*knsm
*ほのぼの。
*恋人同士。同棲。
*夏の話。
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このように酷く失望したのはいつ頃だろうか。
外は太陽がお空の1番上に昇って、カンカン照り。太陽から隠れられる影なんてひとつもない。
もう立派な真夏日。いつの間にかセミが鳴き始めて本格的な夏がやってきたのだ。
大きな入道雲が透き通った空色のキャンバス一面に白く立ち込めていたそんな夏の日の昼下がり。
今日は日曜日で特にこれといってしたいこともなかったので、スマイルと家でゆっくりとくつろいでいた。そこまでは良かった。なのに……。
kn「今日日曜日だから厳しいみたい」
sm「まじかよ…どうすんのこれ?」
せっかくの日曜日だと言うのに2人して気落ちした顔をする。まさに意気消沈。
それもそのはず。なんと、この真夏日と分類されるほどの気温が高く蒸し暑いこの時期になのにエアコンが壊れてしまったのだ。
まさに青天の霹靂で、予想だにしないことで非常に衝撃を受ける。
あの寝苦しい夏場の夜までは稼働していたのに。朝になってリモコンが効かないと思えば故障。どこがどう悪いのかもすら分からないから手付かず。そしてもう昼下がりに入っていく時間帯。
ダメ元で修理会社に連絡を入れてみたものの日曜日、更に夏の初めということもあり、どうやら俺らみたいな修理をして欲しい人、エアコン待機者が多い模様。
kn「明日もう一回連絡入れてみるけど、暫くはこいつを使うしかなさそうだね。」
今もくるくると首を回しながら風を大量に送り出している扇風機に視線を落とす。
どうも心許なく不安でしかない。重ねて、1台しかないもんで、1つの部屋でしか使えることが出来ないから不便でしかない。
sm「……そうか」
絶望感に浸っているのがすぐに分かるほどく大きなため息をつく。
そして、溶けて
丸くなった氷が浮いた麦茶を喉を鳴らしながら飲むスマイル。カランカランと
ガラス製のコップに氷がぶつかる鋭い音が鼓膜を揺らす。暑さを和らげようとしているのだ。
ほんのりと色付く頬の朱色に額や顳かみに滲む汗。小さなこの部屋は熱気が籠って身体の熱を徐々に上げていく。
つぅ、っと頬を伝っていく汗がやけに扇情的に映り釘付けになる。ごくりと喉を鳴らして生唾を飲み込む。
kn「…あのさ、アイス食べる?」
変な気を沈めようとアイスを食べないかと言って誤魔化す。確か冷凍庫の中にバニラの棒アイスがあったはず。
sm「…うん、食べる。」
普段甘味をあまり嗜まないスマイルだが、流石の暑さには耐えきれず、身体の熱を冷やせるなら手段を選ばないようだ。
その言葉を聞いて、キッチンへ向かい冷凍庫を開く。すると足元に冷気がかかって心地がいい。程よい冷たさで離れたくなくなるほどで。
冷凍庫を開いてすぐ、目の前に置いてあった箱入りのバニラ棒アイスを2つほど取り出す。丁度ラスト2個で箱はもう空っぽ。
その取ったアイスの棒の方を両手に持ってスマイルの元に向かう。
kn「はい、これしかないけど。」
sm「あざっす」
ソファを背もたれにしてもたれ掛かるように、床に座ってスマホでTwitterを巡回しているスマイルにアイスを手渡す。ソファに深く腰掛けて空気の入ったアイスの袋の封を切る。中に籠っていた空気が抜けて外気に溶け込む。
棒アイスの先っちょを舌の熱で溶かす。甘すぎないバニラのシンプルな甘みが舌一面に広がる。ある程度溶けて柔らかくなってから歯を立ててそれを齧る。熱が緩和されていく。
sm「ん!やっべ…」
困惑の声色を隠せていないスマイルの方に視線を向ければ左手に持ったアイスが溶けて手にかかっている。
右手にはスマホ、そしてちまちまと舌で舐めながら体積を削っているもんだから暑さで先にアイスが溶け始めてしまったのだ。
スマイルは溶けて垂れてきたアイスをどうしようかあたふたと慌てている。
sm「…え?ちょ…きんとき?」
何を思ったのかは分からないが、思考よりも先に手が動いていた。
スマイルの折れそうなぐらいか細い左手首を掴んで口元まで運んできたかと思えば、垂れて指をつたうアイスを舌で掬った。
急にこんなことするもんだから、スマイルは顔に酷く困惑の色を浮かべた。
kn「ごちそーさま」
酷く甘くてその甘さに酔いどれそうだった。舌なめずりをして、スマイルにほほ笑みかける。
口角を自分でも分かるぐらい酷く吊り上げた笑みを落とす。冷たいアイスを食べてたはずなのに、やけに熱を感じた。
頬を染めていた朱色が濃く紅へと瞬く間に紅潮して熱を帯びている。スマイルは口を尖らせて、恥ずかしそうに、俯きながら「ばかっ」と吐き出してまたアイスを黙々と食べ出す。先程よりも早いペースで。
蒸し暑くてうざったがったこの熱も今は悪くは無い。なんて感じてしまうほど、あいすくりーむは甘かった。