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『氷の女王』中学生の時にクラスの男の子から言われたあだ名。笑わないし、いつも真顔だし、目付きが怖くて感情がないからとそんなあだ名がいつの間にかついていた。しかし私にもこれにはもちろん訳がある。笑わないのは皆が面白くないからだし、真顔なのはいちいち感情を顔に出すのは疲れるからだし、目付きが怖いのは人見知りで人と話す時は緊張してるからだ。それにそのあだ名が嫌かと聞かれたら当たり前に嫌だけど、だからといって先生に告げ口をするとか親に相談するとかそんなことするのもめんどくさい。だから別にあだ名なんて気にしない。どうでもいい。そんなことを思ってしまうほど感情が冷めているから氷の女王なんて呼ばれてしまうのだろう。そんな氷の女王と呼ばれていた中学生の頃の私は、男の子と話すことなんて1度もなかった。むしろ男の子はどちらかと言えば苦手な方だったし恋愛感情だって抱いたことすらない。もう私の人生において男の子とは一生関わりのない事だと思っていた。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



高校1年生の入学式の日。


「ルナ〜私たちクラス離れちゃったね」


そう言って私に声をかけ出来たのは小学校からの幼なじみであるクルミ。

人づきあいが苦手なこともあって私の唯一の友達であり親友。


「え、私クルちゃんしか友達いないのに」


「ルナはもっと友達を作らなきゃ。まぁ〜ちょくちょくルナのクラスに遊びに行くから心配しないで!」


「…ありがと」


人見知りな性格だからきっと今年はぼっち確定だろう。そんな私とは真逆にクルちゃんは社交的だからすぐに友達ができるんだろうな。

そんなことを思っていると早速クルちゃんはインスタで繋がった新しい友達の所へと笑顔で行ってしまった。

そうともなれば私はひとりぼっちで自分の教室へと向かった。


1年5組と書かれた教室の前で思わず立ち止まってしまった。なぜなら辺りを見渡した限り眩しいほどにキラキラと輝かしい光を放つ女子が沢山いたからだ。

いわゆる陽キャとも言える女子は1年生とは思えないくらい高校に馴染んでいる。

こんな人らと共に1年を無事に過ごせるのだろうか。

不安になりながらも教室へ入り自分の席を確認して座った。

不幸中の幸いなのか、席は窓側の1番後ろというぼっちには有難い席を確保出来た。

これでクラスに身を潜めていられると思うとさっきまでの不安が一気になくなっていき体が軽くなる。


「拓海〜俺たち席近くね?!」

「それ最悪」

「最悪とか言うなよなぁ」


なんだか騒がしいと思って窓の景色を見ていた目線を横へ向けると、私の隣の席に男の子2人が集まって話していた。どうやら1人の男の子が私の隣の席らしい。男の子が隣とかほんと最悪と思いながら見ているとふとその男の子と目が合った。

サラサラとした黒髪で目にかかるくらい長い前髪から見えた目は切れ長な目をしている。

ちょっと怖そうな見た目だから余計に話したくない。

てことで直ぐに目を逸らした。


━━キーンコーンカーンコーン


チャイムがなると担任の先生が現れてみんなは静かに席に着いた。

最初は自己紹介とかあるのかと思いきや、気だるそうな担任はさっさっと終わりたいのか自己紹介とかはすることなくスムーズに配布物を配ると、余った時間は帰る時間になるまで教室内で好きに過ごせと言って教室を出て行ってしまった。

こんなこともあろうかと常に持ち歩いているイヤホンを手にとって身につけお気に入りの音楽を聞きながら本を読むことにした。

自分だけの世界に入ると余計な物からシャットダウン出来て落ち着く。


と、思っていたのに突然私の目の前に人の気配がして下に向いていた顔を前に向けると前の席に先程私の隣の席の男の子と話していた別の男の子が何故か私をじっと見ていた。全体的に色素が薄目な男の子は髪の毛は栗色で瞳の色は緑がかったヘーゼル色をしている。


