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「どうかしましたか?」 店員さんはその男の様子を首を傾げて、不思議そうに見る。

「いえ、『不思議の国のアリス』私も好きなのです。児童小説は読んだことがあったのですが、絵本になったのですね。フフッ懐かしいです。」

 男は嬉しそうに本をまじまじと見る。

「そうだったのですね。あなたのお気に召したのなら、きっと娘さんも気に入るかもしれませんよ。しかも、最近出版された本ですから、持っている人も少ないかと」

 と店員さんは笑顔で言うと

「フフッそうだな!この本をプレゼントしよう。この本を買うよ。」

と男もまた笑顔で嬉しそうに言った。男は『不思議の国のアリス』の絵本を購入し、嬉しそうに店を後にした。


「おや?お坊っちゃんもこの本が欲しいのかい?」

 男の背を見ていると先程の店員さんから声をかけられて驚き、思わず

「うわあ!」

 と声が出てしまった。恥ずかしくて顔が熱くなる。

「すっ……すみません!!」

 慌てて頭を下げる。

「いやいや!こちらこそ突然声をかけてしまって申し訳ないね。……いやあずっと私とあのお方のお話をこっそり聞いていたからてっきり君も『不思議の国のアリス』を読みたいのかなって」

店員さんは頭を照れくさそうにかきながらそう言う。

「…………」

 僕は下を向いてしまった。バツが悪い。

 確かに少し気にはなる。しかもあんな会話を聞いたあとだ。興味を持っても仕方ないだろう。でも、貧乏で所持金が少ない僕には新書なんて買えるわけがない。いや、そうだったここは図書館だった。無料で借りられるじゃないか。

「…あの、この本を借りることはできますか?」

「もちろんできるよ。この本でいいかい?」

 店員さんは男が買っていた『ふしぎの国のアリス』の絵本の表紙を僕に見せた。

「うん!」

僕は大きく首を縦に振ると慣れた手つきで手続きをして、

「はいどうぞ!2週間後の12月10日までに返却してね」

 と言われた。

「ありがとうございます」

 と言って本を店員さんから受け取って足軽に図書館から出た。本を大事に抱えていた。新しい本に出会えたこと、他にもこの本を読んでいる同い年の子がいることが嬉しくて、早く読みたくて、気がつけば早足で家に帰っていた。


マッド・ハッタの狂愛

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