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「なあ……。天使って、さっきの奴らみたいに魔法で攻撃してくるもんなんじゃないのか?」
残った【力天使】へと振り向き、黒剣を手に一気に向かおうとしていた俺は、その予想していなかった姿を目にして動きを止めた。
『正確には先程のも魔法というよりは魔力を使っての攻撃ですね。ですからアレも想定内の攻撃です』
全長十メートルを超える大天使。
大きな四枚の翼を僅かに揺らめかせ、光を纏って悠々と空に浮かぶその姿は、まさに神の御使いの名に相応しい神々しさを漂わせていた。ただ、ある一点を除けば――だが。
その両手には、いつの間にか巨大なメイスを握りしめており、天使の姿で武骨な武器を持つそのアンバランスさは、得体の知れない威圧感を放っていた。
『魔力による武器の具現化。《Claidheamh Soluis》と同じ理屈ですね。【天使】との戦いを見て、魔法による攻撃よりも物理の質量で押した方が良いと考えたようです。なかなかよく見てますね』
「いや、感心してる場合じゃないだろ。あれ受け止められるのか?」
まあ、普通に考えたら無理すぎなんだろうけど、ステータス優先のこの世界なら質量差はあまり関係が――
『無傷で受け止めることの出来る確率0.037%。【力天使】の腕力に巨大な質量のメイス、それに加わる加速度から計算すると、直撃した場合の即死確率78.229%。防御するなら《Aegis》での防御、または回避することを推奨します』
全然無理ゲーだった。
基本能力が飛躍的に上がってるのは解っているが、それでも真正面からあのデカブツとぶつかるのは分が悪いらしい。
『しかし、先ほど《Aegis》を最大出力で展開させた為、《Aegis》の発動回路に破損が発生しています。その為、《Aegis》を再発動した場合、その最高出力が30%ほどに低下し、【力天使】の攻撃を受けきることは不可能です。現在、回路の修復にあたっていますが、完全回復までに後180秒ほどかかります』
「……つまり?」
『今は回避一択になるかと――ああ、これは少々近づき過ぎていましたね』
AIの言葉の意味を理解した時にはすでに遅かった。
その大きさからは想像も出来ないスピードで振り下ろされたメイスは、大気を押し潰すような唸り声を上げながら高速で俺に迫っていた。
咄嗟の反応が遅れた俺だったが、AIの制御による緊急回避により直撃を避けることに成功――
――ドン!!
しまった!
メイスを躱した瞬間に聞こえてくる爆発音。
それは音速の壁を越えた時に発生する本物の「衝撃波」。急激に変化、圧縮された大気圧による不可視の一撃をまともに受けてしまった。
身体を強い衝撃が襲う。それは《Icarus》の浮力を超えるほどの暴力的な力で、俺は成す術もないままに激しく地面へと叩きつけられた。
「――ガハッ!!」
大地は落下してきた俺を中心に激しく爆発し、巨大なクレーターが街の外れに出来上がる。
だが生きている。
意識もある。
全身に激しい痛みはあるが、動けないような怪我をしている感じもない。
『回避行動が間に合いませんでしたので、「魔ギア」の出力の80%を落下の衝撃を抑える事に回しました。
身体的損傷11%。欠損カ所無し。
魔力の一部を回復に回しますが、戦闘には大きな影響が出ないものと推測します。
今の【力天使】の攻撃を元に攻撃パターンの解析もほぼ完了しました。これにより一層正確な攻撃予測が可能になります。
この程度の奇襲で私たちを倒せるなどと過信したのでしたら、奴らの程度も窺い知れるというものです。
常に成長を続ける最新型AIの私に敵うと思っているその愚かさを、骨の髄まで思い知らせてやらないといけません』
「成程?」
あいつに骨があるのかどうか知らんが。
『さあ、やられた分をgoogolplex[※注1]倍にして返してやりましょう!!』
どうやら後手に回らされたことに相当プライドを傷つけられたようだな……。
でも、その提案に異論は無い。
「ぐーごるぷれっくす」が何なのかは当然知らないが。
※注1 googolplex
数の単位。10の(10の(10の100乗)乗)乗