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そして迎えた週末。


私はモヤモヤした気持ちを抱えたまま、亮祐さんのマンションを訪れていた。


誕生日の日を除くと、付き合うことになってから会うのは初めてだった。



「いらっしゃい」


「お邪魔します」


休日仕様の服装で私を出迎えてくれた亮祐さんは、リビングに私を通すとコーヒーを入れてくれる。


心を穏やかにするような良い香りに少し癒され、差し出されたマグカップに口をつけた。


「今週は全然会社で会わなかったね。会った時に百合がどんな反応するかなってちょっと楽しみにしてたんだけど」


少しからかう口調で笑いながらそう亮祐さんは言う。


確かに今週は全く会社で会わなかった。


(でも私は亮祐さんについての話題は女性社員から耳にタコができるくらいたくさん聞いたけど‥‥)


そんなちょっと拗ねた気持ちが胸を掠める。


「そういえば、先月百合が取材してくれた社内報の記事がアップされてたね。今週はよく社員から声をかけられたよ」


「‥‥そうなんですね」


私は亮祐さんの話に曖昧に微笑みながら相槌をうつ。


でも心の底では、週の始めからずっと心に蓋をしていた不安な想いが、再びザワザワと騒ぎ出していた。


(それって女性に?みんな本気で狙うって言ってたし、あの手この手でアプローチを受けたんだろうな‥‥。その中の何人かとお酒飲みに行ったりするのかな‥‥。それでそっちに行っちゃうのかな‥‥)


そんな思考がグルグルする。


(そもそも亮祐さんに私なんてふさわしくないし、分不相応だもの。身の程知らずだってことは最初から分かってたことなのに‥‥)


