い摘みをゆっくりと咀嚼をしていたその時、まろがふと床に手をついて顔をぐっと俺の近くに寄せてきた。
「何?」と反射的に顔を後ろに引くと、まろは「でも」と呟きながら俺の後頭部を逃がさないとばかりに押さえ付ける。
「ええやん、これでりうらに『ないこは俺の物』って見せつけられたんやし」
「うぅ、でも…」
まろが言葉を発する度に、口から漏れる吐息が顔にかかって、ちょっとこそばゆい。
突如寄せられた整ったその顔に、俺の視線は思わず横へと泳いだ。
「じゃあそんなに見られるの嫌なら、もうキスマ付けない方がいいん?」
「べ、別にそう言ってる訳じゃ…!」
咄嗟に己の口から溢れた言葉に、俺は思わず「あっ…」と呻き声を漏らして、自身の失言を実感してしまった。
まろの口元の端がゆっくりと、吊り上がっていくのを確認する。
「…へぇ、じゃあ嫌じゃないんや」
「えっ、ちょっ、まろ待っ…?!//」
「ふーん…それじゃあ」
__いっぱい跡、付けたるわ。
「はぁッ…んぅ…♡ぁへっ…ひんっ…♡//」
もう何時間、彼に身体を抑え続けられているのだろうか。
首、腕、背中、お腹、太腿…身体のあらゆる所を彼に吸われ、噛まれ、舐められ。
「ま、ろッ…まッ…てぇ…♡//」
枕に顔を埋めている為に、彼の匂いが残った枕から甘い香りが鼻腔をくすぐって、より自身の自身が固くなるのを感じる。
挿れられる事も無く、突起を弄られる事も無く、ナカを掻き回される事も無く。
ただ一つ一つ静かに落とされるキスの嵐に、俺の身体はただベッドに身を預けて、軽く痙攣を起こすしか無かった。
「もぅッ…む、いッ…♡こわれ…ッ…ちゃ…♡//」
「ふふっ、キスマ付けられるだけでこれとか…とんだ淫乱だね」
「んぅ…だッ、だってぇ…//」
こんなに身体を敏感にさせたのはお前だろ、そんな言葉は発する前に喘ぎ声へと変化を遂げる。
「ッ…ふっ…♡ん”あっ…!♡//」
そして自身の顔を俺の横に近づけて、耳に優しく口づけされた後に強く耳の上側を吸われた。
激しい痙攣が起こり、濁点の入った喘ぎ声が暗い寝室に響き渡る。
「は、ッ♡はぁ、ッ…♡//」
「…まぁ、いいや。とりあえず今は__俺に全部委ねて?」
まるで彼が投稿したASMR動画の様に柔らかく、それでいて色気があるその声に負けた俺は、振り絞った声で「はひぃ…♡//」と返事をする事しか出来なかった。
キスマークって良いよね、虫刺されと勘違いされるともっと良いよね、という作者の性癖から作られたお話でした。
夏なのでね、やはり季節感は大せt((
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