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「うーん……う~ん……」

「いい加減諦めてはいかがですか? 無駄ですよ」

「うるさい……」


リージョンシーカー本部の執務室で、チョロチョロ動き回りながら呻くピアーニャ。ロンデルに涼しい顔で無駄だと言われるも、諦めずに悩み続ける。

その理由は……


「あちこちでソウドウがおこって、さきのばしにしていたが、わちもホンライはあたらしいリージョンにいきたいのだ! しかしそのタメには、ミューゼオラのキョウリョクがひつようふかけつ」

「ですね」

「そうなると、ヒツゼンてきに、アリエッタまでついてくるのだぞ! しかもオマケではなく、ヘタするとミューゼオラよりもジュウヨウなかんじで!」

「……ミューゼさんとパフィさんは、アリエッタさんを可愛がっていますからね」

「………………うむ」(ホントウは、そういうリユウではないのだがな)


新しい試みと、どうしても避けられないアリエッタの介入である。

ピアーニャは見た事の無いリージョンに行くこと自体は大好きなのだ。しかし、これまでの経験上、アリエッタが一緒にいる場合は、アリエッタに子守りを。それでは満足に動く事が出来ない。

留守番しててくれよ!と本人に叫びたいところだが、まだ単語単位でしか会話出来ないアリエッタが相手では、その意味は正しく通じず、笑顔で撫でられる未来しか見えない。


「さすがにコンカイは、ミューゼオラだけ…というのは、センリョクてきにむずかしいしな」

「何があるか分からない場所に、連携行動を主体とする2人を分けるのは、愚策ですからね」


ミューゼとパフィは2人で行動する事で、2人前以上の能力を発揮するというのが、ピアーニャ達の評価である。どちらか片方だけで行動すれば、身体能力と生活能力の高いパフィはともかく、ミューゼの咄嗟の対応力はまだ半人前なのだ。


「アリエッタさんに何かあれば、あの2人は恐ろしいですからね。悪い事だけではないでしょう」

「そのために、わちがつかまるんだが?」

「……ぷふっ。それ以上に成果が出ればっ、ん゛っ、問題なひっ、でしょっ。ククク」

「わらうなあっ!」


一緒に行動していては、エテナ=ネプトの時のように、まともに行動出来ない。それはピアーニャの望むところでは無いのだ。


「アイツら、まえにルスバンになれさせる~とかいいながら、ジブンたちがアリエッタからはなれられなくなってるんだぞ! なにかいいタイサクはないか……なにか……」

(とりあえず、アリエッタさんを守るには、2人だけでは駄目ですね。身内から選抜しておきますか)


無駄に悩み続けるピアーニャを他所に、ロンデルは今回の計画書をまとめていくのであった。




「うあ~いやだ~かえりたい~」

「まだ言ってるんですか? 諦めてください」


後日、ピアーニャとロンデルは、ニーニルの町を歩いていた。目的はミューゼに会う為。

結局良案が浮かばなかったので、ピアーニャはここまでひたすらゴネている。


「ほら、エルトフェリアが見えてきましたよ」

「ああ? まだけっこうはなれて……」


ロンデルが指差す先。その上空に、いくつもの丸まった布が見えた。『ようこそエルトフェリア』という文字、食べ物や服の絵が描かれ、ふわふわと浮かんでいる。


「ウワー、ワカリヤスイナー」

「ソウデスネー」


2人は察した。あの少女の影響だと。

布は紐で繋がれて、風に揺られている。魔法を使っている気配は無いので、重さを変える青い葉の効果だという事まで理解した。


「よしかえろう!」

「さぁ急ぎますよ」

「いやだー! はなせー!」


ピアーニャが駄々をこねている間に、ミューゼの家の前へとたどり着いた。すると、


「ぴあーにゃ!」

「ヒッ!?」


元気な声で名前を呼ばれ、身を震わせる。なんとアリエッタが、玄関で待ち構えていた。


「その辺りにいた兵士捕まえて、今からミューゼさんの家に行くと伝えてもらっておきました」

「オマエよけいなコトするなよっ!」


ミューゼはネフテリアのお気に入り。そしてエルトフェリアに隣接しているという事で、兵士に頼めばすぐに伝えてもらう事が出来る。「ピアーニャがこれから来る」と伝われば、それはアリエッタにも教えらる。結果、玄関からチラチラと外を伺って、妹をまだかまだかと待つお姉ちゃんと、それを後ろから眺めてデレデレする料理人が発生した。

