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「…嘘?」
「………出てくるなといったでしょう?!何故出てきたの!!」
后妃のヒステリックな声が響く
それが非常に不愉快で…頭に響いて痛い
「お母様…」
「やめて…化け物…」
(この感じ…心を読まれたのか…そんな高度な魔法…)
ジャックが感じた疑問は不思議な感覚と共に少女に伝えられた
「まほうじゃ…ない」
「っ!?」
(また読まれた…いや…それ以前に…魔法じゃない?)
「もう話さないでよ!化け物!」
第一王女の母親似の高くヒステリックな声が耳をつんざいていく
ジャックの心に“化け物”という言葉が重くのし掛かる
一瞬だけ真っ暗になった視界をもとに戻すと、目の前には目を潤ませているあの子がいた
「ごめん…なさい。でも…口が勝手に…」
「言い訳しないで!戻ってなさい!」
「はい…」
トボトボと食卓から出ていく小さな背はとても悲しそうだった
「っ君!」
「?」
「私は…“ジャック・グレス”。今日から君の専属執事になる者です」
「専属…?」
「ちょ、ちょっと!」
横に入ってきたのは第一王女だ
傲慢きちなその顔には困惑が広がっていた
「あ、あなた…この化け物の執事なの?私のじゃなくて?」
「そうですが…」
「お母様!そうなの?!」
怒りの籠った声だ。それがとても怖い
「あら?こんな地底の底から来たようなヤツを気に入ったの?」
「違うわ!こんな化け物に専属の執事がつくのが嫌なの!」
「あら、そうなの?じゃあ“メイリー”の執事にします?」
「え?いいの?!」
(ダメに決まっているじゃないか…明らかに対象はこの子…離れる訳には…)
「…………」
あまりにも理不尽な会話には常識のしの字もないようだ
少女は必死で心の内容を話さないようにしているのか、口を両手で押さえている
「っ…」
「すみません…魅力的な提案ですが、私は最初に定められた仕事をこなすことがモットーなのです…」
「……あ」
「しゃべらないで!」
ジャックをキッと睨んでいるメイリー姫を抱きながら后妃も睨み付けてくる
この間の国王の存在感は空気に近かった
「私、もう腹は減っておりません。失礼します」
静かに…重厚感のある声を捻り出す
いつもは虫の心臓のような声を絞り出しているジャックが発した声に、后妃と姫は怯んだようだ
しかし、国王は依然として空気が薄い
ジャックが捻り出した声にも臆していない
(これは…なかなか厳しい仕事になりそうだな…)