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#ホークアイズ
#ご本人様には関係ありません
炭酸@サイダー🌠💙🎧️
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「認めろよ、仁……」
薄暗い倉庫に、少年の声が響いた。
「間違ってたのは、お前の方だ」
目を覚ました司波仁が最初に見たもの。
それは、自分に向けられた銃口だった。
そして、その銃を握っているのは。
「……瑠衣」
「久しぶりだな、仁」
物怪瑠衣。
かつて隣にいた、相棒。
今はライヘンバッハ側についたとされる、裏切り者。
瑠衣は笑っていた。
けれど、その笑顔はどこか不自然だった。
「随分と余裕そうじゃん。自分の置かれてる状況、分かってる?」
「さあな。説明してくれないか」
「……相変わらずだな、お前」
瑠衣の指先が、わずかに震えた。
仁はそれを見逃さなかった。
「瑠衣」
「何?」
「お前は、本当にそちら側についたのか」
一瞬。
瑠衣の表情が揺らいだ。
しかし、すぐにいつもの軽薄な笑みを浮かべる。
「そうだよ。オレはもう、お前の相棒じゃない」
「そうか」
「……それだけ?」
「お前がそう言うなら、そうなんだろう」
「っ、ほんと……そういうところ、大嫌い」
瑠衣は銃口を下げなかった。
仁もまた、彼から目を逸らさない。
二人の間に、長い沈黙が落ちた。
やがて、倉庫の奥から足音が聞こえてくる。
「感動の再会は済みましたか?」
現れたのは、ライヘンバッハの幹部、無全だった。
「無全さん」
「随分と手間取っているようですね」
「……すみません」
無全は仁を一瞥すると、瑠衣へ視線を向けた。
「撃ちなさい」
短い命令だった。
瑠衣の手が強張る。
「聞こえませんでしたか?」
「……聞こえてますよ」
「ならば撃ちなさい。
あなたが連城家の次期当主として、我々に忠誠を示す最後の機会です」
連城家。
その名前を聞いた瞬間、瑠衣の胸の奥に、忘れられない光景が蘇った。
泣いていた子どもたち。
助けを求める声。
それを見ても、何も変えようとしなかった大人たち。
連城家の人間として生まれ、次期当主として育てられた自分。
ずっと、ずっと嫌いだった。
大人が。
連城家が。
ライヘンバッハが。
そして、何より。
そんな世界を憎むことでしか、自分を保てなかった自分自身が。
「……瑠衣」
仁の声がした。
「何だよ」
「もういい」
「……は?」
「もう十分だ。
お前はよくやった」
瑠衣の瞳が揺れる。
そんな言葉を聞く資格なんて、自分にはないと思っていた。
裏切った。
銃を向けた。
何もかもを隠して、仁を一人にした。
それでも。
「……うるせえよ」
瑠衣は小さく呟いた。
銃を握る手に力を込める。
しかし、指は動かなかった。
撃てない。
どうしても、撃てない。
目の前にいるのは、何度も背中を預けた相棒だった。
何度も名前を呼んだ、大切な人だった。
「……っ」
「物怪くん」
無全の声が低くなる。
「何をしているのです」
「……」
「撃ちなさい」
瑠衣は答えない。
ただ、仁を見つめていた。
「……もういい」
無全が静かに息を吐いた。
「あなたには失望しました」
次の瞬間。
無全が仁へ銃口を向けた。
「ならば、私が始末しましょう」
「――っ!!」
考えるより先に、身体が動いていた。
「仁!!」
銃声が響く。
瑠衣の身体が、仁の前に飛び込んだ。
「……っ、あ」
衝撃。
脇腹に走る鋭い痛み。
瑠衣の身体が大きく揺れ、その場に膝をつく。
「瑠衣……!」
仁の声が聞こえた。
けれど、返事をする余裕はなかった。
「物怪くん!?」
無全が驚き、わずかに動きを止める。
その一瞬を、瑠衣は見逃さなかった。
ネスト随一の武闘派ハウス、ホークアイズ。
その記録者として、数えきれない現場をくぐり抜けてきた。
この程度で、終わるわけにはいかない。
瑠衣は無全の隙を突き、手にしていた銃を奪い取った。
「なっ……!」
そして。
パァン、と。
再び銃声が倉庫に轟いた。
無全の身体が崩れ落ちる。
静寂。
瑠衣は銃を床に落とした。
