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サイトでやり取りしていた時より、ダイレクトにやり取りができる分、気持ちが入りやすくなった。朝のおはようから、夜のおやすみまで頻繁にやり取りをする。
家族がいるときはスマホはできるだけ持たないようにしている。翔馬からのLINEは非通知にして、スマホの暗証番号も変更した。
《おはよう!今日も仕事だよね?ミハルはキャリアウーマンのイメージがあるから、働き過ぎて疲れを溜めないようにね。時間があったらLINEすること。待ってるから》
家族が出払ってすぐスマホを開くと、そんなコメントが届いている。
___優しいんだなぁ…
〈おはようございます。疲れを溜めないようにって、優しいですね。そんなこと言われるとよけいに頑張ってしまいます。翔馬さんもお仕事、頑張ってくださいね〉
《俺は今日は部下を連れて外回り。運転は部下がするからLINEはいつでもいいよ》
___部下が運転する車?
〈部下の運転なら安心ですね〉
《会社のトップに立つ人間は、自分では運転しないよ。何かあったら大変だからね》
___えっ!トップ?普通のサラリーマンじゃないの?
〈会社の?経営者なんですか?〉
《あれ、言ってなかった?小さいけどね一応経営者。だから時間も自由になる》
セットしていたスマホのアラームが鳴った。
〈ごめんなさい、またあとでLINEしますね〉
会社の社長だったんだ、知らなかった。私はただのパートなのに、なんだか不釣り合いだと気後れしてしまう。
___別に付き合うわけでもないのに
そんなことを考える自分がおかしかった。
職場では由香理とペアを組んでの仕事になった。大量出荷のリストで、二人で一日中かかってしまう量だ。黙々と商品を梱包していき、勤務時間が終わる頃やっと終われた。
「お疲れ様!大変だったね」
「ホント、これ由香理さんとじゃなかったら終わってなかったかも?体力ある人とペアでよかった」
「駒井っちも、張り切ってたからできたんだよ。最近、すごく頑張ってるよね?なんかいいことあったの?」
「いいこと?別にないけど」
「そう?なんかさぁ、元気になったというかイキイキしてるというか。生活にも仕事にも目的のようなものができたのかなって思った」
「目的かぁ…そうね…」
由香理に言われて考える。
翔馬のことかな?やっぱり。パート代でもっとおしゃれもしたいと思うし。
「いいことだよ、頑張って!」
由香理は年下なのに、褒められた気がしてうれしかった。
急いで片付けてスーパーへ行き、買い物を済ませてLINEを開いた。
___え?これって…
どこかのオープンカフェで40才くらいの、清潔そうな男性がコーヒーを飲んでいる写真だった。カップを口元に運びながら目線はカメラを見ている。誰だっけ?俳優に似てるんだけど思い出せない。
《部下が写真を撮ってくれたので送ります。もうちょっとカッコよく撮ってくれたら、ミハルが会いたいと思ってくれたかな?》
少し前に写真の交換をしたいと言われていたけど、まさか本当に送ってくるなんて……でも。
___カッコいい!
これで社長なんだと、自分が勤める会社のおじいちゃん社長と比べてしまう。
〈思ってた感じと違って、カッコいいです!びっくりです〉
《そう?嘘でもうれしいなぁ。どう会いたいと思ってくれた?》
___ダメ、会っちゃダメ
〈私なんか翔馬さんから見たら、みすぼらしい女です。会えません〉
《やっぱりダメか。俺は全然ダメな男ってことだね》
〈そうじゃなくて、私がとても翔馬さんと釣り合う女じゃないということです〉
《釣り合う?会うだけなのに?まぁ、そう言うなら仕方ないね。ミハルとなら楽しい時間を過ごせそうだったんだけど残念だ。もういいよ》
その後、何度LINEをしても既読がつかなかった。