更新遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした!
この小説見切り発車なんで…色々考える内にどんどん肉付けされてっちゃうんですよね……
その結果収集つかなくなって更新遅れる訳なんですけども
今回実弟(tn)編が思いのほか長引いて書きづらくなってしまったので2話に分ける事にしました。幼少期の描写とか入る分三兄弟よりどうしても長くなっちゃうんですよね…
あと、今更ですがこの小説におけるヤバシティの設定です。
【まじめにヤバシティ】
私達の住まう人間社会とは断絶されたあの世とこの世の狭間に存在する、神や妖、精霊などがとても身近に存在する街。
元々は約300年程前に、有り余る『素質』故に気味悪がられ都や町を追われてしまった僧や奇術師など、人ならざる者達との交流に長けた人物達が身を寄せ合い造り上げた小さな集落である。
『素質』のある人間ばかりが集まった為、普通の人間には視認される事さえない異種族達も寄ってくるようになり、どんどんと人口は増えて行き、いつしか膨大な『チカラ』により人間社会と断絶された。
多種族の集まる町では200年以上の間、上手く統率が取れず、一時期は荒れに荒れていたが、数十年前とある人間が町をまとめあげ急激な発展を成功させた。
実は現市長のねこひよこさんは二代目市長
現在の人間、異種族比率は2:8くらい。
この街に居る人間は個人差はあれどみな異種族を視認できる程度の『素質』を持っている。
遺伝的な者もいれば、突然変異で『素質』を持って生まれ、人間界から街へと迷い込んで来る者もいる。
基本的にどの種族だろうと優劣は存在せず、実力主義な街だが個人的な恨み等から暴力沙汰が起こるなど、まだまだ問題も山積みな発展途中の街である。
てな感じです。
では、どうぞ行ってらっしゃい
最初はこんな小汚い感情じゃなかった。
最初はただ純粋に、兄を尊敬する気持ちだった筈なんだ。
俺には7つ離れた兄が居る。
名前はエーミール
真面目で温厚。どんな事にも真っ直ぐで意外と頑固。面倒見が良くて、いつもニコニコと笑っている。
勉学は超優秀で、運動も技術はともかく体力はあったし、兄はとにかく働き者だった。
1日も欠かすこと無く学校に通い、その上多忙でほとんど家に居ない両親に代わり、俺の世話や家事をしてくれていた。
そんな優しい人だ。
二十数年前、俺が中学に上がった直後、両親は共に過労で他界。
俺の家族は兄だけになった。
兄は当時20歳で大学に通いながらバイトやら家事やらをしていた。
俺も家事は手伝っていたが、学校に持って行く弁当なんかは全て兄が作ってくれていた。
俺にはほとんど両親の記憶は無かったし、顔を思い出すのもやっとなくらいで、正直涙が出るどころか実感も湧かず、他人の葬儀に出席している様な感覚だった。
でも兄は俺に比べ両親との記憶や思い出がある分、泣きこそしなかったが辛そうな顔をしていた。
両親が亡くなっても生活は大きく変わらず、有難いことに、両親は俺達兄弟の為に貯金はしっかりとしていてくれたらしい。
因みに、これは後で知ったが
両親の勤めていた会社のトップは過去に人間に虐げられていた異種族で、その当て付けで両親に無理な労働を強いていたそうだ。
異種族だからどうとかは無いし、特段怒りも湧かなかったが、過労死するまで働かせるのは如何なものかと思ったのを憶えている。
その二年後、兄は就職も決まり大学を無事に卒業。
兄は中学校の教師になった。
それからだ
兄があんな風になったのは。
兄が教師になってからしばらく経った頃突然、兄の帰りが極端に遅くなった。
その頃俺は家事も料理もそれなりに出来るようになってたし、兄の帰りが遅かろうと困る事は無かったが、大好きな兄と会えないと言うのはシンプルに寂しかった。
教師と言う仕事がかなりキツい物だとは知っていたが、両親の事もあり、ただ体を壊してないか心配だった。
そんな生活が2年ほど続いたある日
その日は何故か寝付けずに、夜通しリビングで映画を観ていた。
午前五時を過ぎた頃
…ガチャ
「!…兄さん?」
玄関のドアが開く音が聞こえ、兄が帰って来たのだと思い、早足で玄関に向かった。
「兄さん!おかえ、り…」
「兄さん!?」
そこには、蹲って小さく震える、記憶よりもずっと痩せた兄が居た。
俺は驚いて、すぐさま兄の傍に駆け寄って緩く肩を揺すった。
「兄さん、兄さん!どうしたん、なんかあったんか!?」
「……とんとん…?」
「!せや、俺やで兄さん」
か細い声で、久しぶりに名前を呼ばれたと思えば、兄が突然俺の事を抱きしめた。
抱きしめたと言っても、とても弱い力で、まるで縋り付いている様だった。
「!?」
「…ごめん、トントン……ごめんなぁ」
「なに、言って」
兄に抱きしめられ、ふと、気が付いた。
いつもキッチリと着こなされている服が、珍しく乱れている。
それに、
イヤな臭いがする。
兄が愛用している香水の香りは薄れ、それ以外に何故か男物の香水と、煙い煙草の臭いが染み付いていた。
そして
すこし酸っぱい、血の臭い
すぐ兄をリビングのソファまで連れて行って寝かせ、俺の高校と兄の勤める中学校に休みの連絡を入れて、兄が起きるのを待った。
兄が起きてから、「何があったのか話せ」と問い詰め、珍しく渋ってなかなか折れてくれない兄から漸く事の詳細を聞き出した。
他人にあれ程明確な殺意を持った事は無い。
