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東尾の部屋に入ったその日の夜。
折西が寝る前にお姉さんが
「紅釈くんのお友達…だよね」
と言っていた。
折西も同じことを思っていたらしく
東尾のトラウマの話になった。
なんとなくどんな事があったのかは
想像がつく。
東尾、本名ヒデキが
紅釈、本名ヒグレの家を燃やした…
「けれど東尾くんがヒデキくんなら
目元に火傷跡があるよね?」
お姉さんは不思議そうにしている。
「…メイクとかで隠してる可能性も
あると思います。」
「でもメイクで濃い色を消すのって
大変なんだよ?」
「そ、そうなんですか!?」
「そうだよ〜!メイクする子たちが
スキンケアを頑張ってるのも隠せない濃い色
だとか大きいニキビ作らないためなんだよ!」
お姉さんはえっへん!とドヤ顔をしている。
「メイク以外ですか…
そういえば東尾さんの左のフレームになんか
神社とかにある紙みたいなのついてません?」
「紙垂(しで)っていうのだっけ?
悪いもの寄せつけないよ〜ってもの
だったはず!」
「…もしかしたら東尾さんはその紙垂に
小細工をして火傷跡を見えないように
しているのかもしれません!」
「なるほど!融くん天才だ!!!」
お姉さんは目一杯折西の頭を優しく撫で回す。
折西はやめてください!とは言うものの
内心とても嬉しかった。
東尾がヒグレの友人のヒデキである事は
おおよそ確信が持てた。
しかし東尾には紅釈のようにわかりやすい
トラウマがない。
なんなら普段の東尾からは表情が読みづらいため
予想もしにくかった。
「放火事件を思い浮かべればトラウマの
どこかに引っかかりませんかね…?」
「ダメだと思う。
もう少しトラウマを絞らなきゃ…」
お姉さんは悩みながらも1つずつトラウマの
原因を探し始めた。
「火が怖いって訳でもなさそうだよね…」
確かに中華店に行ける時点で東尾のトラウマは
火ではなさそうだ。
「となると紅釈さんですかね…?
けど東尾さんの攻撃の対象は…
東尾さん自身…?あっ!」
「それだよ融くん!!!!!!!!」
「自ら契約停止して自分を責めるのは
過去の自分にトラウマがあるからかも
しれません…!」
「それなら明日はヒデキくんを思い浮かべて
東尾くんの中に入ろう!」
2人は意気投合し、その日のうちに
組長に詳細を話した上で東尾の合鍵を
借りたのだった…
・・・
翌日、折西とお姉さんは準備をし、
夜中の3時に東尾の部屋をそっと開けた。
東尾がぐっすりと眠っているのを確認し、
メガネをそっと外す。
「融くんの推理合ってたね…」
メガネを外すと東尾の左目の
周囲にはヒグレと同様の火傷跡があった。
そして折西たちが紙垂になにか無いかと
めくったその瞬間、エモがいきなり現れた。
折西はオアッ、と言いそうになった
自分の口を必死に抑えた。
「…なんだ折西か。何用か?」
「え、えっとぉ〜そのぉ〜…なんというか…
カウンセリング…?」
「ぬん?カウンセリング…?もしかして、
心鍵師じゃなかろうな?」
「アッアッ…」
折西は名推理したエモに吃り始めた。
「おお、やっぱりそうか!書物で見た通りだ!」
書物が書物を読むこの世のバグみたいな
事柄などどうでも良くなるほど折西は
自身が心鍵師であることがバレてしまい
焦っていた。
焦っていた折西は後ずさりした際に左足を
壁にドン!とぶつけた。
途端に東尾はバッと目を覚ます。
「ヒッ!!!」
折西が今は逃げようとお姉さんに目配せした。
すると突然、エモが元気そうな声で
「よし、任せろッ!」
と言い、東尾の頭めがけて体当たりした。
東尾は呆気なく気絶している。
「えっ…ええっ…!?」
折西も隣にいたお姉さんも驚いていた。
ファージが契約結んだ相手を殴るとは初耳だ。
「まあ、自傷行為しとるし慣れておるだろ。」
自傷行為ではなく他傷行為では?
と思いつつもエモが、さあ、入れ入れと
折西をとんとんと背中を叩くものだから
促されるまま折西は東尾の手を握る。
そして、ヒデキの姿を思い浮かべながら
ゆっくりと視界がフェードアウトした。