「…あの、なにか」

「えっ、いやそのごめんえっとー」


なんでかは知らないけど凄い焦ってる男の子を見て益々不愉快な気持ちになってまた下を向いた。


「あっ、名前なんて言うの?!」

「え…」

「俺は理翔!んでちなみに隣のヤツは拓海ね」


聞いてもないのに自己紹介されても困る。そう思っていると下校のチャイムが鳴り何も言わずに急いで教室から脱出した。



(その頃教室では…)


「あーあ、行っちゃったぁ」

「おい理翔勝手に紹介するなよ」

「ごめん焦ってつい(笑)」

「…あの子俺らのこと嫌いになったかな」

「えっ、まじか。それは困る」

「……え理翔やっぱり、?」

「は、まさか匠海も??」




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



あのまま逃げるように教室から出るとクルちゃんのクラスへと足速に移動した。

クルちゃんを扉越しに探していると教室から1人の男の子が私の存在に気づいたらしく近づいてくる。


「誰か探してる?」

「クルちゃんを…」

「ん?あ〜クルミ?」


こくりと頷くと「ちょっと待ってね」と言ってクルちゃんを探してくれた。

その男の子をよく見ると身長がすごく高くて、髪の毛はやわらかそうな短髪で運動部って感じがする。

”クルミ”と呼び捨てにするほど初対面のはずなのにもう仲良くなったのかと思うとクルちゃんのコミュ力に改めて驚かされる。


「いたいたクルミ〜!」

「んー?想良なに?」

「クルミの友達が呼んでるぞ」

「えっ、わぁ〜ごめんちょっとだけ待ってて!」


そう言うクルちゃんの周りには沢山の女の子が集まっていて、どうやらもう友達が何人か出来たのか写真を撮ったりと忙しそうだった。

早く帰りたいと思う気持ちを必死に隠して仕方なく教室の前で待つことにした。


「クルミって本当に気さくだよな」


突然そう声をかけてきたのはさっきクルちゃんを探していた時に話した短髪の男の子だった。


「そうですね」


早く会話を終わらせたくてそれだけ言うとイヤホンを耳につけようとした時、短髪の男の子が私の手を掴んで止めた。


「イヤホンはなし!」

「は?」

「だってイヤホンしたら話せなくなるじゃん」

「いや、話したくないんで…」

「えひどっ」

「他の人に話しかけたらどうですか」

「冷たっ、でも面白い子(笑)」

「…はい?」

「名前なんて言うの?俺は想良です」

「いいません」

「えー、教えてよ」

「いやです」


そんな掛け合いをしていると、「ほんっとごめん!お待たせルナ!」と言ってクルちゃんが駆け寄ってきた。


「クルちゃん遅い!」

「ごめんてば〜って、想良なんでいるの?」

「トイレの場所探してて」

「え?トイレ逆だよ(笑)」

「じゃっ、バイバイクルミ!…それからルナもまたね!」


クルちゃんが私の名前を呼んだことで知られてしまい

プラスアルファ呼び捨てで呼んでいたことに不快感が増した。

入学早々変な人たちに絡まれてばかりで疲れた。


「帰ろクルちゃん」

「えっ部活動見学見に行かないの?」

「え、クルちゃん部活入るつもり?」

「つもりも何もこの学校1年生は強制だよ」

「えっ?!」


最悪だ。部活動なんてする気さらさらなかったから考えてもなかった。部活なんかしたらバイトするの大変になってしまう。そう文句ばかり並べていても、学校のルールに反することも出来ず仕方なくクルちゃんと部活動を見に行くことにした。

でも、一体何部に入れば良いのだろうか。運動部だけは絶対に入りたくないからここは大人しく文化部に入ろう。


「クルちゃんは何部に入るの?やっぱり中学の時とおなじバレー部?」

「うん!そのつもり。ちなみにルナはどうするの?」

「うーん、まぁ適当にどっかゆるい文化部に…。」

「なるほどね(笑)まぁバイトしたいしね!」


クルちゃんと話し合ってとりあえず全部の部活動を見回ることにした。

グラウンドに行くと様々な運動部が汗を流しながら部活をやっている。


「クルちゃんここには入ることないから次行こ」

「だね。バレー部見に行くか」


そう言って特に長居することなく体育館に向かおうとした時、周りを見ずに振り向いたせいか後ろにいた誰かとぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさいっ」