からん、と乾いた音が響く。
「……は、」
小さく息を吐く。
「ざまあ、みろ……」
ようやく終わった。
長い間、自分を縛りつけていたものが。
連城家も。
ライヘンバッハも。
あの大人たちも。
もう、何も怖くない。
「……仁」
瑠衣は振り返った。
仁はまだ、彼を見つめていた。
驚きと、困惑と。
そして、隠しきれない焦りを浮かべて。
「瑠衣、お前……!」
「……あは、」
笑おうとした。
いつもみたいに。
何でもないことのように。
けれど、うまく笑えなかった。
「仁、縄……」
「ああ、今解く」
仁は必死に身体を動かし、拘束を解いた。
自由になった手で、すぐさま瑠衣のもとへ駆け寄る。
「瑠衣!」
倒れかけた身体を抱き留める。
その身体は、驚くほど軽かった。
「おい、瑠衣。しっかりしろ」
「……仁?」
「喋るな。今、手当てをする」
仁の手が震えていた。
いつも冷静で、どんな状況でも判断を誤らない男。
その仁が。
今は、目の前の少年を抱き締めることしかできずにいた。
「……ごめん」
瑠衣が小さく呟いた。
「何がだ」
「オレ……撃てなかった」
「……」
「お前のこと、撃てなかったわ」
仁は一瞬、言葉を失った。
そして。
「当たり前だろう」
低く、掠れた声だった。
「お前が俺を撃てるわけがない」
瑠衣の瞳が、ゆっくりと細められる。
「……そっか」
「瑠衣。目を閉じるな」
「ん……」
「聞こえているか」
「聞こえてるって……」
弱々しい返事。
仁は瑠衣の身体を抱き直した。
「よく頑張った」
「……っ」
「もう終わった。全部終わったんだ」
瑠衣の目尻から、涙が一筋こぼれた。
「……仁」
「何だ」
「オレ、もう……嫌いなものを増やしたくない」
「ああ」
「もう、誰にも泣いてほしくないんだ……」
「分かっている」
仁は瑠衣の頭に手を添えた。
「だから、もういい。お前は十分に戦った」
「……っ、う」
「もう一人で抱え込まなくていい」
瑠衣は仁の服を握ろうとした。
けれど、指先に力が入らない。
「……仁」
「ここにいる」
「どこにも……行かない?」
「行かない」
仁は即答した。
「俺はここにいる」
瑠衣の瞳が、ゆっくりと閉じていく。
「おい、瑠衣…?」
返事がない。
「瑠衣。目を開けろ…!」
仁の声が強くなる。
「……瑠衣!」
その身体から、ふっと力が抜けた。
「……っ」
仁は瑠衣を抱き締めた。
「ふざけるな……」
返事はない。
「お前、まだ俺に言うことがあるだろう」
震える手で、瑠衣の頬に触れる。
「まだ、何も聞いていない」
仁は瑠衣の身体を抱き上げた。
腕の中の少年は、目を閉じたまま動かない。
「……待っていろ」
倉庫の出口へ向かって走り出す。
「絶対に、助ける」
もう二度と。
目の前からいなくならないように。
今度こそ、隣にいてもらうために。
港に停めてあった車の扉を開ける。
「誰か! 救急車を呼べ!!」
普段の仁からは想像もできないほど、切迫した声だった。
瑠衣を後部座席に横たえ、その手を握る。
「瑠衣」
返事はない。
「……お前、よく頑張ったな」
静かな声。
「もう大丈夫だ。何も心配するな」
握った手に、そっと力を込める。
「帰ろう、瑠衣」
かつて二人で歩いた、あの場所へ。
「……おかえりを言わせてくれ」
仁は目を伏せた。
「だから、戻ってこい」
その声は、誰にも聞こえないほど小さかった。
―――今度こそ、二人で帰るために。
コメント
1件
いやあ……今回は本当に心臓に悪い回でしたね。冒頭から仁に銃口を向ける瑠衣のシーンで「え、本当に撃つのか!?」って息を止めて読んでました。でも、瑠衣が無全の命令に従えなくて、逆に仁の前に飛び込むところ、あそこがもう全てでしたね。「撃てなかった」って告白する瑠衣に「当たり前だろう」って返す仁の信頼の重さ……。やっぱりこの二人の間には、裏切りのフリをしても崩れない何かがちゃんとあるんだなって感じました。最後の「おかえりを言わせてくれ」で不意に泣きそうになりましたよ。設定の面では、連城家やライヘンバッハの組織構造も気になりますし、ホークアイズの「記録者」という肩書きも面白いですね。次は瑠衣が無事でいてくれることを祈りながら待ちます。