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鷹槻れん/鷹槻うなの

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鷹槻れん/鷹槻うなの

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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「ははは、面白いこと言いますね」
道の両サイドが、大小とりどりのホテルで埋め尽くされ。
先ほどの雑踏よりは幾分人は少ないけれど、カップルが多数行き交うここは、ずいぶん場違いだ。
「大豆生田さんが過保護にもなるわけですよ」
おっと、人が来ますよと腕を引かれてまた一歩目の前の建物に近づいて。反射的にすみませんと謝って伊藤さんに近寄ったけれど、私の後ろを通った人はいなくて。
ほら、そういうところ。
無防備に距離を詰めたらダメですよ。
「秘書さん、普通にしてても可愛いけど、酔うと隙だらけね」
「いや…そんなことは…」
「使いやすくて助かる」
「…え?」
改めてその発言に伊藤さんの目を見れば。
先ほどまでの穏やかさはどこへやら、獰猛な視線にかち合い、思わず背筋が震える。
「今日の会食、なんで自分が呼ばれたんだろうって思いませんでした?」
「…思いました」
「なんでだと思います?」
「……わからないです」
結局、その意図はわからないままだった。丁寧に思考することも放棄すれば「かわい」と言われ。
「この瞬間のため、と言ったらどうでしょうか」
ひどく妖しい笑みを見て、ようやく私の脳が動き始めた。
「そ、それは…」
「ああ、勘違いしないでくださいね」
後ずさろうとしたのを看破され、掴まれたままの腕にさらに力が加わる。
「純粋に女としてのあなたにも興味があるんだが、本懐はそこではない。自分の秘書が、敵対するパートナーとホテルに行った写真が出回ったら、どうなると思いますか?」
「っ…」
その時ようやく全容を理解した。今、どこかにカメラを持った人間がいるのだろう。私が敵対するパートナーとただならぬ仲であることがすっぱ抜かれれば、豆さんの印象は地に落ちる。
私を敵陣営のスパイとして使った手段を選ばない悪辣な男。あるいは、敵陣営に情報を売り渡す裏切り者。
「お気づき?」
ずいぶん満足そうな顔の彼は、あまりにもこの場面にそぐわなくて、そのギャップが余計恐怖を煽る。
「ここまで、全部計算なんですよ。大豆生田さんに今電話をかけているのも、こちらの陣営の人間です」
ま、電話相手は詳しいことは知らせずに電話だけしてもらってるんですけどね。全容を知る人間は少ない方がいいですから、と肩をすくめる伊藤さん。
「じゃあ、入りましょうか」
シャッターチャンスは多めの方がいいので、ゆっくり歩いてくださいね。
腕を掴んで歩き出そうとする彼に抗って、パンプスで必死に踏みとどまる。
「嫌です」
「あら、そう?」
逃げれるの、あなた。
やけに鋭い視線が、そのまま私の心まで切り裂いてくるような気持ちになって泣きたくなる。
「どのみち、もうこのシーンだって散々撮られてるし、諦めろよ」
今更足掻いてもどうになるもんじゃないのよ。
ひどく余裕のある態度に苛立ち、それ以上に危機管理があまりに疎かだった自分にもっと苛立つ。
今ここで逃げても、連れ込まれても豆さんが不利になることは変わらなくて。
社内で噂になるだけではきっと終わらない。いち企業の醜聞とはいえ、下世話なビジネス週刊誌には格好のネタだ。まして社長選に絡むとなれば。
「それにさ」
パンプスを脱いだら走って逃げれるだろうか。
逃げるための算段を計画していた私の耳に届いたのは、さらなる衝撃。
「あなた、昔プロジェクトで潰れた子でしょ」
「……」
気づかれていないと思っていたのに、目の前でニヤニヤと笑う彼から吐き出された言葉。
「全然気づかなかったけど、見覚えあるなって」
俺可愛い子は忘れないからさ、なんとなく気になって色々調べたわけよ。
「そしたらあの時の子って言うじゃん」
びっくりしたよ。辞めずに戻ってきてたのね。
「まあ、コンサルは向いてなさそうだったから秘書ぐらいがちょうどいいのかもしれないよね。おっさんたちに可愛がってもらえそうだし」
笑顔で繰り出される一つひとつの毒を、まともに浴びていく。心がどんどん萎縮していくのがはっきりとわかる。耳を塞ぎたいのに、体が硬直してそれもできない。
「だからさ、もう一回潰れても一緒じゃない?」
ま、あなたが悪いわけじゃないし、憎いわけでもないんだけど。
「そういう子を抱いてみる、という経験はまだなくてね。本当はホテルに入る写真さえ撮れればそのあとは適当に解散しようかと思ってたけど」
目の前の悪魔のような顔がさらに歪む。
「ちゃんと、最後までしよっか」
ああ、もう。
あまりの気持ち悪さに眩暈がして。
ねえ、たすけて。
「何勝手に俺の秘書に手出してんの?」
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