そう言って上をむくとサッカーの練習着を来た男の先輩と目が合った。


「こちらこそごめんね。大丈夫怪我してない?」

「あ、…大丈夫です」

「おっそれなら良かった」


ニコッと微笑む先輩を見て人見知りが出た私は急いで下を向いた。まだ同級生ならまともに会話は出来るけど先輩ともなれば話は別だ。私の人見知りが最大限に発揮されてしまう。その時視界に先輩の腕から赤い血が出ていることに気づいた。


「あっ血が…本当すみません」


ぶつかった時にもしかしたら爪とかで引っ掻いてしまったのかもしれないと思い、焦ってブレザーのポケットから絆創膏を取り出した。


「あこれさっき部活で擦りむいたとこだから大丈夫だよ」

「…そうですか」


なんだ、違うのか。絆創膏を取り出した自分が恥ずかしくてまたポッケにしまおうとすると


「絆創膏は助かる、ありがとう。」


そう言って私の手から絆創膏を取った。


「あっ、君ルナちゃんだよね?」

「えなんで名前知ってるんですか、」

「想良がルナちゃんのこと話してたから」


想良って…ぁあさっきの人か。知り合いなんだ。


「あとサッカー部マネージャー募集してます」

「そういうの私は結構です」

「…んーそっか、でも気が向いたらおいで」

「いやだからっ…」


「またね」それだけ言うと走って行ってしまった。

マネージャーなんて入るわけない。あんなイケイケな女子がやるようなことなんて私には不可能だ。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



次の日の朝。


いつものお気に入りの音楽を聞きながら学校へ登校していると、


「おはよう!」

「おはよ」


私の目の前に現れたのは同じクラスの隣の席の男の子と前の席の男の子だった。

驚いて思わず立ち止まったが会釈をしてすぐに歩き始めた。


「あっ待って。昨日はごめん!いきなり話しかけて名前なにとか馴れ馴れしかったよな」

「…その、俺たち君と仲良くなりたくて。だから、

名前教えて欲しい」


昨日はまともに言葉を発さなかった黒髪の隣の席の男の子が低い声で言った。

どうしてそこまで私と仲良くなりたいのか不思議に思いつつも、こんなみんなが見てる中で立ち止まって話していたら突然恥ずかしさが込み上げてきて急ぐように名前を口にした。


「…ルナです」


私がそう言うと2人はパッと表情を明るくして笑顔になった。


そしてまた歩き出そうとした時、後ろから頭をポンとされて振り向くとクルちゃんと同じクラスの短髪の男の子が立っていた。


「ルナおはよっ」


挨拶を返すよりも先に頭を触られていることに驚いて急いで振り払った。


「やめてください」

「ほんっと今日も冷たいな。てかルナってちっちゃいからすぐ見つけられる」

「は?」

「あ、怒っちゃった?」

「怒ってません」

「怒ってんじゃん」


なんなんだこの人は。距離感バグってる。こういう人が1番苦手。

そんな私たちの掛け合いを見ていた同じクラスの栗色の髪の毛の男の子が突然叫び出した。


「ルナ?!え、なにだれこいつ?!しかもなんで呼び捨て?!」


「距離近いし。チャラそうだし。危ないな」


続けて黒髪の男の子が呟く。


「あ、俺6組の想良って言います。良かったら友達になろ!」


「「 無理 」」


短髪の男の子の言葉に2人は声を揃えて否定した。

なんだか男3人で話に気を取られてる間にこっそり抜け出して校舎に入った。


下駄箱で靴を脱いでいるとふと横を見ると2年生の下駄箱の所に昨日ぶつかった先輩と目が合った。


「あ、昨日の…ルナちゃんだ」


軽く会釈をして教室に行こうとすると先輩が近づいてきて私の目の前まで来ると目線を合わせるように少し屈んだ。


「ルナちゃん、サッカー部マネージャー募集してるよ」

「…だからやらないってい…」

「じゃあやってくれるまで言い続けるね」


そう言って微笑むと行ってしまった。














【続く】





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