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アオノミライ ~ネコロマンサーと掃除機が、絶滅どうぶつの魂を今日も集める!~ 【能力の無駄づかい編】
第12話 - 第1話-2 ギガントピテクス2 『大物歌手か! ②』
12
2,073文字
2026年05月06日
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テラーノベル
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#ファンタジー
#イケメン
#ダンジョン
「どんな依頼だ?」
リクトは、グエンの膝をハリセンで小突きながら話しを切り出した。
「パンダに復讐したいのです……」
グエンは心底無念そうに首を振り、音が聞こえるほど強く掌を握りしめた。
「復讐とはまた穏やかじゃないっすね。元祖“草食系男子”っぽいのに」
自作のメモ帳に記入していたマキネの手が止まる――。
地球全体の寒冷化により森林が少なくなるにつれ、グエン(ギガントピテクス)らが主食としていた果物がなくなった。寒さに強く生長の早い笹を食べて生きるようになったのだ。
同じく中国の森に生息していたパンダが黙っているはずがない。こうして、グエンらとパンダとの“笹争奪戦”が勃発。その戦(いくさ)はパンダの圧勝に終わるのだった。
「ほ~う、リベンジね」
リクトは、パンダの後頭部を張り倒すくらいの復讐ならと考えていた。
「そうです。地球上のパンダを皆殺しにしたいです!」
グエンは決意新たに、清々しい表情で言い放った。
「おいおい。気持ちは分かるが、今更パンダに復讐して何になるんだ? アンタらにも原因があるんじゃないのか? 体長三メートル? でか過ぎだろ。半分程度の大きさなら、もう少し永く生存できてたかもしれないぞ。肉や魚も食え! 好き嫌いしてると、頭頂部の毛根を絶滅させるぞ!」
「まさに根絶っすね。まあ、一理あると思うんすけど……。でも、そう単純な話しじゃなかったと思うっすよ。いまさら食生活を変えても後の祭りというか……。あ、そうだリクトくん。抜いたグエンさんの毛ください。サンプルが欲しいっす」
「言ってみただけだ。マキネ。お前、さっき毛を引っこ抜いたろ?」
「できれば、私もそんなことはしたくない……。これ以上、毛を引っこ抜かないでください。結構痛いんで」
目の前で次々と倒れていった仲間たちの無念を晴らすため、グエンはパンダに復讐を誓ったのだ。握った石を破壊するグエン。悔しそうに唇を曲げ、巨体を地面に降ろした。
グエンの物騒な野望を聞いたリクトが、マキネを手招きで呼び寄せる。
「中国への渡航費用は出るのか?」
金欠のうえ、パスポートを取りに行くのが面倒だとリクトは考えていた。
「問題はそこかい。まあ、一応出ますけど。とりあえずリクトくんに立て替えてもらうことになるっすけど。で、どうします?」
「海外デビューは延期にするか。それに、どぎつい復讐なんて承服しかねる」
「そうっすね。グエンさんには悪いっすけど、別の依頼にしてもらいやしょうかね」
「問題はグエンさんか……」
「ウチが話してみるんで、もしグエンさんが暴走しそうになったら、リクトくん。ガコンと一発お願いしやす!」
ふつふつと闘志を漲《みなぎ》らせるグエンを見ながらマキネが返す。
リクトは、グエンの前でハリセンを三回フルスイングしてみせる。
今だ! と言わんばかりに、マキネに目配せをした。
「あのう、グエンさん? 依頼の内容を変えてはもらえないっすか?」
マキネは心苦しそうにグエンに問う。
「いやです! 皆殺し希望です!」
あっという間だった。リクトの振るったハリセンが、グエンの鼻先をかすめる。遅れてグエンの前髪がフワリとなびいた。
「あの、リクトさん? ハリセンの先っちょが鼻をかすったんですけど。かすったんですけど……。プチっと音がしたんですけど」
グエンは空を見上げ、ぱちくりと目を瞬かせた。
「あのう、グエンさん? パンダに一矢報いればいいんすよね?」
リクトの援護射撃をするマキネ。引きつり笑顔のグエンに問い直す。
「あ、はい。そんな感じでいいですぅ」
リクトの繰り出すハリセンの圧力(風圧)がゆえか、グエンは落ち着いた様子でマキネの言葉を受け止める。
「そんじゃ、パンダを“笹カマボコ好き”にするってのはどうっすか?」
「マキネ。お前はバカか? そこは、パンダを紅白に塗り替えるだろ」
「いやいや。笹カマ好きな紅白のパンダに改造っしょ。折衷案ってことで」
「正月用のカマボコみたいで面白いですね。けど、紅白のパンダって何かムカツキますね」
リクトらのくだらない提案に、グエンは白い歯をみせる。
「動物園からパンダが消えたら、世の子供らが悲しむぞ。近くで見たら結構汚いがな」
「リクトくん。ひとこと余計っす……。まあ、ウチも至近距離でパンダを見てガッカリしたクチっすけど。結構、目が怖いし」
「パンダのツートン・カラーが俺は気に入らない」
「おい! リクト! さっき紅白に塗り替えるって言ったじゃねえか!」
「白黒より良いだろ?」
「ウチのカラーテレビは白黒っすよ。ブラウン管っすよ。どうっすか? スゲーだろ!」
「なんか腹が立ってきた。今からパンダを殺(や)りにくぞ! ついでにマキネもシバクぞ!」
「もしもし、おふたりさん?」
「なんだ? グエンさんも一緒に来るか?」
「いえ。おふたりと話していたら、復讐なんてバカらしくなってきました」
久方ぶりに吸う現世の空気。少しアレな人間との会話。
呪縛から解き放たれたグエンは、穏やかな表情で虚空を見つめる。
リクトとマキネがハイタッチをする音が河原に響いた――。
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