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睡蓮
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#異能力バトル
名無の男2
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いやあ、第87話めっちゃ熱かったわ!カフカの異形化、あの触手と「イルカの夢でさようなら」の能力ヤバかったね。概念そのものを拒絶するって発想がエグい。んで、主人公の「破壊」の力に条件があったってのが良い伏線回収。直接触れてなきゃダメなんだな。ロビンソンと御山弟の乱入も激アツだったし、3人で支配者に立ち向かう流れ、続きが気になりすぎる🔥 カフカ本体をどうやって取り戻すのか、ガチで楽しみにしてる!
そうして遂に彼女は。
鉄の球体で頭を覆い、髪の毛のような触手を何本も生やすおぞましい異形の怪物に成ってしまった。
「これが……、こんな邪悪の化身みてえなのがカフカの権能……、『夢物語』だってのか!?」
「否。 これは権能であって権能ではない。 権能の裏面、仮面を持つ者に許されたもう一つの可能性。 正反対の虚像に位置する異能、顕現であるぞ」
「顕現……?」
顕現ってのが何なのか、そんな説明じゃあ全くってほど分からない。こんな化け物のことを分かるはずがない。
しかし、たった今……、こうして目の前で対峙することで、全身全霊がビッシリと感じている。
それは存在してはならないモノであると、言葉要らずで知覚させるほどの強い存在感を。
これが……、顕現。
一般人には他の何かと比類することすら許されない、強大な上位存在の降臨……!
「人の子。 確か、神無月と言うたか。 顕現すら知らぬとは、『少数派』では余程低い階級におるようじゃな」
「……オレは『少数派』じゃねえ」
「ほう、そうじゃったか。 なら『分派』の者かの? 権能を知っておるから身内と勘違いしておったわ。 何せ妾は、あの者らからは隔離されておるからの」
『分派』……、『廃棄物』。
あの夏、ジョン・ドゥが言っていたことがフと頭をよぎる。
”オマケにもひとつ……、
最高に絶望的なことを教えてやる。
ラヴェンダーは……、
権能を二つ所持している“
あの言葉の意味が……、過負荷の言う顕現ってやつだったとしたら。
オレはどうやってラヴェンダーが展開した、永遠の夏休みから抜け出せたっていうんだ?
何故か『8月32日』の記憶は、ほとんどが曖昧で思い出せない。
だが……、オレは今ここで生きてる。
てことは、例の捨て身の作戦が上手くぶっ刺さったのだろう。
その証明に、頭ん中の時間感覚は狂ったままだ。
それなら何らかの原因で記憶が抜け落ちてはいるものの、その作戦中に奴の顕現と対峙し、打破することに成功した可能性が高い。
つまり、オレは既に顕現による難局を一度は越えていることになる。
カフカの第二人格ってやつが何を企んでるかは知らないが、例え拳を交えることになったとしても……、一度対処出来たものなら、もう一度ぶつかったってきっと越えられる……、はず。
「星栞花撫香はこの星の支配者になるべき存在であるぞ。 汝の下賎な思想で穢すでない」
「……支配者ってのは何なんだ?」
「支配者は支配者じゃ。 この星を統制し、行く末を選択する玉座の者。 あの娘はインターネットを破壊したいと願っておるが、その崇高なる思想は更なる大願にこそ相応しきもの。 ……人類統制。 力を振るい、星を操作し、悪を総洗いする、人の王になるべき器じゃ」
「そんなこと……、カフカが望んでるわけねえだろうが!」
「インターネットの破壊も人類の統制も、元は悪を祓い、正を貫くための淘汰と再調整に過ぎん。 ミクロとマクロの差よ。 全ては直線上にある」
さっきのカフカ……、自分から望んで仮面をかぶった様には見えなかった。
それにこいつの口ぶりからして、恐らくカフカは内側から乗っ取られている。
まさか……、代償か?
カフカは一条のために仮面の『夢物語』を使ったと言った。
その代償で仮面に人格乗っ取られちまってるってのか?
「……今すぐカフカに身体を返しやがれ」
「理解っておらんの。 この娘はカフカで、妾もカフカじゃ。 星に栞を挟み、人の道標となるカフカ。 星に巣食う悪を枝折り、人類の行く末を正しく指向する仮面のカフカ。 両方ともカフカで、二人でカフカよ」
「何が二人でカフカだ……、テメェとその子じゃ大違いなんだよ!」
カフカの願うインターネットの破壊だってとんでもねえことだ。
でも……、その計画は穴だらけで、彼女自身に力はほとんどない。虎に変身して選挙の結果を操作するくらいしか出来やしない。
故に、そこまでの脅威は感じられない。カフカはただ濃厚な思想を持つだけの少女に過ぎないからだ。
だが、こいつは危険だ。
宿主よりも強大な思想に、それを起こしかねない気迫がある。
何よりカフカ本体を乗っ取るほどに成長していることが、その危険性を示している。
もしこいつが……、カフカだけじゃねえ、他の人間まで乗っ取るまでに成長するようなことになれば。
人類統制どころか、気分転換に人類滅亡だって簡単に出来ちまうような輩に完成しちまう。
誰もこいつを止められなくなる……!
