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170 - 第170話  新しい家族のカタチ⑩

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2024年10月23日

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「これ・・・。あのシチュー・・・」

「あぁ・・・。確かに。あのシチューだ」


すると親父たちが同じようにシチューを口にして反応を示す。


「前にこの店で食べたって言ってたシチュー?」


そういえばさっきこの店でも食べたことあるって言ってたっけ。


「えぇ。このシチュー。私たちもこのお店で食べたのと同じような気がして」

「そんなはずないでしょ。ハルは年齢もオレより少し下だし、この店では初めて作ったって言ってた」

「そうよね・・・」


そんなにその時のシチューとこのハルが作ってるシチューの味似てるんだな。


「確か。このシチューを食べられなくなったのは、その当時シチューを担当していたシェフが独立して新しく店を始めるからと言ってたな。それでそのシチューはそのシェフがその店で提供する大事な料理にしたいと言って、この店では出さなくなったんだ」


親父が当時を思いだしてそんなことを呟く。


「ちょっと待って。確か透子さんのお名前って・・・」


すると母親が透子に声をかける。


「望月 透子です・・」

「そのご両親のお店のお名前って・・・」

「”ビストロ Mochizuki”です」

「そう!その名前! やっぱりそうよね?」

「確かその名前だった。望月シェフだ。私たちがこの店で食べていたシチューを作ってくれていたのは」


親父と母親が次々と記憶を想い出して興奮し始める。


だけどホントにそんなことが・・・?


「もしかして・・・うちの父が自分の店やる前に働いてた店って・・・」

「私たちの想い出のシチューも、あなたのお父様が作られたシチューだったってことね」


まさかそんな偶然・・・。

今度は透子の過去と親父たちとの過去がリンクし始める。

ということは、透子のお父さんとも、オレの両親が繋がっていたってこと・・・?

そんな奇跡ある・・・?

二人の想い出のシチューも、透子が大切にしていたシチューと同じシチューだったなんて・・・。


「実は私たちが別れるのと同じくらいに、お父様は独立されてね。3人で一緒に食べたのはこのお店が最後だったのよ」

「そうだったんですか・・・」

「でもね。実は私そのあと樹を連れて、その独立されたお店に食べに行ったことあるのよ」

「えっ!?」

「えっ!? オレ一緒に昔行ったことあったの?」


透子が驚くのと同時にオレも驚いて母親に尋ねる。


それって透子のお母さんの店に食べに行ってたってこと?


「そうよ。あのシチューが忘れられなくてね。独立されてからお店もリーズナブルになって、気軽に行けるお店になったから、私と小さい樹連れてでも行くことが出来たのよ」


マジか・・・。

じゃあその頃はまだ透子のお父さんもいて、ホントにそのシチューを食べれてたってことだよな・・・。


「そうなんだ・・・。オレこの前結婚の挨拶に行った時、初めてその店に行って、シチューも食べさせてもらったんだ。でもまさかそこにすでにオレ行ってたなんて・・・・」


そっか・・・。

だからあの店のシチューを食べて、なぜか懐かしい気持ちになったのか・・・。

ホントにオレが小さい頃に食べていて、それを憶えていたのかもしれない。

他の店のシチューとはまた違うホントに温かい味。


「そう。あのお店に伺ったのね。あ・・確かそういえばその時、お店を手伝われてた若い娘さんがいらっしゃったような・・・。もしかして、それが透子さん、だったのかしら」

「ハイ。オープン当時、私は高校生で、合間によくお店手伝ってたのでそうだと思います」

「やっぱり・・・。その時、樹より少し下くらいの男の子もいた気がしたけれど・・・」

「それがきっと弟のハルくんです。私より10コ下で年齢が随分離れていたので、当時はよく弟もお店連れて来て、子守しながらお店手伝ってたので」

「そう・・・。その男の子が今はお父様と同じこのお店でこのシチューを・・・。そうそう。そういえばその時、透子さん、弟さんと年が近いからと言って、樹を気にかけて声かけてくださってお話もして頂いてた気がするわ」

「えっ!? オレ透子と話もしてたの!?」


いや、ちょっと待って待って。

えっ、もうオレが予想していない過去が出過ぎてて整理出来ない。

オレ、そんな時からもう透子と会ってたの?


