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私たち家族は2階へ向かった。階段を進んでいたとき、誰も言葉を発しないから、どんよりとした気分だ。初めて出会った人と家族になるなんて、怖くて仕方がないけれど、きっとみんなもそうだから、我慢したいようと思う。
廊下の突き当たりの部屋に案内され、私たちはそこに入った。里美さんは何か思い出したように、慌てて部屋を出た。
「ちょっと、なんで初めて会った人と家族にならないとダメなの?ジジイどうしてくれんの?」私はいつもの荒い口調でお父さんにそう言った。
「昇がいるのにその口調。本当にやめなさい。前から決まっていたことなんだ。仕方がないとしか言えない。」少しむかつきながらも、落ち着いた口調でお父さんは答えた。
「昇は家族になったんだから。それに昇だって、私たちと急に家族になって嬉しくなんかないはずだから。ね?」私は昇に同意を求めた。
「僕は大丈夫だよ。里美さんから聞いてたから。でも、美晴が納得いかないんなら一旦離れた方がいいかもね。」同意を求めたのに、こんな返しなんて。少しムカついた。けど、昇みたいなホストから、こんな冷静な意見が聞けるとは思っていなかった。そういうところも賢そうでなんだかムカつく。
その時、部屋のドアが開いた。里美さんが入ってきた。さっきの服とは、違ったシルクの真っ白なドレスだ。私には、とても綺麗に映った。
「お待たせ。さ、行くわよ大助さん。」
「どこ行くの?」昇がそう聞いた。
「言ってたでしょ?下のオーナーになるのよ。だからその偵察。」少し荒い口調でそう言った。
「これも昇に言ったけど、春休みまでは家がないの。この部屋か、寮に行きなさい。仕事は今日はおやすみよ。美晴ちゃんと仲良くなっててね。」
「ちょっと待って。家がない?そんな、考えられないんだけど。てか、ちゃんと喋ってもいないのに、昇と2人で暮らしとけなんて、そんなことありなの?」里美さんにこんな口の利き方は嫌だけど、私はそう言った。
「あんたの意見なんて聞いてないわ。じゃあ私たちは行くから。じゃあね。」
「昇、美晴をよろしくな。」
意味不明。血は繋がってないけど一応家族なんだから、私たちのこと見てくれればいいのに。それに、お母さんなら私のわがままも笑顔で答えてくれると思ったのに。期待していた私が少し残念だ。
でもそりゃそうだよな。離婚してる親なんてまともじゃないんだ。変なんだ。こんなこと思っちゃダメなのは分かってるけど、今はそう思うことしか期待しない方法がない。
お母さんという存在を失ったんだと、また一つ実感する。そして寂しくなって、涙が出そうになって……
「どうしたの?」昇の声が聞こえた。
「いや、なんでもないよ。」頑張ってそう言ったけど、そんな言葉とは反対に涙が流れてきた。
「そんなに嫌だった?家族になること。」昇がそう言ってくれた。
「違うの、お母さんがもういないのが怖くて。どんなわがままも対応してくれる人だったから、私の思ってたお母さんとは全く違って。 」言葉が出るほど、涙は止まってくれない。
「そうだよね、里美さんは特殊だからね。だけど、大丈夫だよ。僕もいるじゃん?ちょっと頼らないけど、一応お兄ちゃんだから。美晴みたいに、悲しいことは口に出せないけど、僕が見守っておくから。」
横並びでソファに座ってるのが、なんだかおかしく感じるくらい、思考が鈍ってる。だって、あの人とはいつも向かい合わせだったもんな。
なぜか、昇の言葉は私の記憶で1番大切な言葉に似ていて、私はそれを求めてしまうのだと思う。
※「離婚してる親なんてまともじゃないんだ。変なんだ。」この表現、不快に思われる方もいらっしゃると思います。申し訳ありません。だけどそう思わないと、美晴の心が折れるので、書かせてください。ごめんなさい。