兄は働いていた中学校の校長に目をつけられ、性的奉仕を強いられていたのだ。
それに加え、日常的に暴力も受けていたという。
兄も両親と同じ様に、人間をあまり良く思っていない種族を上司に持ってしまったらしい。
それから俺は兄に、仕事を辞めるか、転職するようにと必死に説得した。
被害届も提出し、色々面倒事はあったが無事多額の慰謝料と謝罪をぶんどり、校長は懲戒免職になった。
それでも怒りは治まらず、何度も殺してやろうかと考えたが、それよりも兄を優先する事にした。
その一件以降、兄は精神を病んでしまい、しばらくの間食事や睡眠が上手くとれず、眠れたと思えば悪夢に魘され、心も身体もボロボロになってしまっているせいで、ベッドから起き上がれない日が続いた。
艶やかで綺麗だった焦げ茶の髪には、所々真っ白な髪が混ざるようになった。
日に日に痩せ細り目元のくまが濃くなって行く兄を見るのはとてつもなく辛かった。
兄には、自分より勉強や学校の事に集中しなさいと言われてもそんな気は微塵も起きず、ただ兄を支える事に必死だった。
あまりにも心配だったからほぼ付きっきりで、半ば介護のようだったと今更思う。
兄はその事に罪悪感を抱えていたらしく、睡眠が浅くなり、俺の目元に薄らと付いたくまを撫でながら、消えてしまいそうなか細い声で「ごめんね」と何度も何度も謝っていた。
俺は、兄さんに謝って欲しかった訳じゃ無かったのに
あんな顔、して欲しく無かったのに
それでも、半年程すれば、兄はなんとか自分で身の回りの世話を出来るまで回復したが、それでもまだまだ他人…特に異種族との交流は上手く出来ないままだった。
しかし兄は何かに急かされているかのようにリハビリをするようになった。
兄さんが苦しいなら、無理をする必要は無いと何度も伝えたが、存外頑固な兄は「この街では異種族との交流は避けられないから」と、頑なに意見を変える事はなかった。
けれど、存外早く転機は訪れた。
ある日、何故か家にヤバシティ市長のねこひよこさんが尋ねてきたのだ。
それはもう驚いた。ねこひよこさんが焦ってオロオロし出すまでフリーズするくらいには驚いた。
だって普通、かなりの発展をとげた都市の長がお付も無しに一市民の家に来るだなんて思わないだろう。俺は違うが、この街にはねこひよこさんの熱烈なファンも少なくない。
ご丁寧に小さな体で手土産まで持参してくれていた。
とりあえず家に上がってもらい、体調が優れず寝込んでいる兄の代わりに話を聞くと、態々市長自ら足を運んだのは兄への、エーミールへの謝罪の為だった。
何でも兄の勤め先での不祥事は、人間好きの市長の逆鱗に触れる事を恐れた役員の工作により市長の耳に届いて居なかったらしい。
それに加え多忙を極めていた市長はニュースや新聞での報道を目にする暇もなく、事件自体を知ったのはつい最近だったと言う。
器用にメモアプリを使い説明してくれた市長は、いかにもしょんぼりとした顔で深々と頭を下げてくれた。
それにまた驚いてしまいすぐ顔を上げるようにと言えば、市長はまたメモアプリに何かを入力し始めた。
内容としては
もしエーミールが仕事を探しているのなら、自分の秘書もしくは側近として働いてもらいたい
と言うものだった。
またまた驚いてフリーズする俺に、市長は何を思ったか次々と詳しい業務内容や残業時間の詳細、給与面について等、アピールポイントを熱弁(?)し続けていた。
とりあえずその日は後々連絡するという事で連絡先を交換し、そのまま引き取ってもらった。
因みに余談だが、その数日後金を下ろす為に口座を見たら金額が一桁上がっていた。
シンプルに怖かった。
市長が帰りしばらくした頃、兄が目を覚ましたので、今日あった出来事とスカウトの話をすると、兄も驚いてフリーズしていた。
そりゃあそうだよな…
兄は状況を理解すると、二つ返事でその提案を受け入れた。
俺はまだまだ快復出来ていない兄が心配で、もう少し落ち着いてからでもいいんじゃないかとも言ったが、「これ以上迷惑をかける訳には行かない」と決意を固める兄に、何も言えなくなってしまった。
兄の世話をするのを苦だと思った事も、嫌だと思った事もない。
むしろ今まで殆ど何も出来なかった分、少し不謹慎だが兄に恩返しが出来ているようで喜びさえ憶えていたし、何より兄の傍に居れることが嬉しかったのだ。
今思えば、この頃からなのかもしれない。
歯車が狂い始めたのは
emとtnの両親(享年45)【会社員】
2人揃って生真面目な性格。
大学時代に付き合い始めそのまま結婚。子宝に恵まれるも会社ガチャに失敗してしまった。
子供達の事は心の底から愛していたし、子供達との時間を増やす為に頑張って仕事をしていたらさらに仕事が増えてしまい最終的には夫婦揃って過労死にまで至ってしまった不憫な方々。何度も会社を辞めようとしたが上からの圧力で辞めることができなかった。
悲しい事に両親の不幸体質は息子2人にもしっかり受け継がれている。
因みに父親はエーミールに、母親はトントンにそっくり。
はい、いかがでしたでしょうか?
続きも書き上がり次第すぐ投稿するのでもうしばらく(いつになるかは不明)お待ちください。
それでは、また次の作品で……
コメント
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シンプルに泣いた (´;ω;`)ブワッ