テラーノベル
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研究所の警報は止まらなかった。
赤いランプが点滅する。
研究員達が慌てて走り回る。
「封鎖区画を閉じろ!」
「無理です!」
「制御が効きません!」
怒号が飛び交う。
その中で。
榊だけが顔を青ざめさせていた。
モトキは気づく。
今まで余裕を崩さなかった男が。
初めて焦っている。
「……何が起きた」
榊は答えない。
だが。
研究員の悲鳴が聞こえた。
「F-01が地上へ向かっています!」
レイの耳がぴくりと動く。
『……へんなにおい』
ヒロトも顔をしかめる。
「なんか嫌な感じがする」
地下から。
何かが来る。
それだけは全員が分かっていた。
⸻
その頃。
研究所最深部のさらに下。
隔離区画の 重い扉が開いていた。
真っ暗闇の中をゆっくりと歩く人影。
獣人だった。
だが。
普通の獣人じゃない。
耳も尻尾もない。
代わりに。
全身を覆う白い紋様。
銀色の瞳。
長い黒髪。
見た目は二十歳前後の青年。
しかし。
空気が違った。
歩くだけで周囲の機械が壊れていく。
電子音が途切れる。
照明が消える。
まるで存在そのものが異常だった。
青年は静かに呟く。
「……うるさい」
その声は驚くほど普通だった。
だが。
研究所全体が震えた。
⸻
実験室。
モトキは再び涼架を見る。
涼架は頭を押さえていた。
苦しそうだ。
だが。
さっきとは違う。
瞳に感情が戻り始めている。
「……モトキ」
小さな声。
モトキの目が見開く。
「涼ちゃん」
「ごめん……」
掠れた声。
その一言だけで十分だった。
戻ってきている。
完全ではない。
でも。
確かに。
榊が叫ぶ。
「黙れ!」
研究員達が動く。
だが。
その瞬間。
研究所全体が大きく揺れた。
轟音。
天井が軋む。
照明が消える。
ヒロトが叫ぶ。
「何!?」
レイだけが地下を見ていた。
赤い瞳が細くなる。
『……くる』
次の瞬間。
床が崩れた。
轟音。
コンクリートが砕け散る。
研究員達が悲鳴を上げる。
そして。
煙の向こうから。
一人の青年が現れた。
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長い黒髪。
銀色の瞳。
異様な存在感。
誰も知らない。
だが。
榊だけは後退った。
「……馬鹿な」
青年は静かに榊を見る。
感情のない目で。
「ひさしぶり」
榊の顔色が真っ白になる。
モトキ達は呆然としていた。
何者だ。
この人。
その時。
レイが小さく呟いた。
『……おにいちゃん』
全員が振り向く。
レイ自身も驚いていた。
口から勝手に出た言葉だった。
青年も目を見開く。
そして。
初めて表情が揺れる。
「……レイ」
その声は優しかった。
レイは混乱する。
記憶にない。
知らないはずなのに。
懐かしい。
どうしてか。
胸が苦しくなる。
青年はゆっくり歩き出す。
榊へ向かって。
一歩。
また一歩。
「お前は」
榊の声が震えていた。
「処分したはずだ」
青年は止まらない。
「失敗したね」
静かな声。
その瞬間。
研究所全体の電気が消えた。
暗闇。
そして。
銀色の瞳だけが光る。
青年は榊を見据える。
「僕はずっと覚えてた」
榊の顔から血の気が引く。
モトキ達はまだ知らない。
この青年こそ。
零号体より前に作られた。
榊が最初に生み出した存在。
《被験体 F-01》
研究所最大の秘密だった。
コメント
2件
ほんとにこの作品大好きです!! 更新多くてとても嬉しいです😭
うわあ第20話…!めっちゃ展開ヤバかったね😭💦 地下から現れたF-01、”おにいちゃん”って呼んだレイちゃんの反応にもう胸がぎゅーってなったよ…!記憶にないのに懐かしいって感じるの、切なすぎるっしょ…! 榊が初めて焦ってるのもやばいし、涼ちゃんが戻ってきてるところも嬉しかった!この後どうなるか気になりすぎて夜しか寝れん〜!!次回も絶対読むからね!!✨