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鷹槻れん/鷹槻うなの

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鷹槻れん/鷹槻うなの

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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レストランで案内された席は、奥まった個室のような場所だった。そこにあったのは長めのベンチのような席。スタッフに「どうぞ」とにこやかに隣り合って並ぶことを強いられる。
豆さんは私と隣だろうが何にも気にならないようで、ゆったりと席に座るから、私だって気にしていないふりをする。
今日も窓に面している、そのロケーションだけが救いだ。飛行機やビルの灯りがどこまでも続く宇宙のような景色。
あんまり飲みすぎないように、とこないだ釘をさしてきた割に、豆さんは私に何の制限もしてこないので、自主的にノンアルコールを選んだ。
「どうした?体調悪い?」
「この間飲みすぎないようにって言ったの豆さんじゃないですか」
気遣わしげな態度に微かに苛立って、覚えてないんですか?と詰め寄れば、
「そんなこと覚えててくれたの、かわい」
と息をするように甘やかしてくる。おかしい、こんなキャラだったっけ?
「いいよ、今日は弓家さんから離れるつもりないから」
いくらでも介抱してあげるからご安心を。
「…全然安心できないです」
「そう?残念」
逆に謎の警戒心を煽られたはずなのに、結局流されて、カクテルを注文してしまった。悔しい。
かすかに流れるジャズの調べを耳で追いながら、スタッフが運んできた前菜を眺める。
「豆さんとは一緒にお食事する機会が増えましたね」
「…まだ2回じゃない?」
「伊藤さんとの会食も入れたら3回です」
「あんなんノーカンだろ」
顔を顰める豆さんは、「2人で行ったヤツだけでいいだろ」と文句を言う。
「そう、まだ2回しかないんですよ」
透明なロングカクテルは、グラスの上にフワリとオレンジが置かれている。そっと避けながら、一口含めば、甘さはほとんどなくて、強いアルコールの香りがツンと鼻にくる。
「私たちには実績が全然ないんですよ」
だから、誰かと一緒の食事でもカウントするしかないじゃないですか。
謎の言い訳と共に、前菜の野菜にフォークを突き刺し口に運ぶ。腹は立つけど、この野菜は美味しい。
「じゃあ、有象無象との回をカウントしなくて済むように、回数重ねるしかないな」
「良いんですか?」
「もちろん、喜んで」
朝でも昼でも、いつだって。
目の前の夜景を見ながら言う豆さんは、今何を考えているんだろう。
「でも、豆さん」
少しだけ緊張して、喉が縮こまる。掠れた声を直そうとカクテルをぐいっと飲む。
「私は、嫌なんです」
「…どうした?」
否応なく高まる緊張に、もう一口カクテルを喉に流す。だいぶ残りが少なくなったグラスをテーブルに戻すと、握っていた手が豆さんの手に包み込まれる。驚いて豆さんの方を見れば、彼はひどく優しい目で私を見てくるから調子が狂う。
「お嬢さん、落ち着いて」
「…これが飲まずにやってられますか」
「自棄になる前に、少しだけ俺が話をしても良い?」
思わぬ提案に、つい頷く。豆さんはありがとう、と言いながら上半身を私の方に向けるから、隣り合う席に座る私たちなのに、向かい合ってのおしゃべりが始まる。
「俺もね、弓家さんとあちこち食事に行きたいなと思ってるんだけど」
存外軽い調子で始まる彼の言葉の行く末は見えない。
「別にね、食事に限らなくたって良いなって俺は思ってる。出張の時についてきてもらってもワーケーションができそうだし、週末に用事があるならそれを一緒に片付けても良い」
「…」
「ただ、俺も嫌なことがあってさ」
「…なんでしょう」
言葉を切って、豆さんがビールで喉を潤したタイミングで、スタッフが次の料理を運んでくる。見た目にも美しい一皿だけど、今はもう食欲はどこかに失せてしまったようで、ナイフとフォークを握る気持ちにもならない。
「俺さ、パートナーと秘書っていう関係性のままがすごく嫌なのよ」
「……それは…」
「弓家さんと一緒に過ごすなら、別の関係でありたいなって思ってる」