テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#このキャラでログインしたい
298
『それでは、本日も会議を始めさせていただきますね。どうぞよろしくお願いいたします』
早乙女さんの声と共に、これまた始まったイベントに関してのリモート会議。
とはいえ私達の意見を聞いたりとか、参加不参加の確認などなど。
あとは具体的な内容の説明を改めて~って言うのが主になって来るんだけど。
本日色々あった影響で、頭がパンク状態だったのだが。
お兄ちゃんに相談を……とか思っていたら、コレですよ。
一つの事に集中して悩んでいる暇もないという。
まぁ悩み続けていても答えなんか出ないから、むしろ良かったのかもしれないけど。
そんな訳で、今回のイベント資料をペラペラと捲っていく。
何度見ても思うけど、賞金首のオフショットって……いったい、何をすれば良いんだろう。
お兄ちゃんも「6keyで普通に遊べば良い」みたいな事を言っていたけど。
ガンサバで遊ぶ、イコール戦闘だと思っていたのだが……あぁでも、前に早乙女さんも言っていた通り、クラフト系とかも凝ってるゲームらしいし。
もしかして、555の車両改造とかもそっちに含まれるのかな?
でも私、工作とか苦手なんだけど。
前にショットガン作ろうとして……いや、思い出すのは止めよう。
アレは無かった事にしたんだ。
という事で、どう考えても私に向いていないイベントなので、やっぱりどうすればって気分にはなるのだが。
『資料を見て頂ければ分かる通り、今回は戦闘系ではありません。皆様の中には、完全に“お仕事”と割り切って戦闘以外にはゲームに触れていない方も多いと思います。なので、このイベント中に他の項目にも触れてみて頂ければと。それこそ、今後の戦闘に役立つ何かが見つかるかもしれませんしね?』
と、いう事らしい。
そっか、考えてみればその通りだ。
元から車とかバイクに乗れる人なら問題は無いのかもしれないけど、そうじゃない私みたいなのはこの機会にちょっと触れてみるっていうのも面白いのかも。
そうすれば、今後のイベントの時は乗り物とかで逃げられるかもしれないし。
お兄ちゃんが言っていた”バイクに乗れる様になるかも”って言うのは、あながち冗談ではなかったのか。
『周りのプレイヤーから“見られる”、“撮影される”イベントになりますので、無理にとは言いませんが。出来ればこの機会に普段の一面、意外な一面などを見せてより多くのファンを獲得して頂ければと思います』
とはいえ運営の狙いとして、一番はやっぱりソコ。
賞金首その者が人気を集め始めている為、ガンサバのアイドル的存在に~って言っていたし。
ちょっと私には無縁な言葉過ぎて、未だに現実感ゼロだけども。
確かに、イベントの時しか現れないのが賞金首だもんね。
あとは規制ギリギリの行動をするプレイヤーの元にも行くけど。
露見する場所が少ないからこそ、他の人が見る所は基本的に戦闘シーンのみ。
本来の設定としては正しいんだけど、露出する場面が少なすぎるのも問題だもんね。
だからこそのオフショットイベント……というのは、分かるんだけど。
ホントにどうしよ……って思うのと同時に。
こうも大々的に運営側が“普通の露出場所”を用意する程だし、前回のoctopus8の行動って、結構不味かったのでは?
そんな事を思いつつ、チラッと相手のアイコンを覗いてみるが。
本日もやはりサウンドオンリーの表示のまま、しかもマイクオフの表示まで付いていた。
つまり、この場に居るけど反応は伺えないって事だ。
『決められた時間の間、我々は“破壊不能オブジェクト”に設定される……とありますけど、プレイヤー側から攻撃された場合は? 逃げれば良いという事でしょうか?』
早乙女さんがある程度説明を終えた所で、知らない声が聞えて来た。
多分私がまだ話した事のない賞金首の誰か。
今のところ関わったのが……45789、それで私が6だから……あとは123と10番目の四人。
え、今更だけどもう10人中5人と関わっているのか。
凄い、ガンサバ凄い。
最初はプロがいっぱい居て怖いって思ってたのに、今は関わった人達ならゲーム内で普通に喋れる気がする。
この前チラッと会っただけのoctopus8だけは、どうなるかまだ分からないけど……。
『そうですね。逃亡でも構いませんし、運営側に連絡して頂いても構いませんよ? イベントの妨害行為として、此方で対処致します』
『あ~でもやらかすプレイヤーは居そうっすねー。イベント中、俺はガレージで車とか弄るつもりですけど……賞金首は攻撃不可だからって、車の方を壊して来たり』
え、そんな事する人居るんですか?