「考え直しちゃくれねえか」
「ほう、妾に再考を求めるとは。 この娘のお気に入りだからと見逃してやっているのが理解出来んか」
「全部承知の上で言ってんだ。 その子のテメェの違いは、上から目線の見下し口調なとこだぜ。 本当に悪いもんを正して地球を導こうって奴はそんな性格してねえよ。 テメェも一条と変わらねえ、周りの意見聞かずに頑固張ってるお山の大将に過ぎねえって言ってんだ!」
自分勝手な人類思いは、ただ思想の強い巨悪だ。
こんな狂ったやつの物差しで善悪が決められるなんて、たまったもんじゃねえ。
「まるで崇高な支配者様ぶってっけどな、お前はただのテロリスト予備軍だ! 『少数派』の奴らと同じだ! 目の前の現実しっかり見て、本当に正しいものっての考え直しやがれ!!」
「……言いおる」
触手の表面から複数の吸盤が現れて、呼吸するように収縮し始める。
「……神無月。 その真名の通り、天上に神の居ない、神に等しい力を持つ支配者すら居ない、穢れたままの滅び往く世界を望むか。 矢張り、危険じゃな。 ……この娘のお気に入りとはいえ、汚染を拡げる前に漂白しておかねば」
ぐでんと空中に吊られていたカフカの腕がこちらへ向けられる。
その意思を汲み取った触手たちが、一斉に吸盤を広げて蠢きだす。
「嫌な役回りじゃのう」
その内の一本が、鞭のように身を捩らせて接近してくる。
頭上で急停止して、そのまま叩き落とす動きで落下する。
「うぉおッ!?」
ギリギリのところを反射で避けた。
その隙間、ほんの数センチ。
背後にあった木の机が叩き潰されたのを見るに、直撃すれば肩くらい持っていかれそうな程のかなりの威力だったに違いない。
「待て、こんなとこで暴れたら――――、」
「『イルカの夢でさようなら』」
カフカがそう唱えた途端から、触手に割られた机の半分が変色を始める。
木製部分の色がブルーとホワイトに反転していく。
「『旧支配者』が絶する。
其の『位置』を拒絶する」
直後、色彩のおかしくなった長机が、意思を持ったみたいに吹っ飛んだ。
床に脚を何度もぶつけながら、鋭角をこちらへ向けて、急速で。
そんな状況でオレが出来たことと言えば、猪突猛進する机を避けようと左の本棚裏に隠れることくらいだった。
またもや間一髪のところで危機を回避し、真隣を急行する机の風圧を肌で感じる。
「おいふざけんな! そんなの直撃でもしたら、運良くたって骨折レベルだぞ……!」
「ほう、左様か。 では、悪運の方が強いとどうなるのかも知りとうなったわ」
背を預けていた本棚が、端から一斉に変色を始める。
ぎょっとして離れた時には、もうほとんどの本まが色を反転されてしまっていた。
「『旧支配者』が絶する。
其の『形状』を拒絶する」
反転色の本が、仕切りが、本棚が。
目の前で突然、破裂した。
比喩ではない。
湯沸かしした鍋の水面に上がってくる気泡のように、一瞬の膨張を見せて弾けて飛んだのだ。
木組みの数々が細切れになって飛来し、全身に向かって一斉に着弾する。
オレは理解も追いつかないまま、その衝撃で後ろの本棚まで吹き飛ばされてしまった。
「妾は寛容である。 もう一度、選択の権利をやろう。 このまま死にゆくまで嬲られるか、『MIB』で全て忘れて日常に戻るか」
「はっ……。 人間に取り憑くバケモンのくせに……、『MIB』とかは無駄に知ってんだな、笑えるぜ」
「当然であろう? 妾とカフカは感覚と肉体そのもの、そして記憶を共有しておる。 読了した書物も、視聴した映画も。 この星の評価基準点の一巻としてのう」
「随分と勤勉な『支配者』様だな。 ……オレがこの程度で折れると思ってんのか? テメェのくだらねえ野望なんかに、カフカを振り回すんじゃねえ!」
「言うておるではないか。 カフカは妾であり、妾はカフカなのだ。 妾の望みを叶えることは、カフカの望みを叶えることに相当する」
「それじゃあカフカの願いを叶えりゃあテメェの願いも叶うのかよ? 違えだろうが! お前は行き過ぎちまってる。 カフカと共存してるんじゃねえ、寄生してんだよ!」
「埒が明かんの」
伸びた触手が破片の山を払い、奥にある照明スタンドを掴んで持ってきた。
「『イルカの夢でさようなら』は上位存在たる『支配者』にのみ許された、拒絶の顕現。 妾の触れた対象を拒絶する、此岸の理を湾曲させる力よ。 この力を以てすれば、斯様な現象すら起こせるのだ」
スタンドの金属が、頭の笠が、LEDが、反転色に染め上がっていく。
「『旧支配者』が絶する。
其の『役目』を拒絶する」
LEDに一瞬のフラッシュ。
眩しさに瞑った目を開くと、そこは暗闇だった。
