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prmz
地雷 さん ばっく 。
えせ 関西弁 ちゅーい 。
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招かれた部屋は 、 深夜の静寂をそのまま箱に詰めたような場所だった 。
玄関のドアが閉まった瞬間 、 背後で落ちた錠の音が 、俺を世界から切り離す冷たい終止符のように響いた 。
蛍光灯の青白い光が 、 必要最低限の物しかない部屋を白々と照らし出している 。 その無機質な光景は 、 外の雨空よりもずっと清潔な孤独を孕んでいて 、 俺は自分の泥だらけの靴音が 、 誰かの聖域を汚していくような薄汚れた背徳感を覚えた 。
「適当に座ってろ 。 … 今、なんか作るから 。」
彼はそう言うと、俺の返事も待たずに背を向けた 。
パーカーを脱ぎ捨てた背中は 、 思っていたよりもずっと小さくて 、 けれどどこか遠い銀河の端を見ているような寂しさが漂っている。
俺は 、 その背中から放たれる未知の熱に 、 磁石のように吸い寄せられた 。
自分から 、 ほんの数歩 。
おにーさんが振り返れば肩がぶつかるような 、 危うい距離まで足を進める 。 彼は自分から近づいてはこない 。 だからこそ 、 俺が自分から踏み込むその一歩一歩が 、 薄い氷を素足で踏み抜くような 、 鋭い快感と恐怖を伴って胸に刺さった 。
カチャ 、 と食器が触れ合う音が 、 耳の奥に細い銀針を刺すように響く 。
おにーさんは戸棚からパスタの袋を取り出し 、 無造作に鍋に火をかけた 。
「… なぁ 、」
「ん ?」
「…… 毒 、 … 入れてへん 、 ?」
震える声で吐き出した俺の言葉は 、 この静かな部屋にはあまりに不釣り合いで 、 ひび割れた安物のグラスのように無様に響いた 。
おにーさんは一瞬だけ手を止めて 、 ふっ 、 と影を纏ったような笑い声を漏らす 。
「入れるわけねーだろ 。 … 死にたそうな顔してる奴に 、トドメ刺すほど趣味悪くねぇわ 。」
沸騰し始めた鍋から 、 淡い乳白色の湯気が立ち上る 。
それは 、 冷え切った俺の視界を優しく 、 けれど残酷に塞いでいった 。
俺は 、 湯気の向こう側にある彼の横顔を 、 自分から手を伸ばして確かめたい衝動を 、 指先を強く握りしめることで必死に抑え込んだ 。
まだ 、 このおにーさんの名前も 、 その瞳がどんな色をしているのかさえ知らない 。
ただ 、 この沈黙を煮詰めたような空間で 、 俺は自分から進んで 、 彼という名の透明な檻に閉じ込められることを選んでいた 。