すると、心ここに在らずな私の態度に違和感を感じたのか、亮祐さんは私の目を覗き込んだ。


「百合?」


「‥‥はい」


「なに考えてる?そんな泣きそうな顔して」


「なにも考えてないです」


「本当に?」


「本当です」


こんな情けないことを考えてるとバレたくなくて、私はやや強い口調で言い返してしまった。


すると亮祐さんは改めて私の目をじっと見つめてくる。


「百合ってたまに頑固になるよね。意地っ張りというか。そういうところも可愛いけど、俺は百合がなに考えてるのか知りたいな。教えて?」


「‥‥そんなに大した事じゃないです」


「大した事じゃないなら教えられるよね?」


「‥‥」


「ほら、話してみて?」


「本当に大した事じゃなくて。私はただ‥‥」


「ただ?」


いつものように、また亮祐さんに言葉で追い詰められてだんだん逃げ場を失っていく。


結局、私は「もうどうとでもなっちゃえ!」と半ば投げやりになって口を開く。


「ただ、亮祐さんが声をかけられたのって女性社員なのかなって思って‥‥。みんな亮祐さんを狙いに行くって言ってたし、既成事実作ってしまおうってしてる子もいたし」


「‥‥」


「そうなったら亮祐さんはそっちに行っちゃうのかなって‥‥。だって私なんて亮祐さんにふさわしくないし、分不相応だし‥‥。だからただモヤモヤしてただけです」


一旦話出すと堰を切ったように次々に言葉が溢れてきた。


吐き出し終わった私は一瞬我に返って急に恥ずかしくなってくる。


その恥ずかしさを隠したくて、お手洗いに逃げ込もうとおもむろに立ち上がった。


圧倒されるように私の言葉を聞いていた亮祐さんは、私が立ち上がるとハッとしたように私を見て同じように慌てて立ち上がる。


「ちょっと、百合どこ行くの!?」


「お手洗いです」


「いやそれ逃げたいだけでしょ」


そう言うと逃げようとする私の手を掴み、そのまま亮祐さんの胸の中に引き寄せられた。



「ちょっと、離してください‥‥!」


「そんな言い逃げはずるいよね。許すわけないでしょ」


「だって」


「だってじゃない」


そして私の言葉を塞ぐように、そのまま強く唇を押し付けられた。


その唇はやや強引でこの前の甘く優しいものとは全然違う。


無理やり舌が唇を割って中に入ってきて、深く深くなっていく。


頭の芯がクラクラするような錯覚を覚え、私の足腰はガクガクし、思わず亮祐さんの方へ体重を預けた。


「良かった、これで百合が静かになった」


「‥‥」


唇を離され、亮祐さんは満足気にそう言い放つ。


私が逃げないように大人しくさせるためのキスだったようだ。


「‥‥ずるい」


「ずるいのは言い逃げしようとしてた百合だよね?」


「だから言い逃げじゃないです‥‥!」


「じゃあ逃げずに俺の話も聞いてくれるよね?」


「‥‥はい」



そのまま立って抱き締められたまま、亮祐さんを見上げる。


「あんなさ、可愛いこと言われて俺が正気でいられると思う?百合は本当に無自覚に俺を煽るのが上手いよね」


「可愛い‥‥?」


「だってあれって百合がヤキモチ焼いてたってことでしょ?他の女に盗られるんじゃないかって」


「‥‥」


「ちなみに声はかけられたけど、そんなの全然相手にしてないよ。百合以外の女なんて面倒なだけだし、興味もないし」


「でも、すっごい可愛い子も本気でアプローチするって。みんなあの手この手で迫ってくるんですよ?私より亮祐さんに相応しい子なんていっぱいいますよ?」


「俺に相応しいってなに?俺は百合が好きだし、百合だから俺のものにしたいんだけど」


「でも‥‥」


「そんなに言うならどれくらい俺が百合を好きか身体でしっかり教えてあげるよ」


「‥‥えっ」



真剣な表情で私に話しかけていた亮祐さんが、突然イジワルな表情を浮かべる。


(な、なんか黒いオーラが見えるような‥‥!)


「先週予告もしといたしね。次は泣かせてあげるから覚悟しといてって言ったの覚えてるよね?」


(わ、忘れてた‥‥!)


ずっと不安とモヤモヤでいっぱいだった私は、すっかりその予告を意識の外へ放り投げていた。


急に妙な汗がじわりと浮かぶ。


「じゃあ有言実行させていただくね。百合にはしっかり俺が百合を好きって分かってもらわなくてはいけないし」


亮祐さんはニヤッと愉快そうに笑うと、素早く私を抱きかかえる。


そして寝室へと歩みを進めた。


(ええっ、こんな展開ってあり‥‥?うそでしょ!?)


焦りと緊張で目を白黒させる私は、亮祐さんに抱きかかえられて身動きが取れずなす術もない。


寝室のベッドにドサっと横たわらせられると、緊張は最高潮に達する。


そこは先日私が酔っぱらって占領させてもらったベッドだった。


キングサイズの大きなベッドは相変わらずその存在を主張している。


それを見ると余計に意識してしまって身体が熱くなる。


「あ、あの、シャ、シャワーとか‥‥?」


「百合、もう逃げるのはなし。さんざん俺を煽ったんだから大人しく抱かれてね」


「‥‥!」


(もう恥ずかしすぎて意識が飛びそう‥‥!)


亮祐さんはベッドに横たわる私の上に覆いかぶさり、首すじに頭を|埋《うず》めて軽くキスを落とす。


熱い息と柔らかい唇が触れ、身体がビクッと震えた。


「そういえば百合は耳が弱そうだったよね?」


(なぜか耳が弱いのバレてる‥‥!?)


ふと思い出したように亮祐さんがそう口にすると、今度は私の耳を手で弄り、そして唇を寄せてくる。


「んっ‥‥!」


耳に触れられた瞬間、身体に電流が走ったようにゾクゾクが止まらなくなった。


「すっごい良い反応。やっぱり耳が弱いんだね、可愛い」


執拗に耳を責められ、緊張で強張った身体から力が抜けていき、同時に身体に甘い疼きが走る。


「あっ‥‥。亮祐さん‥‥んんっ‥‥!」


堪えきれずに自分の口から甘い声が漏れ出し、それがだんだんと大きく激しくなっていく。


そのあとはもう意識を保つので精一杯だった。


欲情した色が浮かぶ目、うっすら汗ばむ引き締まった身体、少し苦しげに顔を歪める表情、そのどれもがとても色っぽくて私の興奮を高め、肌と肌の重なりは身体だけでなく心も溶け合うような満たされた気持ちにしてくれる。


それに、私の身体に触れる亮祐さんの手も唇もすごく甘く優しくて、大切に想ってくれていることがその一挙一動から伝わってきた。


私の不安を溶かしてくれるような、そんな甘く淫らな時間だったーー。

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