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本気にさせたい恋

169 - 第169話  新しい家族のカタチ⑨

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2024年10月22日

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「望月さん・・・。あっ、もう透子さんってお呼びした方がいいかしらね? これからは早瀬の名前を名乗って頂くことになるのだから。 透子さん。うちの家族はこんな感じですが、どうぞよろしくお願いしますね」

「あっ、はい。いえ、こちらこそ。すいません、なんか私まで胸いっぱいになっちゃって・・・」

「ごめんなさいね。ずっと放っておいて、うちの家族のくだらないとこ見せちゃって」

「いえ。とんでもない。樹さんずっとご両親のこと気にかけてらしたので、私も他人事とは思えなくて・・・。でも嬉しいです。私もこの場にいれることが」

「心配かけたみたいで申し訳なかったわね。うちは少し他と違う家庭環境だから、透子さんにもこれから苦労かけちゃうかもしれないけれど」

「素敵です。とても。お互いがお互いを想い合って幸せを願い合っている姿が本当に。私も両親との幸せだった時間ちょっと思い出しちゃいました」


目の前で母親と透子が話しているのを見て、心が温かくなる。


これからホントに透子もオレの家族になっていくんだな・・・。


「透子さんもご両親との素敵な想い出おありになるんでしょ?」

「はい。年の離れた弟と両親と一緒に過ごせた時間は今でもホントに幸せな想い出です」

「そう。じゃあ今度そちらのご両親にもぜひお会いさせて頂かないとね」

「あっ・・・ハイ・・・」


母親がそう言うと、一瞬顔が曇る透子。


そうだよな・・。

透子の家の話はまだ何も伝えてなかっただけに、そうなってもおかしくない。

だけど、それをオレがどこまでどうやって伝えていいのか・・・。

透子には透子なりの両親との大切な想い出があって、正直今透子がどんな気持ちでいるのかがわからない。

だからこそ、オレが話して透子と思ってることを違うように伝えたくない。

透子がちゃんと自分の口で伝えるのが一番いい。

今どんな風に感じてどう思ってるのか。

透子の口からうちの両親に伝えてほしい。

もうどんなことがあっても、何言われても、絶対オレが透子を守るから。


「次。ちょっと特別に食べて欲しい料理あるんだ」


そこからいくつかの料理が運ばれて、メインに差し掛かる前に皆に声をかける。


「シチュー・・・」


そして運ばれてきたその料理を見て透子が呟く。


「そう。これ、今日の為に、シェフにお願いしてハルに作ってもらったんだ」

「・・・えっ? ハルくんに?」

「そう。ハルがこの店で働いてるのってなんか不思議な縁も感じるし。それならせっかくだから、ハルにも一品お願いしたくて」

「樹・・・」


うちの家族がずっと昔から使っていた店が、ハルの働いてる店ということは、ただの偶然かもしれない。

だけど、何か見えない必然的な縁も繋がっているような気がして。

また新たにオレの家族がこうやって集まれる場所は、想い出のあるこの店がよかった。

そして、今日大切な透子もこの場所に一緒に来れて、本当の透子の家族もいることが、きっとまた特別で意味あることだと思うから。


オレが今まで壊れかけていた家族のカタチを新しく作り直そうとしたように、透子も本当の家族との新たなカタチを作ってほしいと思った。

今まで叶う事のなかったその時間を、オレが特別な透子に特別な時間を贈ってあげたかった。


「そしてハルが作ってくれたのがこのシチュー。もう透子はわかってると思うけど」

「うん。すぐにわかった・・・。そっか・・・。ハルくん作ってくれたんだ。ハルくん自信ないからって今まで一度も食べさせてくれなくて・・・」

「だから、今日特別な日だからってお願いしたんだ。オレにとってはハルも家族の一員だから」

「ありがとう・・・樹・・・」


透子は静かに嬉しさを噛みしめている。


これからは透子と家族としての幸せを一緒に感じていきたい。

透子がオレの両親を大切に想ってくれるように、オレも、ハルも透子のお母さんも大切に想ってる。

それをこれからはちゃんと透子にも伝えていきたい。

オレと透子が家族でいる意味は、全部透子の幸せに繋がっていてほしい。

いつか一緒にいて当たり前に感じる日が来るかもしれないけど、だけどその時もその幸せを忘れずにいたい。

家族でいれることは当たり前でいて、当たり前じゃない。

それをオレ達二人はわかっているから。

その当たり前がどんなに難しいことで幸せなことであるかを。

そして一緒にいれることがどれだけ幸せなのかということを。


「この店でシチューだなんて、何年振りかしら」

「そうだな。最近はこの店ではもう食べられていなかったな」


すると、なぜか親父たちがそんなことを言っていて。

この店でオレたちが一緒に来た時はシチューなんて出てこなかったはず。


「親父と母さん、ここでシチュー食べたことあるの?」

「えぇ。昔はね、このお店でもシチューがあったのよ。私たちそのシチューがとても気に入っていて、ここに来るたび当時はいつも頼んでいたの」

「そうなんだ? 確かにオレここで食べたことないかも」

「そうね。でもあなたも小さい頃はここで食べたことあるのよ?」

「そうなんだ?」


シチュー食べた記憶ないな。

オレも食べたことあるんだ。

なら、ホントに記憶にないくらい小さかった頃ってことか。


「そのハルさん・・・? その方は、透子さんのご家族?」

「あっ、すいません。ご説明もなしに。ハイ。悠翔っていって私の弟なんですが、縁あってこちらのお店でシェフとして働かせて頂いてるんです」

「まぁ。そうだったのね」

「それでオレが無理言って頼んだんだ。オレにとっても彼女にとっても特別な日だからって」

「料理人としてはまだまだみたいで、最近ようやく少し料理任せてもらえるようになったって聞いてはいたんですが・・」

「それで今日このシチューを作って下さったのね」

「ハイ。そうみたいです。実はうちの両親、小さいお店ですがフレンチの店をやっていて。そこで出しているシチューが私にとっても弟にとっても特別で絶品で大好きな料理で。弟が料理人として、いつか自信がついた時、特別な日に作ってくれるって約束してくれてたんです。まさかそれが今日だなんて思ってもなくて・・・」

「素敵なお話ね。そんな特別なシチュー私たちも頂けるなんて光栄だわ」

「冷めないうちに頂こうか」

「ええ」


透子の為に今日は特別にハルに用意してもらったこのシチュー。

だけど、親父と母親もこの店でそんな想い出があったなんて知らなくて。

そんな話を聞けたのが偶然とはいえ、少し嬉しく感じる。


「いただきます」


シチューを嬉しそうに見つめながら、静かにそう呟く透子。

そしてゆっくりそのシチューを口に運んでじっくりと味わっている。

みるみるうちに笑顔になって幸せそうな透子。


「うん・・。この味。大好きな味」

「ホントだ。ウマい。あの時食べさせてもらったシチューと同じ」


口に入れて透子の店で食べたシチューの味をすぐに思い出す。

透子と二人シチューを口にしてお互い微笑み合う。


すげーな、ハル。

ちゃんとあの味を再現出来てる。

なのにここまで透子に食べさせなかったことで、ハルの本気さと真剣な想いが伝わる。

ここまで作れてたならもう十分なのに。

だけど、ある意味このタイミングでその場を作れてよかった。

今日この場所がオレと家族が特別な時間になったように、透子とハルも家族として特別な時間になってくれたのが何より嬉しい。



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