【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
ワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(サブタイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります
「いふくんどうしたの? こんなとこで」
不意に後ろから声をかけられた。
その場に足を縫い付けられたように動けなくなっていた俺は、顔だけを横に傾ける。
ダンス練の集合場所の一室。
その入口で立ち尽くしていた俺の隣に、後から来たほとけが立った。
そして俺の目線を追うように室内の隅に目をやってから、「はーん」と意味ありげに一つ頷いた。
「また赤組がイチャイチャしてるんだ」
部屋の隅で、ないことりうらが並んで椅子に座っている。
スマホから流れる動画でも見ているのか、イヤホンを片方ずつ耳にして1つの画面を頭を突き合わせて眺めていた。
前髪が触れ合いそうな距離で、たまに小さな声で内緒話をするように何かを囁いては笑い合う。
「最近なんか特に仲良いよね、あの2人。いふくんも頑張らないとりうちゃん取られちゃうよ?」
「…何それ。それはお前の話やろ」
「ふふ、バレた?」
言いながらほとけは「おつおつー」と軽い挨拶と共に遠慮なく室内にズカズカと入っていく。
そこでようやく俺たちが来たことに気づいたらしいないことりうら。
イヤホンを外して動画を止めると、2人は同時に椅子から立ち上がった。
ダンス練を終えた後は、どちらかと言えば俺はいつも早めに帰る方だ。
それでも今日は、ダンスの先生と確認事項があったから結局最後まで残っていた。
帰り支度をしようと辺りを見回したときにはもう他のメンバーの姿はない。
一人残されて鞄に私物を入れていると、レッスン室のドアがキイと音を立てて開かれた。
「あ、まろ終わったの? おつかれー」
まだ残っていたらしいないこがひょこりと顔を出す。
「あにきがさっきまで待ってたけど、まだ時間かかりそうだからって帰ったよ」
「ん。ないこは帰らんの?」
「帰るよ。ただちょっとまろと話したくて、待ってた」
「話?」
なんの?と目を丸くした俺の前で、ないこは部屋のドアを後ろ手に閉めた。
もう誰もいないだろうけれど声が漏れないように空気が遮断される。
「りうらのことなんだけど」
ないこの形の良い唇が告げた名前に、俺はもう一度正面からないこを凝視した。
話の内容がどうでもいいものではなさそうなことは汲み取れたので、手に持とうとしていた鞄をそこへ置き直す。
「りうらが何?」
聞き返さなくても大体は分かるけれど。
そう問うと、ないこは意を決したように顔を上げた。
「俺さ、りうらのこと本気なんよ」
予想の範疇の言葉が返ってきて、俺は無表情のまま続く声を待った。
打っても響かないようなこちらの態度に小さく息をつきながらも、ないこは引く素振りは見せない。
「多分、あっちは別に俺のこと何とも思ってないと思う。でも、俺の気持ちは伝えようと思ってて」
「……それを何で俺に言うん?」
平坦な声に感情は乗せなかった。
冷静すぎるその口調に一瞬戸惑ったように眉を寄せてから、ないこは続ける。
「だってまろ、ずっとりうらのこと見てるじゃん」
さっきのダンス練前、俺が立ち尽くして2人の様子を見ていたことに気づいていたらしい。
「正直、俺にとってまろは脅威だよ。高スペックだし、まろに本気出されたら正直勝てんかもなぁ…なんて思う」
「……」
「でも俺、諦めるつもりないから。まろやほとけっちも、俺と同じようにりうらのことが好きだとしても」
「それでこんな牽制? 意外に余裕ないやん、ないこ」
「意外じゃないよ。言っただろ、まろは俺にとって脅威だって」
ほとけは?とは場の空気を読めなさ過ぎで聞き返さなかった。
代わりに「ふぅん」と一つ頷き、俺は置いたばかりの鞄を手に取る。
「話それだけ? ないこの好きなように勝手に頑張ったらえぇやん」
帰るわ、と付け足した俺からどんな返事を引き出したかったのか、ないこは納得いかないような顔をしていた。
お前の気持ちは手に取るように分かるよ。
りうらへの想いが募る一方で、その分焦燥感に蝕まれていっているんだろう?
冷静を装った胸の奥で、自分もそうだから痛いほど分かる。
ドアの前に立つないこは、それ以上何を言っても無駄だと思ったのか諦めたように深い息を漏らした。
それから帰ろうとする俺に道を開けるように、一歩横へ体をずらす。
「あ、一個聞いていい?」
横をすり抜けドアの取っ手に手をかけようとしたところで、俺は肩越しにないこを振り返った。
「何」と言外に問う目が、こちらを見つめ返す。
そのピンクの瞳を正面から見据えて、俺は小さく唇に笑みを浮かべてみせた。
「お前らが仲良くしとるとこ俺が見とったとして…それが何で、『俺がりうらのこと好き』に繋がるん?」
尋ねると、ないこは弾かれたように顔を上げた。
「え、だって…」と再び戸惑ったように口ごもる。
「ただ見てるだけって感じの目には見えなかったよ、まろ」
「うん、だから何で、それで俺が『りうら』のことが好きなんやって思ったん?」
その名を強調して言い直した俺に、ようやく何を言われているのか気づいたらしいないこの大きな目が更に見開かれた。
「え…? ん? は…?」
混乱したように視線を泳がせて自分の髪をクシャリと掴むないこに、俺は更に追い打ちをかける。
「ないこはないこの好きなように頑張ったらえぇやん。俺も勝手に好きなようにやるから」
今度こそドアの取っ手に手を伸ばし、掴む。
金属の冷たい感触が伝わってきたところで、俺はもう一度口角を上げて意味ありげに笑った。
「あいにく、俺はりうらに負ける気もせんけどな」
「!……」
ないこは驚愕と同時に息を大きく吸って、そのまま止めてしまったようだった。
「じゃあねーないこたーん」
最後はいつもの配信時のようにふざけて言って、手を軽く振って見せる。
「は!? え、ちょっと待ってまろ!」
「待たなーい」
わはは、と声を立てて笑ってから、俺は部屋を出る。
ないこがそれ以上の言葉を継ぐ前にドアを閉めた。
お前がその気なら、俺だってもう黙ってないよ。
その時期じゃないと思っていたから動く気なんてさらさらなかったけれど、宣戦布告されたら仕方がない。
どこか嬉しいような高揚感がこみ上げてきたのは気のせいじゃなかった。
これまで燻るしかなかった想いをお前に知らしめる立ち位置を得られたんだから。
「逃がさんからな、ないこ」
もう目の前にはいない相手へ向けて呟き、俺はそのままそこを後にした。
コメント
6件
逃がすな!青!絶対に!なーんどもー(殴 青桃の真相は闇の中…か…
物語にして欲しいくらい好きなんだが!?続きめっちゃ気になる〜!!
遅れた〜っ!ごめん… 桃→赤を直接聞いて青さんも本気出しちゃいましたね…っ!! 桃さん赤さんどっちを選ぶのか…、 ドキドキですねっ!✨ 本気出した青さんはきっと滅茶苦茶強いっすね…っ!🔥💪 本当に最後までどうなるのかドキドキする構成の仕方なの凄いですねっ! 何回も言ってるけど、あおばさんの作品もあおばさんも大好きで、 尊敬しかないです…っ!✨ 今回も更新ありがとうございましたっ!!