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『お姉ちゃん、遊ぼう?』
直接頭に入って来たその言葉は、
なぜか、虚しく感じた。
私は咲良。16歳。
変な夢を見て、今目覚めました。
「朝ご飯…」
階段を下りた先のリビングでは、お母さんがキッチンで何やら作り、
他の兄弟達は椅子に座って私の事を待っています。
「やっと来たのね!早く座って頂戴。皆待ってるわよ」
「は〜い」
ハキハキと喋るお母さんとは違い、私はやる気のなさそうな声で返事しました。
「姉ちゃん、今日は何する?」
にこにこと笑いながら、弟の楓が声をかけてきます。
「え〜っとね〜」
私が答えようとすると、
「だめ!」
「お姉ちゃんは私と遊ぶの!」
その言葉を聞いた時、
この幸せが永遠に続けばいいのに
そう、思いました。
でも意味がわかりません。
「この幸せが…永遠に…?」
「…お姉ちゃん?」
「あぁ。そうだね。今日は見咲と遊ぶ約束をしてたね」
「も〜忘れないでよ〜」
私と遊ぶ約束をしていたのは見咲。
でもその姿を見るとどこか懐かしい気がします。
「お姉ちゃん!遊ぼう!」
そう言うと部屋の雰囲気が変わり、リビングも家具の配置が変わりました。
それを認識しているはずなのに
疑問に思いませんでした。
一体なぜ?
「お姉ちゃん、何して遊ぶ?」
「うーん…何しよっかね〜」
「じゃあドミノでもしよっか、」
その後は沢山遊びました。
それでも、淋しくて、懐かしくて、
ここに居ては行けないような感覚がしました。
その時、
「このまま永遠に遊べたらいいのに…」
「え?」
ふと呟いた見咲の言葉に目を見開きました。
私が思っていた事と同じ事を考えていたからです。
もしかしたらと思い、私は見咲に聞いてみました。
「見咲、私ねさっきから変な感覚がするの。」
「ねぇ見咲、あなたはこれを…」
「…知ってるよ。」
「だって見咲のせいでお姉ちゃんは閉じ込められてるんだもん。」
「…あ…」
その瞬間、聞かなきゃよかったと思った。
見咲の輪郭が徐々にぼやけて行く。
見咲は私の手をぎゅっと包んでこう言った。
「お姉ちゃん、大丈夫。」
「だから…前を向いてね」
にこっと笑った見咲の表情はどこか儚く、
段々と薄れていった。
『姉ちゃん、起きて!』
目を覚ますと同じ家で、
楓が私の事を起こしてくれた様だ。
「楓、おはよう。」
「姉ちゃんおはよ。」
楓の表情はどこか暗く、あまり元気ではない様子だった。
「朝ご飯…」
リビングに降りて行っても誰も居ない。
私は朝ご飯を作って楓に食べさせた。
「姉ちゃん、今日は何する?」
楓は精一杯の笑顔で私に聞いてきた。
「いつもと同じだよ。楓は?」
私も笑顔で答えた。
「う〜ん…」
「できれば…行きたくないな…」
苦笑いをしながら俯く楓をできるだけで励まそうと思って、こう言った。
「わかったよ。具合悪そうだもんね。」
できるだけ、優しく言った。
楓は、私にとっての最後の家族だ。
失うわけには行かない。
大切に。大切に。
割れ物みたいに接しないと。
「じゃあ、私は仕事してるから、何かあったら呼んでね。」
「うん。」
部屋で仕事をして居ると、机の下から箱が出てきた。
「何これ、タイム…カプセル、?」
それは十年前に見咲と作ったタイムカプセルだった。
「十年後の私…今の…私に?」
見咲から今の私宛に、手紙が入っていた。
『お姉ちゃんへ
見咲は多分、大人になれません。
前にままとぱぱが話しているのを聞きました。
お姉ちゃんがこの手紙を読んだら、
見咲は居ないかもしれません。
だから、お姉ちゃんに見咲の思い出を持っていて欲しいです。
見咲の思い出と生きてください。
見咲の分もお兄ちゃんと長生きしてね。
いっぱい生きて、お姉ちゃんがこの手紙を読んだら、
見咲にケーキをくれると嬉しいです。
じゃあね。見咲より』
くしゃくしゃになった紙の上に涙が落ちた。
その声を聞いて駆けつけた楓も手紙を呼んで、
二人で大泣きしました。
今度はケーキを持って、お墓参りに向かいました。