555の声に、思わずギョッとしてしまったが。
どうやら珍しい事では無いらしく、他の人からも「ありそう」みたいな声がチラホラ聞こえて来るではないか。
今のところ私は、あんまりそういう意地悪な人って遭遇した事無いから……想像出来ないけど。
もしもあったら怖いなぁ……。
『皆様がイベント参加中は、基本的にサポーターも見ている状態となります。ただしオフショットである以上、此方からは干渉しない形。なので、あまりにも酷い、もしくはしつこい場合はクレームとして私の方に連絡していただければと。それ以外に関しては、サポーターから随時報告される形になりますので。基本的に無視して頂ければ、その間に此方で対処する形になりますね』
だそうです。
つまりお兄ちゃんもずっと此方を見てくれているので、あまり難しい事を気にしなくて良いって事なのかな。
だとしたら、そっちは非常に助かる。
実際嫌がらせとかされたら、どうしたら良いのか分からなくなりそうだし。
『はいはーい、早乙女さーん。今回に関しては、他の賞金首と関わっても問題無いんでしょー? 一人で街をブラブラするだけじゃつまんなーい』
『えぇ、それも問題ありません。ただし、周りからは常に見られている事を意識して下さいね? 問題にならない程度で、特定の誰かと過ごすのは大丈夫ですよ』
いつも通り声を上げるsevenに、早乙女さんも笑って声を返していた。
誰かと一緒に過ごすのもあり……となると、やはりこの機会にoctopus8との顔合わせを済ませてしまおうか。
他の人にも見られてしまうから、本当にちょっと挨拶して終わり、程度になってしまうかもしれないけど。
あとは皆の所を回ってからログアウトするだけでも、結構時間を使いそうだし。
でも資料を見る限り、しばらくの期間が設定されていて、その間自由に動いて良いって書いてあるしなぁ。
これはちゃんと予定を立てないと、ログインしてもボケッとしているだけになってしまいそうだ。
『それからもう一つ、皆様には注意事項を改めて言っておきますが……皆様が“破壊不可能”に設定されている、言わば“無敵状態”。これはイベントとして設定された、期間内と時間内のみという事を忘れないで下さい。その時間丁度に、効果が切れる様に設定しておりますので……言っている事は、わかりますよね?』
無敵時間の間に、ちゃんとログアウトしなさいって事で良いのかな。
了解ですっとばかりに、ブンブン首を縦に振ってみたが。
そういえば私も、カメラ設置してないので何も映ってないんだった。
喋らないと伝わらない環境なのに、こういう会議は必要な場面以外は返事しなくても良いって言われたし……やっぱり、マイクの電源を入れるタイミングすら分からない。
難しいなぁ……お仕事の会議って。
私もwebカメラ買おうかな、お給料も貰っている訳だし。
◆
「どうだ、夢月。イベントの予定とか決まったか?」
「う、う~ん……まぁ少しは? 程度」
会議も無事に終わり、帰って来たお兄ちゃんと話していれば。
やはり話題は今度のオフショットイベントに向かう訳でして。
「フォーとファイブからは、暇だったら遊びに来いって言ってもらえた。二人はガレージで乗り物を弄るんだってさ。バイク乗りたいって言ったら、使い方教えてくれるって言ってた」
「おぉ、良いな。ゲーム内ならいくらでも練習し放題だ、怪我する心配も無いしな」
「ナインは適当にブラブラするから、暇だったら話でもしようって。あとは……セブンからデートしよーって」
「ブッ! あの子は本当に……とはいえ、変な噂が立たない程度にな? 色恋沙汰ってのは、やっぱ話題になりやすいから。そっち関係が絡んだ瞬間に、人が変わった様に怒り出す人も居るぞ? 本当に気を付けろ?」
やっぱりそうなのか……だとすると、黒沢君の件は本当に内密にした方が良さそうだ。
というのと、男の子と一緒にゲームするって言っただけでもかなり怒って……はいなかったかもしれないけど、慌てていたお兄ちゃんの事だ。
そういう話は、伏せておいた方が良いのかもしれない。