「ハハッ。それヤバいね。めちゃめちゃもうオレたち運命で繋がれちゃってんじゃん」

「ホントに。あまりにも昔から繋がりすぎて、ちょっと笑っちゃうくらい」


透子も同じように笑う。


だけど、そう言われてなんとなく思い出してきた当時の記憶。

その頃の自分の記憶を少しずつ思い出しては、その時の透子とオレの記憶がどんどん一致していく。

それがあまりにも嬉しくて、また思わず笑ってしまう。

そしてオレがこんなにも透子を好きになってしまう理由が、ようやく今ハッキリわかった。



「そうね。あなたたちの縁は私たちが作り出したってことかもしれないわね」

「そりゃオレもどうやったって好きになるはずだよね。そんな時からオレは透子に出会っちゃってるワケだから」

「確かにね。あのお店で手伝われてる姿が、とても楽しそうでテキパキしてて。明るくて素敵な印象だったから私もよく憶えてるわ。当時奥様にも子育ての相談もさせてもらったりしてたくらい当時は結構通ってたのよ」

「えっ! そうなんですか?」

「ええ。離婚して一人頑張ってたあの当時は、お店に通って奥様とお話させてもらってたことで気持ち的にも随分助けて頂いたのよ」


母親も別れてからもそんな繋がりがあったなんて・・・。

オレも透子も知らないところで、母親同士が繋がっていたという奇跡。


「だけど、どんどん仕事が忙しくなって、それからしばらくしたらお店になかなか通えなくなってしまって、もうここ何年もお邪魔出来てないわ・・・。まだご両親あの場所で変わらずお店されてるのかしら?」

「ハイ。今も同じ場所で頑張ってます。でも数年前に父が亡くなって、今は母一人で」

「・・・そう、だったの・・・。ごめんなさいね。全然知らなくて・・・」

「あっ! 全然気になさらないでください! もう随分前のことで、今は母が一人で楽しく頑張って続けてますので」


透子が明るく答える。


「そう・・・。でも今もあのお店でシチュー出されてるのね」

「ハイ。母が父の想いを今も守り続けています。弟もいつかその店を継いでくれる予定なので、この先もずっとこの父の味は守っていきます」

「そう・・・。じゃあまた近々久々にお店に伺わせてもらおうかしら」

「ハイ! ぜひ」

「今度はこの人と想い出の料理を当時を思い出しながら・・・、ね?」

「あぁ・・・」


親父が照れくさそうに母親へ答える。


「透子さん。樹が選んだ女性があなたでよかったわ」


母親にそう言われ透子が嬉しそうに微笑む。


「きっとあなたたちは運命的に結ばれてる相手同士だったのかもしれないわね」

「こちらこそ。樹さんに選んで頂いて感謝してます」


オレが透子を選んだんじゃないよ。

出会うべくしてきっと出会ったんだ。

オレは透子しか考えられなかった。

ただけそれだけ。


「私と母さんはお互いやりたいことを優先して、離れる幸せを選んだ。樹も同じ道を歩んでしまわないかと最初は不安になっていたのだが、もうそんな心配はいらないようだな」

「大丈夫。オレ達は絶対何があっても離れないから。例え離れたとしてもきっとオレたちも親父と母さんと同じように想い合えてるだけで幸せでいられると思う」

「ハイ。一緒にいれても、離れてしまっても、私も樹さんの存在が変わらずあれば、ずっと想い合えてるその絆だけで幸せだと思います」

「そうか・・・。まったくお前たちは・・・。そんなとこは私たちを真似なくてもいい。これからはお前たち二人で一緒に側で支え合いながら幸せになりなさい」


親父が照れくさそうに笑って伝えてくれる。


結局、親父たちとオレたちは同じ運命を辿ろうとしていた。

だけど、オレと透子は一緒に生きて行ける運命を自分たちで手にすることが出来た。

そして今は親父たちも温かく祝福してくれる。


「ハイ。必ず幸せになります」


親父たちにも力強くその想いを伝えた。


ようやくちゃんと言えた。

きっと本当は一番この幸せを伝えたかった人。

そして一番祝福してもらいたかった人。


ここからやっとオレたちの幸せが始まる。





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