開いたドアの向こうに、気色悪い顔でこちらを伺うパフィを見て、ピアーニャは容易にその構図が想像できたのだった。

ここまで来たら仕方ないと、ようやく諦めたピアーニャ。大きなため息を吐いて、アリエッタに抱っこされた。


「いや、あるけるからな?」

「ぴあーにゃ、おひるね」

「おいおい……ねむくないからな?」

「おりがみ?」

「だからな……」


頑張って覚えた単語で妹分をリードしようとするアリエッタ。

仕事でここに来ているので、遊ぶわけにはいかないのだが、ピアーニャが大人だという事を伝える事が出来ないので、説得のしようがない。


「そろそろなんとか、おしえられんか?」

「うーん、まだ言っても絶対に信じないと思いますけど」

「総長が大人だって信じる要素が無いのよ」

「くっ……うわぁちょっとまて、ねむくないから」


言葉以外の説得力が大きすぎるせいで、会話が通じなければ絶対に伝わらない。アリエッタが真実を知るのは、まだまだ先になりそうである。


「で、なんか用なのよ?」

「ええ。実は新しいリージョンの情報があるので、協力してほしいのです」


ピアーニャがアリエッタに捕まっているので、ロンデルに話を聞くことにした。


「そーゆーのって、もっとベテランの人がやるんじゃないのよ?」

「そうなのですが、今回はミューゼさんの協力が不可欠なんです」

「へ? あたし?」

「ちょっと待ったああああ!」

『うわあっ!?』


ミューゼが首を傾げたところで、部屋にある箱の中からネフテリアが飛び出した。


「どこから湧いて出てきてるのよ!」

「ピアーニャが来ると聞いて」

「もうやだこの王女様……」


一体いつの間に潜んだのか……と思いきや、箱からにゅっと顔をだしたオスルェンシスが、ペコペコ謝っている。本当に湧いて出てきたようだ。


「そんな事より、ミューゼに協力要請って事は、あの話ね?」

「あ、はい」

「よーし腕が鳴るわ」


ネフテリアは行く気満々である。しかし、


「ネフテリア様はエルトフェリアの経営でお留守番です」

「えっ」

「当然です。まだ出来たばかりの店なので、しばらくは待機しておかないと」

「うっ」

「王妃様からも、管理を学べと言われているでしょう?」

「ぐっ」


長期不在は許されないようだ。無理矢理土地を入手し、ミューゼの家の隣に家を建てるところまで、かなり強引に進めた為、ここでいなくなるのはマズイと、本人も分かっている。


「……新天地に行くって事は、何チームかに分かれて行動するんでしょ? 流石にミューゼとアリエッタちゃんに、知らない男のシーカーがついて行くとかはしないよね?」

「大丈夫ですよ。ちゃんと精鋭を考えてあります」


そう言って、ロンデルはにっこりと微笑んだ。


「オマエら、わちぬきでハナシをすすめるなよ……」


声がした方に振り向けば、そこにはぎゅっと抱きしめられたピアーニャと、妹分を寝かしつけようとして寝落ちしたアリエッタの姿があった。

そんな少女達を見て、大人達はにっこりと微笑んだ。


「ぐぬぅ……」




そしてまた日常を過ごし、新しいリージョンへ向かう日となった。

転移の塔に、総勢20名を超えるシーカー達が集まった。その中にミューゼ達も入っている。

ロンデルに案内されたのは、転移の塔の最上階。床に沢山の円が描かれた、大広間である。


「へー。塔の上ってこんな感じになってたんだ」

「うむ。こことはちがうリージョンからながれついたモノをショクバイに、このヒロマにしこまれたキノウをつかって、リージョンをさがしあてるのだ」

「凄いのよー」


塔という施設にした理由は「遠くに届きそうだから」と雑だが、実際に転移する機能を持たせるには、かなり適しているようだ。長年改装されないのも、利便性がしっかりしている為である。


「で、ラッチも来るのよ?」

「ふっ、我の力が必要だと、総長さんから直接指令を言い渡されたリムよ」

「ミウチだとアンシンだろ。ロンデルとパルミラのスイセンだ」


本来はパルミラを推したかったが、パルミラはエルトフェリアの警備とネフテリアの補助で残る事になった。そこで、パルミラ程ではないが、連携でネフテリアを捕らえたという実績もあり、アリエッタの事も知っているラッチが、今回同行する事になったのだ。ファナリアにやってきてから、パルミラに護衛のノウハウも教わっているので、適任と判断したようだ。


「それで服がお揃いなのよ……」

「フェリスクベル様と同じお召し物とは、光栄の至りリム」


今回は、アリエッタが楽しそうだったという理由から、数日前に作った『アイドルのようなウエイトレス衣装』をみんなで着ている。手直しとサイズ調整も終わり、アリエッタ、ミューゼ、パフィ、ピアーニャに加え、ラッチまで同じ服を着ている。全員色違いだが。


「ホカにもいるが……まぁアトにするか。ミューゼオラよ、こっちきてくれ」

「はーい」

「よーしみんな、ちゅうもーく!」


全員がピアーニャとミューゼに注目した。服が可愛いので、顔がだらしなくなる者もいたりする。


「これより、ダレもいったことがないリージョンへと、とぶコトになる。ぜんいん、さいていげんのケイカイはしておくように」

『おーっ』


簡単な説明が終わり、転移の準備を開始する。


「ミューゼオラはココにたて。そしてツエのキのぶぶんをこのイシにあてておいてくれ」

「ふんふん……」


ミューゼは言われた通りに、広間の奥にある装飾された石に杖を添えた。


「よし、キドウせよ」

『はいっ』


石の両側から、兵士がレバーを操作する。


「それで行けるのよ?」

「うむ」


ピアーニャの説明によると、元々ハウドラントとファナリアの技術を詰め込んだ魔力による転移装置だったが、そこへクリエルテスの鉱石やワグナージュの機械など、色々な技術を合わせ、より安全に、そして確実に新しいリージョンを探し当てる事が出来るようになったという。失敗した時の為の、帰還用の道具も準備されているらしい。

それでも他リージョンからの漂流物は、探して見つかるようなものでもないので、一般的にはあまり知られていない機能である。

石が光り、光が天上や壁へと広がり、部屋全体を包み込む。


「よし、テンイかいしぶっ!?」

「ぴあーにゃ、すごい! すごい!」

「わかった! わかったからはなれろっ」

『プッ』


興奮したアリエッタがピアーニャに抱き着いて、シーカー達が噴出したところで、光がまるで溶けるかのように収まり始める。光の隙間からは、塔の石壁ではない光景が少しずつ見え始めていた。

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