コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
レイブラン、ヤタール、フレミー、ラビック。
彼等が森で有名だというのなら、以前レイブラン達が言っていた者達、おそらく”角熊”くん、”老猪”、そして”蜃気狼”ちゃん。この三体も当然、有名なのだろう。
「レイブラン、ヤタール。君達が以前言っていた他の動物達も相応に有名なんだね?」
〈そうよ!熊には誰も勝てないし、狼は縄張りが広すぎるのよ!〉〈猪は色んな所を走っているのよ!でも最近は姿を見ないのよ!〉
〈ノア様は森の強者達皆をこの場所に集めるのですか?〉
ラビックが訊ねる。私としては、私を頼ってくれる森の住民達は皆、拒むつもりは無い。
ただ、この森の住民達が互いにどう思うかは別の問題だ。
ヤタールはここに住む者は、私の役に立つ者でなければならないと言った。納得がいかないのだろう。彼女にとって、私の力の恩恵をただ受けるだけ、というのは。
「私としてはね、誰であれ森の住民であるなら、拒むつもりは無いんだ」
〈それでは駄目よ!森が駄目になってしまうわ!〉〈寄生は駄目なのよ!堕落するのよ!〉
〈ノア様。ノア様ならみんなまとめて面倒を見て、世話ができると思うよ。だけど、何もせずにそれを享受する行為は寄生と変わらないと思うの。共生と寄生はまるで別物でしょ?〉
手厳しいな。いや、違うな。私が甘いのか。
私に頼る者を私が制限なく甘やかせばそういった者達は堕落し、それが森を駄目にする、と。
それは良くないな。森にとって害になることを、私は良しとしない。
そうか。森の住民であったとしても、そして私自身も、自覚せずに森にとって害になり得るのか。
気を付けないとな。それに、フレミー達には感謝しないと。
「私は、森の住民達に、優しくしようとしていた。だけど、それは優しさではなく、ただの甘やかしだったんだね?そして、それが森を駄目にする。フレミー、レイブラン、ヤタール。それに気づかせてくれてありがとう」
〈お礼を言うのは私達だわ!〉〈いつも美味しい果実を有難うなのよ!〉
〈どういたしまして。でも、彼女達の言う通り、お礼を言うのはこっちだよ。私達を受け入れてくれてありがとう〉
互いに、礼を言い合う。なんだか少しむず痒いな。と、そうだ。女性陣だけで盛り上がってしまったが、結局ラビックの質問に答えていなかったな。
「蔑ろにして済まなかったね、ラビック。今の所の目標として、結果的に君の考えの通りになる、といったところだよ」
〈私達が勧めたわ!〉〈ノア様の配下に相応しい奴を教えたのよ!〉
〈私のことは教えなかったみたいだけどね、貴女達〉
〈そういった事情でしたか。反対どころか、私も推奨いたします。この森の強者がノア様の元に集まれば、森の秩序もより盤石になるでしょう〉
森の秩序、か。
私がいつぞやの雨雲に対して抱いた感情も、それなのだろうね。
森に気概を加えることを良しとしない。それはつまるところ、外部から森の秩序を乱す者を、敵として見ているのか。
それが事実かどうかは、今は置いておくとしよう。今は、残りの候補者達についてだ。
「さて、私はレイブラン達が勧めた者達を全員ここに誘おうと思う。誰からが良いかな?要望があったら教えてほしい」
〈狼がいいわ!猪は場所が分からないわ!〉〈狼なのよ!アイツ臆病だから早めに配下に加えた方が良いのよ!〉
〈誰からでもいいと思うよ?この森に生きている以上、森の掟に従わないものは居ないもの〉
〈私も、誰からでも構わないかと。ですが、猪殿の行方が定かではないのであれば、二択になりますね〉
と、すれば、次に誘いに行くのは”蜃気狼”ちゃんか。
「それなら、狼から誘いに行こうか。あの娘がいた辺りには果実が無いから、こっちで採ってから会いに行くとしよう。皆は、一緒に来る?」
〈私達は行くわ!あの辺りなら案内は任せて頂戴!〉〈もちろん行くのよ!アイツの居場所はバッチリ掴んでおくのよ!〉
〈ゴメンね?付いていきたいけど、まだやりたいことが終わっていないの〉
〈ノア様の移動方法ですと、私では足手まといにしかならないでしょう。この地にて鍛錬を積もうと思います〉
各々の答えが帰ってくる。そういえば、フレミーはやりたいことがあると言っていたな。今なら、聞いても良いだろうか?
