──────『 』視点──────
「ぽれを食べて。」
「ッッ!!やだッッ!!!」
その一言に人生の全てを載せる。親友であるそいつは首を振って全力で拒否する。その親友の種族は茶色の熊でぽれとは違い、茶色の毛並みが美しく輝いている。しかし、その色はこの大雪では異質な存在であった。
現在、冬。本来ならば冬眠するはずだったが、寝床にしていたところはハンターが襲ってきて失った。人間の中でも能力を持っている奴がいるらしく、そいつらは人間よりも強いぽれら獣人を殺し、毛皮にして、服にしてしまう。何故なのだろうか。ぽれらと人間の違いは耳としっぽくらいなのに。でも、知っている。にんげんは人外を極端に嫌っていることを。わかっている。ぽれらの中には人間を襲って食べるやつだっているし、人間に迷惑をかけた奴もいる。けど、それだって少数だ。ぽれは人間なんて食べない。なんなら木の実の方が美味しいと思っている。しかし、そんなことを言って、訴えてもそれが叶うことは無い。人間は無差別に人外を攻撃し始めた。能力とという対抗手段を持って。───あぁ、神様。ぽれと親友は何をやったって言うんですか。木の実を食べすぎてしまったせい?それとも人間とは戦わずに逃げ続けたせい?
───人間と仲良くすることは出来ないんですか?
冬。ぽれらは住処を離れて、安全なところで冬眠しなければいけなかった。けれど、白熊であるぽれと、普通の熊である親友。寒さに対する強さは全然違って。親友は段々と口数が少なくなり、そして、歩けなくなってしまう。しかし、ぽれは知っている。親友は肉を好むことを。そして、親友は人間をよく思っていないこと。ぽれの見た目は人間にそっくりだ。耳さえなければ気づかないほどに。だから、ぽれは提案する。
「ぽれを食べて。」
しかし、親友はこんな寒い中、熱い涙を流しながら必死に拒否する。
「いッッや、だッッ!!」
段々と寒さで呂律が回っていないのだろう。親友はブルブルと震えてる唇で必死に大声を出し、ぽれの提案を拒否する。でも、ぽれは知っていた。親友はぽれのお願いに弱いことを。
「お願い。ぽれを食べて。そしたら、君は生き残れるから。」
そう言って、ぽれの手を親友の口元へと運ぶ。ヨダレを垂らし、甘い息を出しながらも、理性で食べるのを押えているのがうかがえた。お互いに、お腹がすいているのだ。1週間は何も食べていない。このままじゃ2人揃って野垂れ死ぬ。それならば、いっそ、親友に生き残って欲しかった。
「やァッッだぁ…!!」
そう言って泣きながら親友に哀願される。しかし、ぽれはこんなことで引くような覚悟ではなかった。
ぽれ自慢の爪を、ぽれの心臓に突きつける。そして──────貫通させる。
「ッッ!!!??はッッ!?」
親友が驚いたような表情でぽれをみる。最終手段。もう、死ぬ。死んだのならばこれ以上説得せずとも食べるだろう。ぽれの思いを無駄にするやつでは無いことを知っていた。
「──────!!!」
親友の声が遠くで聞こえる。姿もぼやけてて分からない。
ぽれは段々と眠くなってくる。不思議と刺したところは痛くない。おそらく、痛みが来る前にぽれは絶命するのだろう。
──────そう思った瞬間、涙が溢れてくる。
まだ、親友と居たかったんだ、ということを再認識させられる。木の実を2人で分け合って、時には人間の振りをして村を訪れて。イタズラをしあって。ある時はお肉を求めて狩りに行ったり。
あぁ、こんなにも、こんなにもたくさんの思い出を。ぽれは。ぽれは捨てなければならないんだ。これからくる楽しい未来も。全部、全部。失ってしまうんだ。
あぁ、悔しい。悔しい。
けれど、最後に。本当に最後に力を振り絞って、声と目にだけ力を加える。
「君、名前、ないんでしょう?」
親友は名前を持っていなかった。生まれた時には親がいなくて。ぽれと一緒だった。だから、仲良くなったのだ。
「じゃあ、ぽれの名前、あげる。姿も、あげる。」
人間みたいにぽれの毛皮をかぶれば親友はぽれになれる。ずっと、親友はぽれみたいな毛並みが良かったと言っていた。本望だろう。
「今日から、君は、───ぜん。ぜんこぱすだ。」
最後にぜんこぱすになった親友の顔を見る。涙と鼻水とでぐちゃぐちゃになった顔は酷かったが、美しくもあった。ぽれはたった一人の親友に全てを託して、魂ごと、飲み込まれる。
──────『召し上がれ』
────『ぜんこぱす』視点───
はっと夢から覚める。心臓がバクバクと言って身体中が締め付けられるかのようにきつい。久しぶりにこの夢を見た。ぽれは自分の姿を鏡で確認する。白い毛並みのようにふわふわの髪。シロクマの耳。そして美しい氷のような薄い青色の瞳。そう、これが『ぜんこぱす』の姿だ。
「『ぽれ』は『ぜんこぱす』だ。」
しかし、『僕』の名前は『ない』。
ここで切ります!投稿間に合わなかったので番外編を出しました!
ぜんさんの名前と姿について掘り下げました!
名前としろくまの姿はかつての親友です。ぜんさんの能力による丸呑みで親友を食べました。その後に親友を食べたと言う事実が暴食の悪魔であるベルゼブブが気に入り、契約しました。そのため、丸呑みした親友の姿になることが出来ます。その姿になっていこう、本当の茶色のクマの自分には戻っていません。そして、自分の名前もないんです!ぽれという一人称は親友のだし、名前も親友の、姿も親友、と。ものすごく未練タラタラです!人間が嫌いな理由は実質的に人間のせいで親友を失っているからです。
もう少しここについては掘り下げる予定です。ご期待ください
それでは!おつはる!
コメント
4件
感動すぎる…(?)
わ…番外編でこんなに泣けるなんて…すいません、じゃあ《丸呑み》って本当のぜんさんの親友のスキルってことですか?(語彙力皆無)