相談するにしても、もっと落ち着いている時とか、せめて休日にした方が良さそうだ。
とまぁ色々あるが、意外とイベント中やる事が無いって事態は回避出来そうなのはありがい。
会議が終わったと同時にセブンが会議通話を新たに設定して、以前チームを組んだメンバーを集めてくれたので助かった。
そんでもって、皆からお誘いを貰えたのは凄く嬉しい。
凄い、順調にぼっちじゃ無くなって来た。
それから……後はやっぱり。
「エイト……octopus8にも、お兄ちゃんの方から連絡を取って貰っても、良い? この機会に、ちょっとお話しましょうって……向こうから声を掛けてもらったのに、随分と待たせちゃったけど」
「あいよ、向こうの担当に連絡しておく。うんうん、夢月も徐々に社交的になって来て、お兄ちゃんは嬉しいよ……」
「お、大袈裟だよ……基本的に、相手からアプローチしてもらってばっかりだし」
しかしながらガンサバを始めてから、多くの人と繋がりが出来たのは事実。
これまでだったら、絶対考えられなかったもんね。
最後のoctopus8に関しては、本当にどうなるか分からないけど……でも、うん。
なんとなく、ゲーム中なら……というか6keyを使っている時だったら、上手く行く気がする。
私の中でも“シックス”というキャラクターが、徐々に自信の源になって来ているのは確かだ。
未だに自分自身の事は信じられなくても、シックスなら出来ると思う。みたいな。
やっぱり、ゲームって凄いや。
「あ、それから……ちなみに、ちなみに……なんだけどね? デートって、何すれば良いのかな……私、そういう経験無いし、全然分からなくて」
「ん? あぁsevenの事か。まぁあの子なら、むしろお前をグイグイ引っ張ってくれそうだけどな。定番は適当に店を回ったり、買い物したり。映画とか……は、流石にゲーム内でやる事じゃないな。まぁ夢月と相手が、“楽しい”って思える事をやれば良いさ」
それが難しいんだよぉ……と言いたかったが。
でも実際、sevenの誘いはありがたいタイミングと言って良いのかもしれない。
何と言っても……ゲーム内じゃなくて、リアルの方でも“そういうお誘い”を受けてしまった状態だし。
今のまま黒沢君と出掛けても、多分ずっとテンパっているだけに終わってしまう。
これでは、相手は絶対“楽しい”なんて思ってくれないだろう。
申し訳ないけど、デートと言うものを練習させて頂こうと思います。
ちゃんとした“女の子”って感じのsevenなら、それこそ非常に良いお手本になってくれる筈だし。
ということで、グッと拳を握ってやる気を高めていると。
「それこそ、時間が余る事があるなら……ガンサバの中で、“料理”してみるのはどうだ? 早乙女さんからも言われたんだろ? “クラフト機能”」
お兄ちゃんの一言に、思わずポカンと間抜けな表情を浮かべてしまった。
「……え? ゲーム内でも、ご飯作れるの? というか、味分かるの?」
「夢月……すまん、これまで俺が勧めたゲームが悪かったな。今のVRは凄いからな、それこそ“五感”を使ってやるのがフルダイブだ。ガンサバには空腹とかのステータス異常はないけど、ちゃんと食べられるぞ。あとお前から見て、ゲーム内で料理した感想とかも教えて欲しいかな。あんまり目立たないクラフト項目だからこそ、テスターが少なかったのも事実なんだよ」
との事。
え、凄い、今時のゲームって凄い。
そんな事も、ヴァーチャルで出来ちゃうんだ。
であれば……やってみようかな。
それこそ皆の所に行く時に差し入れ、みたいな感じで。
コメント
1件
第67話読み終わったよ! 今回はイベント会議回って感じで、夢月が他の賞金首たちと交流する予定を着々と決めてて、ちょっとずつ社交的になってるのが微笑ましかったな〜。 特に「シックスならできる気がする」って自信の芽生え方がいいんだよね。 あとガンサバで料理できるってマジ!?VRゲームのディープなとこまで知れて新鮮だったわ。差し入れ作るって言ってたから、どんなの作るのかすごく気になる🔥