そしてラビック。済まない、君にトラウマを与えてしまっただろうか?それはそれとして、君は本当に真面目だね。
「分かったよ。ところでフレミー。貴女がやりたいことが何かを教えてもらってもいい?」
〈ゴメンね?今はまだ秘密にしておきたいの。でも、きっとノア様は喜んでくれると思うよ?〉
「そういうことなら、期待しておくよ。それじゃ、もう暗くなっているし、寝るとしようか。ラビック、君も寝床に来る?私やレイブランとヤタールも一緒になるけれど」
〈よろしければ、ご一緒させていただきたく存じます〉
それなら、皆で寝るとしよう。今日はもう遅い。天井に張った巣に戻ったフレミー以外を寝床へ移し、私も寝床に身を預ける。
体中にフワフワやモコモコ、フサフサな感触がして、即座に意識がまどろむ。そのまどろみに逆らうことなく、私は意識を手放して眠りについた。
頬を押し付けられる感覚。そして角を引っ張られ、頭をつつかれる感覚。知らない感覚が一つあるな。
〈起きて頂戴!ノア様!朝よ!いい天気なの!〉〈狼に会いに行くのよ!でもその前に”死者の実”が食べたいのよ!〉
〈ノア様、日が昇りました。その、何というか…彼女達の起こし方は……〉
頬を押して私を揺すっていたラビックが、レイブラン達の私の起こし方にかなり引いている。
気にしなくていいよ。それぐらいやってもらわないと目が覚めないからね。
〈おはようノア様。悪いけど森へ行ってくるね〉
「みんなおはよう。フレミー。あぁ、ちょっとだけ待って。…はい、コレ持って行って。…はい、みんなもどうぞ」
朝の挨拶をしたら、直ぐに窓から森へ向かおうとしたフレミーに切り分けた果実を渡した後、他の皆にも均等に配る。レイブラン、ヤタール。お代わりは無いからね?
「レイブラン、ヤタール。果実を食べ終わったら、早速狼の所へ行こうか」
〈分かったわ!今回も案内は任せて頂戴!〉〈いつも通り美味しいのよ!アイツの居場所はもうバッチリなのよ!〉
〈吉報をお待ちしております〉
昨日に続いて今日も事前に動いてくれていたようだ。本当にありがたい。二羽を抱き寄せて撫でておく。
ひとしきり二羽を撫でた後、レイブラン達が以前彼女達に出会った方角へ飛び去って行く。
それじゃあ、”蜃気狼”ちゃんの所まで行こうか。おっと、果実の回収もしておこう。”蜃気狼”ちゃんは沢山食べそうだし、3つ持って行くとしよう。
“蜃気狼”ちゃんの縄張り近くに着陸する。
レイブランとヤタールが一定の場所を綺麗な円を描くように飛んでいる。つまり、君達の描いた円の中心にいるってことで良さそうだ。
さて、相手は狼だ。当然、嗅覚も相当なものだろう。
私は『臭いを消す』と強く意識し、その意思をエネルギーに乗せ、果実を含めた私の全身に纏わせる。
これで私の体臭を誤魔化せればいいのだが…。
三百歩ほど歩き、”蜃気狼”ちゃんの縄張りに入ってから少し時間が経った。
今の所、彼女に感づかれてはいないようだ。彼女の方からこちらに近づいてくる気配はない。このまま歩を進めよう。
さらに二百歩ほど歩いたところだろうか?この辺りが、レイブランとヤタールが示した場所だ。
一見何でもない、先程と変わらない景色の筈だ。しかし、何もないはずの場所から、明確の思念を感じ取れる。独り言。というヤツだろうか?
〈どうしよう、どうしよう…。ボク、”アイツ”に殺されちゃうのかなぁ…?嫌だよぅ。死にたくないよぅ。怖いよぅ…。何で捕まえることが出来るんだよぅ。怖いよぅ…〉
………物凄く怖がってる。
“蜃気狼”ちゃんが言っている”アイツ”って私のことだよな?どうやら相当なトラウマを彼女に与えてしまっていたらしい。
あまり脅かすのは可哀そうだし、真正面から声を掛けるとしよう。
「こんにちは。まずは話を聞いてくれるかな?」
〈ぅぎょぅああああああ!!!でっでっででっでっででっ出たぁぁぁああああ!!!!!〉
そんなに驚くことないじゃないか。