wki side
m「なんで来たの」
元貴の生気のない瞳が向けられた。
r「なんでって、心配で」
俺と涼ちゃんは今、元貴の家にいる。
涼ちゃんが行こう!と言い出した訳だけど、そのきっかけは昨日、元貴の体調が悪くなり 現場を早退したという報告をマネージャーから受けたという出来事にある。
責任感が強く体調管理がしっかりしている元貴のことだから、驚いたし、1日だけ休みを作ったということからもただの体調不良ではないことが分かった。そういった経緯で、元貴に拒否されながらも様子を見に来たのだが……
m「違う、なんでトイレまで追っかけてきてんのって」
そう、俺たち3人は今 トイレにいる。
一人で住むには広すぎるマンションの一室にある、トイレに。
w「…涼ちゃん、一旦出よ?ってか出ないとダメだから。ここだけ人口密度えぐいことになってるから」
r「なんで若井がそんな迷惑そうな顔すんの!」
w「元貴も迷惑そうだよ」
“あっちいけ”オーラを全開にしている元貴をなるべく見ないようにしながら、不服そうな涼ちゃんを連れ出す。
この状況であっちいけって思わない方が おかしいとは思うけどな。
w「、ごめんね」
ドアを閉め、ドア越しにそう声をかけて涼ちゃんとリビングへ戻った。
w「やりすぎだって」
r 「1人にしたらさ」
開口一番、お互いの声が被る。
w「…どーぞ?」
r「元貴、結構辛そうじゃん。
何しでかすか分かんないよ」
ありがと、と 話されたその内容に、確かにそうなんだよな、と頷いた。
ソファでぼーっとしていた元貴を思い出す。
話しかけても反応がびっくりするくらい薄くて、余程追い込まれてるんだな、と分かった。
俺たちに冷たい態度を取るのは 孤独を悟らせないためだって事も分かった。
いつもそうやって強がる。
r「元貴ー、お風呂入っちゃっていい?」
戻ってきた元貴に向かって涼ちゃんが声を張り上げる。
元貴は顔をしかめた。
m「帰れっての……」
r「大丈夫! 借りられないと思ったから 服は持ってきてる!」
さらに嫌そうな顔になる。
それ、『あなたの服は私には小さすぎるので 着られません』って意味で取れちゃわない?
元貴が無言でソファに座ったのをどう解釈したのか、涼ちゃんは「ありがと!」といい洗面所へ消えた。
リビングが急に静かになる。
何かを考えているようで、何も思っていない。
そんな虚無感を纏う元貴をじっと見つめる。
同じソファに座っているのに、向こうが端にいるせいか 距離があるように感じる。
元貴がスマホを触り始めた。
何、見てるんだろう。
顔を思いきり向けてガン見。
こういうのは思いきりが大事。向こうはどうせ気にしてないんだから。
元貴はこの視線をどう捉えてるんだろ、とふと思う。好奇心の現れ とか、友情の入り交じったもの とか、そういうのじゃない。
気にしてないんだろうけど。
……気づいてほしい。
目が会う度に湧き上がる庇護欲はもうどうしようもなくて、表情の変化の一つ一つを目で追ってしまうのも 仕方がなくて。
笑うのも、怒るのも、泣くのも、寂しそうにするのも
全てその身体が織り成す現象ならば。
m「なに見てんの」
全部、愛したい。けれどできるなら、笑っていてほしい。
元貴の視線はもうスマホに戻っていた。
空っぽな瞳で、見るというよりかは 眺めるように画面に目をやっている。
顎をつかんで こちらを向かせ、こちらを向かせ、唇を押し付けた。
スマホが手の中でぐらりと揺れ、そのまま床に落ち 鈍い音をたてる。身体をぐっと抱き寄せ、拒絶される前に舌を入れた。
m「っ……」
腕の中で元貴の身体が強張るのが分かる。
舌と舌を絡ませるように重ねれば、元貴から微かに声が漏れた。
その声にようやく人の温度を感じ、安心する。
同時に角度を変えながら、より深いところまで舌を進める。
m「……んっ…」
……拒否、されない。
受け入れられてはない、けど。
上顎、歯列、頬の内側、となぞり、少し力を入れて肩を押す。 すると、片方の肩をソファの背もたれに預けながら ずるずると崩れた。
w「は、」
口を離すと、どちらのものかも分からない唾液が糸を引く。
覆いかぶさる形になった俺は、
元貴の目に相変わらず光がないことに 微かな苛立ちを覚えた。だが、その瞳は小さく揺れている。
元貴を孤独から、救いたい。助けたい。
自分のエゴかも。重く受け止めすぎかも、しれなけど。
それでも。
風呂場のドアが開く音がした。
ゆっくりと体を起こして、立ち上がる。
熱をもった元貴を残して、廊下に出、乱れた服を直した。
それでも
人を孤独から救うもの、やっぱり人の温もりでしょ?
コメント
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え え、、見るの遅れてます、、 遅れました、、、1コメがああああ、、 おぼえてますかっ!!