本来、光を放つはずの照明が『役目』を拒絶された結果、その逆……、光を吸うアイテムと化したのだ。
「なんだよ、それ……!」
「怯えてもよい。 竦んでもよい。 ただ目を閉じていればよい……」
暗闇の奥から、グロテスクな触手が何本も伸びる。
『位置』を拒絶された机は、
その場に居られずこちらへ飛んできた。
『形状』を拒絶された棚は、
その身を保てず爆ぜて散った。
『役目』を拒絶されたライトは、
その光を放つ役目を失い、
本来とは真逆の現象を引き起こした。
そんな異常を引き起こす触手が……、人体に触れるようなことがあればどうなるか。
その脅威は容易に想像できる。
「く……、そっ!」
暗闇に飲まれていない図書館の入口側へ走る。
が、辿り着くよりも早く、触手が左の足に巻き付いた。
「何処へ行くつもりだ、此方へ来い」
「ッ!」
触手はオレを掴んだまま、暗闇へと引きづり込む。
もう、やるしかない。
『破壊』するしか、逃げ残る道はない。
「くっ……、なんで……!」
壊れろ、壊れろと願っても、触手は壊れない。
元々よく分かっていない力だったし、何が原因かも不明なまま、ただ身を捩らせることしか出来なかった。
「壊れろ! 壊れろ壊れろ、壊っ、れろ!!」
「壊れる? 可笑しなことを言う。 壊れるのは汝の方よ」
足を掴む握力が一層強まる。
『破壊』が起きなければ、この蛸足から脱出する術は、もう……!
「――――『爆弾作り』、弩弓。
白を白に、黒を黒と断別せよ」
その赤い矢は背後から飛んできた。
オレの頭上を通り、触手の中盤に穴を開けて千切った。
一瞬で足が軽くなり、しがみつく蛸足を蹴って逃れることに成功した。
「『引力』を感じて来てみれば……、やっぱり君か」
鉄の仮面に、包帯の肌。
大きな血の弩弓を引き摺る、不機嫌そうな野崎――――、いやロビンソンがそこにいた。
「来てくれたのか! すまねえ、助かったぜ……」
「フン、あと数秒でも遅れていればどうなっていたことか分からなかったね。 感謝してくれよ、この私とそこの足役に」
「足役って、酷いなあー」
ロビンソンの後ろに、人型の影。
緑のネオンサイン装飾の光る仮面。
ランニングスニーカーのつま先を床に押し当てて、ダルそうにストレッチする御山弟。
『廃棄物』のキャンディ。
「……そうか、あいつの加速で」
「そうだよ。 私がこの広い学校を全力疾走したら、ここに着く前に息切れで吐き倒れていただろうね」
「よかったね〜、僕と会えて。 めっちゃベストタイミングだったじゃん」
「……仕方なく利用してやっただけさ。 べちゃくちゃと話すな、気に入らない」
『少数派』と『廃棄物』。
本来、相容れないはずの二人。
それでも……、こんなにも心強い仲間はいねえ。
「……煌、あいつは何だ?」
「『支配者』だ。 奴は顕現ってのを使ってるらしい」
「……顕現? それは権能とは違うのか」
「オレも分かんねえけど、別モンらしい」
「……まーさ、良くない? 何だって。 結局やるコト、ひとつでしょ?」
暗闇の奥から、声が聞こえる。
まるで、深淵そのものが喋っているみたいに。
「仮面……。 よもや、これだけの仮面持ちが学び舎に潜んでいるとはのう。 わざわざ追放した妾に会いにくるとは、当然……、死を覚悟しているのじゃろうなあ?」
暗がりから変色した椅子が飛んできたのを、反射で身構える。
距離的に、野崎も御山もサポートに間に合わない。
だから、祈るしかなかった。
今度こそ壊れてくれと。
すると、直撃と同時に破壊が起きた。
椅子は粉々に砕けて辺りへ散った。
手に残るのは、衝撃だけ。
受け止めた手のひらには痛みも、怪我も、出血もない。
「……そうか、さっきは直接触れてなかったから」
足は、ズボンと靴越しに掴まれていた。
だからどれだけ破壊を願っても、壊すことが出来なかったんだ。
「ボーッとしてたらヤバいかも、また何か来そー」
「あ、ああ……!」
この力の使い方が、ようやく理解できた。
直接触れたものを破壊できる。
服越しとか、間に何かが挟まると破壊できない。
破壊する時は、そう願う必要がある。
無意識に使うことはできない。
「行くよ、煌」
「……あの暗闇の中でオレの友達が人質になってる。 適当にお前らが暴れすぎると、そいつも傷つけちまう。 いいか、狙うのはヘルメットの仮面だけだ」
暗闇から再び、触手が伸びる。
「……権能、『爆弾作り』!」
「才能、『そして誰もいなくなった』」
「『支配者』が絶する。
『イルカの夢でさようなら』!」
「……カフカ。
お節介だろうと、徒労だろうと関係ねえ。
その寄生虫からお前を引っ張りだしてやる!」