テラーノベル
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終電のアナウンスがホームに響く。
それを聞いた瞬間、なつが顔を上げた。
「やば!」
時計を見る。
時刻は23時58分。
完全に時間を忘れていた。
「終電じゃん!!」
「終電だな」
いるまは呑気に答える。
その態度に、なつは思わず眉をひそめた。
「なんでそんな落ち着いてるの」
「だって終電だし」
「だから困ってるんだけど」
今日は少し遠くまで遊びに来ていた。
最初は夕方には帰る予定だった。
それが気付けば夜になり、話しているうちにこんな時間になっていた。
ホームには数人しかいない。
夜風が吹く。
遠くから電車の音が近付いてくる。
「ほら」
いるまが顎で示す。
終電が入ってくる。
ドアが開く。
乗客が降りる。
そして。
なつは動かなかった。
「乗らないのか?」
「……」
「なつ?」
返事がない。
いるまは首を傾げた。
数秒後。
なつがぽつりと呟く。
「乗りたくない」
思わず聞き返しそうになった。
でも、その顔を見て言葉が止まる。
なつは電車ではなく、足元を見ていた。
発車メロディーが鳴る。
急かすような音。
それでも動かない。
「なんで?」
そう聞くと、なつは困ったように笑った。
「だってさ」
小さな声。
ホームに流れる風に消えそうなほど。
「今日、楽しかったから」
いるまの胸が少しだけ苦しくなる。
ドアが閉まり始める。
終電はそのまま走り去っていった。
137
1,149
いちご@低浮上中。。。
18,419
24,665
二人を残して。
静寂が落ちる。
数秒。
そして。
「……行っちゃったな」
いるまが言う。
「うん」
「終電」
「うん」
「どうする?」
だけど、お互いわかっていた。
本当に困っているわけじゃない。
終電を逃したことよりも。
一緒にいた時間が終わることの方が嫌だったのだ。
「じゃあ」
いるまが言う。
「始発まで付き合えよ」
なつは目を瞬く。
そして。
嬉しそうに笑った。
「うん!!」
夜のホーム。
終電はもう来ない。
それなのに。
二人は少しだけ安心したようにベンチへ腰を下ろした。
まだもう少しだけ。
隣にいられる理由ができたから。
コメント
1件
うわああああ最終回じゃなかったんだ?!(第8話か…!) 今日楽しかったから終電逃しちゃったの、めっちゃわかるよ〜😭💕一緒にいる時間が終わるのが嫌で「乗りたくない」って言えちゃうなつ、可愛すぎるし、いるまも察して始発まで付き合うって言ってくれるのエモすぎるでしょ…!!夜のホームに二人だけ残されて、隣にいられる理由ができたっていうラスト、胸がぎゅってなった⋆♡ 3e1さん、今回も素敵な距離感の描写ありがとうございます!次も楽しみにしてます🌸