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ゆかボンド
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──────メテヲさん視点──────
ガン兄はそのまま、ゆっくりと下降していく。
「ガン兄…ありがとう。」
ひとまず助けてくれたお礼を言うべきだ、と思って感謝を口にしたが、思いのほか恥ずかしい。そもそも自分がこんなミスをしたことが恥ずかしいと言うのに、そのミスのしり拭いをガン兄にやらせてしまっている、というのがさらにメテヲを恥ずかしくさせる。1度、冷えた頭は既に正常に回りだし、ここは安全だ、と認識してようやく肩の荷がおりたような感覚がした。───ひとまず、ぐさおが無事であることを喜ぶべきだ、そう考えてメテヲは腕の中で丸くなっているぐさおに目をやる。
「えへへ〜!メテ兄!ガン兄!とっても高いね!お花がいっぱい見れるよ!」
そういいながら、ぐさおはメテヲの腕の中から小さな手を伸ばして庭を指さす。…綺麗だね、と言いたいけれど、再びメテヲのせいでぐさおが危なかったという現実を思い出してしまい、声がうわずる。
「…そうだね。ぐさお、ごめんねぇ…っ」
自身の行動を悔いて、あんなことをした自分が許せなくて、悔し涙を流す。どうしてこうなってしまったんだ、と原因を解明するが、自分のせい、以外の原因が見つからなかった。そう、メテヲのせい。もし、ガン兄が気づかなかったら、ぐさおが危なかったかもしれない。そんな、危険な行為を甘く見て実行したメテヲの落ち度である。
メテヲのせい、メテヲのせい。そう、自分でもわかっているのに。なぜだか涙が止まらなくて、でも、ぐさおの前で泣きたくなくて、必死に笑顔を取り繕う。だって、ぐさおの前では完璧な兄でいたいから。
そんなこんなを考えていたら、ガン兄がゆっくりと庭に着地し、メテヲを腕から降ろしてくれる。
「えへへ〜!楽しかった!!」
ぐさおは何が起こったのかわかっていないのだろう。満面の笑みでさっきの高い高いの感想を教えてくれる。───そんな、無邪気な妹を、メテヲは…。自己否定の負のループに陥る。こんなことをしても無駄だって分かってるのに。けど、止められないし、やめられない。そうでもしないと、こんな自分を許せる気がしない。
「そういえば、ぐさお。お母様から宿題が出ていたよね。提出期限、そろそろ過ぎちゃうよ?」
ガン兄が、そうぐさおに優しく言う。ぐさおはさっきまでの笑顔と打って変わってさぁっと顔を青ざめる。メテヲたちのお母様はいつもは優しいのだが、こういう、細かいところには厳しいのだ。ぐさおは慌てて自身の部屋へと急いで駆けていく。
「ちょっ!走ると危ないよ!」
本日2度目の注意をぐさおにしたが、今度は聞きいられることなく、そのまま走って家へと入っていった。
…庭に残されたのはメテヲとガン兄。ガン兄はいつの間にやら二対の翼を背中に収め、角も、溶けかけた光輪ももう既になかった。けれど、さっきと同じ姿で、いつもと違うのは、瞳が布に覆われていないこと。美しい瞳がじっと、メテヲの目を覗き込んでくる。全てを見透かそうとするその瞳に映りこんだメテヲはなんとも情けない表情を浮かべていた。
その美しい瞳を釣り上げて、ガン兄は表情を険しくし、いつもよりも声のトーンを下げて、さっきのメテヲの行動に苦言を呈してくる。
「メテヲ。さっきの行動はさすがに危機感がなかったよ。」
「…ごめんなさい。」
ここは、素直に謝るしかなかった。もとより、自分のせいでこうなった、ということは自負していたし、怒られるだろうな、とも思っていた。メテヲの翼はまだまだ頼りにならない。あのまま自由落下を続けていたら、メテヲは間違いなく死んでいただろうし、ぐさおも重症だっただろう。それほどまでに、先程の行動は危険だったのだ。言い訳の余地もない。
「あのね、メテヲ。別に、メテヲは完璧を求めなくてもいいし、頼りになる兄じゃなくてもいい。」
ガン兄は突然諭すようなことを言ってくる。けれど、その言葉はメテヲの根幹を揺るがす発言だった。『完璧』、『頼りになる』、『兄』。そのどれもがメテヲが憧れて、手を伸ばしていた目標だった。その目標のために、今まで頑張ってきたというのに。どうして、ガン兄はそれを否定するのだろうか。
我慢していた涙がぶわっと溢れて、止まることなく溢れ続ける。自分でもわかってる。たしかに、さっきの行動はあまりにも酷いものだった。けど、だからといって、メテヲの信念を、求めているものを否定しなくてもいいじゃないか。そんな、変な対抗心と馬鹿な感情の抵抗のせいで頭の中はぐちゃぐちゃだった。
けれど、ガン兄は決して慌てることなく、話を続ける。
「うーん、メテヲの考えていることと、私が言いたいことは違うなぁ。」
「ぅっヒッなっにが…っ違うのぉ…っ!!メテヲっヒック、そのために…っ頑張って…ったんだよ…?」
涙のせいで途切れ途切れの言葉になってしまった。言いたいのは、これだけじゃないのに。けど、これ以上の言葉は紡げなくて、涙の嗚咽で口がうまく回らない。メテヲが悪いのに、泣いて、ガン兄を加害者に、自分は被害者のように振舞っている気がして、さらに自身に対して嫌気がさす。でも、どうすることも出来なくて、感情のままに泣くしかなかった。
ガン兄は、メテヲを抱き寄せて、背中を撫でつつ話を続ける。
「あのね、すぐに完璧にならなくてもいいんだよ。頼りになる兄になるのを急がなくてもいいの。沢山失敗して、悩んで、それで挑戦する。この繰り返しであなたは成長していく。失敗した時は、今日みたいに私、ガン兄が助けてあげるから。だから、今日の失敗をよく考えて、次に活かして。そうしたら、それは失敗じゃなくて成長の欠片になるから。」
そう言って、何回も、何回も頭を撫でてくれる。…撫でられたのは、いつぶりだろうか。最近はぐさお、 ぐさお、ぐさおで、ガン兄に甘えることもめっきり減ってしまった。兄に頼るのは少し恥ずかしい、と思っていたのもあった。でも、そっか。完璧になるのを急がなくてもいいんだ。頼りになる兄になるためには最初から求めすぎるんじゃなくて、挑戦していけばいいんだ。すぅっとメテヲの胸の取っ掛りが消えて、不安と、焦りが溶けたよう気がする。何よりも、ガン兄の目を見ると、どうしてか分からないけど、とても安心するのだ。
「ありが…っとう。メテヲっ頑張る…っ!」
まだ、嗚咽まじりだけれど、今度は違う。決意の籠った、メテヲの成長の欠片であった。
ここで切ります!今回はメテヲさんの成長回ですね!!まあ、幼少期の記憶とも言いますが…。ガンマスさんが兄してるのおもろすぎるwと書いてて思ってましたすみません。なんか、思いのほか書くペースが遅くて数十話に収まるか不安になってきました…。平気、だよね?
それでは!おつはる〜!
コメント
2件
このまま癒しだけでもいいんじゃないかな