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宮本はデコトラからひょいと降りて、行きつけのコンビニに入店し、眠気覚ましのコーヒーを買った。

紙コップから伝わる温もりに、ホクホクしながらデコトラに乗り込もうとした瞬間、視線の先に黒塗りのハイヤーが目に留まった。それだけで、口元がだらしなくなるのがわかる。

(陽さんの仕事車だ。こんなところで逢えるなんて、今日はついてるな!)

某有名銀行に横付けされた黒塗りのハイヤーの運転席から陽さんが現れ、歩道側の後部座席に長い足で向かうその姿に、胸がじんと疼く。

自分とは違うサラサラの髪をなびかせる営業スマイル全開の恋人の顔を、心のシャッターで撮影した。滅多に働いているところを見られないゆえに、何度でもシャッターを切ってしまう。

「やっぱりカッコいいなぁ、陽さん……」

ひとこと呟いてから、何の気なしにコーヒーを思いっきり啜った。

「あちちっ!」

ぐびっと煽ってしまい、ちょっとだけ口の中が火傷してしまった。地味な痛みに辟易している間に、陽さんはトランクから大きな荷物を取り出し、後部座席に乗っていた人物に手渡す。

ぼんやりとその様子を眺めていると、後部座席に乗っていた人物が手渡された荷物からなにかを取り出し、陽さんに紙袋らしきものを押しつけるように、プレゼントしているではないか!

形の整った眉毛をへの字にしながら、懸命に断る陽さんに、まったく食い下がらない人物は、白手袋をはめている陽さんの手首を掴み、強引に紙袋を持たせた。

指を立ててくどくどなにかを告げる人物に、陽さんは丁寧に頭を下げてお礼を言ったっぽい。弱り切った表情が、すべてを物語っていた。

無事になにかをプレゼントできた人物は、ニコニコしながら銀行の中に吸い込まれたが、陽さんは肩を落としながら運転席に乗り込む。

俺の知らない仕事中の陽さんの顔――全部ひとりじめしたいと思うのは、俺の我儘なのかな。今の出来事だって、ここで見かけなければ、俺がまったく知らないことになる。陽さんは、いったいなにを手渡されたのか。知りたくもあるし知りたくもない。

「あーあ、超複雑……」

冷めてしまったコーヒーと一緒に、デコトラに乗り込む。恋人に偶然出逢えたことで意気揚々とこのあと仕事をこなす予定だったのに、意気消沈しながらデコトラを運転して荷物を運ぶことになった。

不器用なふたり この想いをトップスピードにのせて

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