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「「何を言っているのだ?」」


テオとルイスが同時に言った。


「……えっ? ですから、私が全て守ると……」


「主人を守るのは、私の役目だが」と、テオ。


「リーゼロッテ、何故ひとりで背負おうとするのかな? これは、この辺境伯領の問題でもあるんだ」


ルイスは、ポンッと大きな手をリーゼロッテの頭に乗せ、そのまま優しく撫でる。


「いいかい、私は君の父親なんだよ。娘を守るのは私の役目。当然だろう?」


「……っ」


(そんなこと言われたら、泣いてしまうじゃない……でも、人前で泣くなんてイヤだ!)


グッと、こらえてニッコリと笑顔を作る。


「お父様、テオ、ありがとう存じます!」


「ほう、リーゼロッテはこういう場では泣かないのか?」


テオが意味深な言い方をして笑う。


「私、人前で泣くのは嫌いなの」


「では、今までの涙は何だったのかな?」


ルイスの言葉にハッとする。度々泣き落としで誤魔化した事を思い出す。


「そんな事ありましたっけ?」


コテッと首を傾げ、しらばっくれる。


「何だか、今のリーゼロッテは……これまで見てきたリーゼロッテとも、侍女のリリーとも違うね。これが、本来の君なのだね」


そう言うルイスもまた、今までとは違う柔らかな表情だった。


「リーゼロッテ、魔玻璃のある洞窟へ行ってみるかい? 辛い記憶があるのだから、無理にではないが」


少し躊躇しながらも、ルイスは訊く。

行けば、何か他にも思い出せるかもしれないと、リーゼロッテも考えていた。


(あっ!……そうだわ!)


「はい、行きたいです! その際、お父様とテオにお願いがあります」



◇◇◇◇◇



洞窟への入り口は――。


まさかの辺境伯邸の敷地内にあった。

この邸宅は、領地の中で一番王都に遠い場所……つまり、国の最果ての地に建てられている。

屋敷というより要塞の様な建物で、広さも相当なものだ。それもあり、邸にはあんな大きな地下牢を作ることが出来た。


リーゼロッテたちが日常使っている住居部分は、この敷地内で最も安全性が高い場所にある。

物々しい雰囲気にならないよう、貴族に相応しい豪奢なデザインにしてあり、美しい庭園も造られていた。

荒れた土地ではあるが、広大な敷地。代々の当主がどんどん増築していったに違いない。


そんな敷地内の、住居部分から少し離れた場所に、しっかりと根を張った太く立派な大木が立っていた。

ルイスがその大木に触れ魔力を流すと、地面が光り出す。


光がおさまると、地下へ繋がる入り口が現れた。


(こんな場所にあったのね。1周目でもここを通った筈なのに。やっぱり記憶には無いわ……)


リーゼロッテは緊張しつつ、ルイスについて中へと入って行く。

長いスロープは徐々に深くなり、空気も冷たくなってくる。薄暗かったが、所々に小さな魔道具が置かれていて、近付くと自然に淡い光を放つ。


(これって、鍾乳洞みたいね)


薄っすらと見える壁面は、ゴツゴツとしていた。


「もうすぐだ」


洞窟の中で、ルイスの声が響く。


リーゼロッテの目の前には、広い空間が現れ、その真ん中に大きな魔玻璃らしき物があった。六角柱状の魔玻璃は、透明感があり優しい光を放っていて、とても美しく目を引いた。


ゴクリと唾を呑み、リーゼロッテは近付いていく。


「リーゼロッテ、何が起こるか分からないから、それに触れてはいけないよ」


ルイスの言葉に頷き、もう一歩近付いた。

魔玻璃は、リーゼロッテの持つ魔力に反応したのか、ピカッと光が強くなる。


「ほう。やはり、その御方はリーゼロッテがわかるようだな」


テオの言葉は、まるで魔玻璃は生きているのだと言っているみたいだ。


(……ここ、覚えている)


リーゼロッテは、ルイスとテオを振り返った。


「お父様、テオ。私、この場所を覚えいるわ。例の事を、試してもらってもいいかしら?」


頷くふたりの前で、魔玻璃を背にしてリーゼロッテは横たわる。


リーゼロッテの傍にルイスが跪き、そのルイスの背後にテオが立つ。そして剣を振り上げた。


――過去の再現。


テオが手にした剣は、魔玻璃の光を見事に反射させて光ったのだ。あの時の情景が、一気に頭の中に浮かび上がる。


(やっぱり、ここだった!)


仮説が証明された。

リーゼロッテは上半身を起こすと、フウッと息を吐いた。自分の手を見て、震えていることに気がつく。


「「リーゼロッテ!!」」


心配そうに呼ぶふたりに、強張った顔で微笑んだ。


「……大丈夫です。今、ハッキリと分かりました。私は、ここで殺されたのです」


震えが止まらず、ぐらりと視界が歪む。


「無理をするなっ!」


そう言ったルイスに抱き上げられ、すぐに洞窟を後にした。


「お父様……ありがとう」


リーゼロッテは小さな声で呟く。

抱えられた腕の中は、ルイスの温もりと鼓動が聞こえ、とても安心できた。


あの剣が光った瞬間、ルイスの背後には二人の人間がいたことをリーゼロッテは思い出したのだ。


(……あれは、誰だったのだろう?)


今はまだその人物が思い出せないが。

いつか、当人に会った時には思い出せる――そんな予感がした。



転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜

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