壱花と斑目のしょうもない会話を聞きながら、倫太郎は、
……これはやばいな、と思っていた。
なにがやばいのかわからないが、やばい感じがする。
この二人、結構、話が合うんじゃないか?
冨樫が聞いていたら、
「いやいや、何処が話が合ってるんですか」
と言いそうだったが。
いや、内容が噛み合っていなくとも、気が合ってそうな気がするというか……。
でもまあ、斑目はこう見えていい男だし。
性格はちょっとあれだが、お坊ちゃんだし。
結構モテるから、こんな化け化け女と付き合う必要もないか、と思う倫太郎の前で、斑目が壱花に言う。
「花花壱花。
お前はあれか。
花のような子になるようにとそんな名前になったのか?」
「いやー、でもなかなか期待通りには育たないもんですよね~」
と苦笑いして壱花は言う。
花花とか言われて、ちょっと嬉しそうだった。
「まあ、名前は自分で決められないからな。
ちなみに、俺の名前は人也。
人なりって意味だ。
斑目って、なんか、蛇っぽいじゃないか」
いや、蝶とかも、まだら模様だろ……。
「蛇っぽいけど、人だよって意味で、怖がられないように親がつけたらしい」
「人だよ、って、なんか可愛いですね」
と壱花が笑う。
……可愛いか?
いいお話ですねーと笑う壱花を見ながら、倫太郎は、
なにが人だよ、だ。
こいつ、ヤマタノオロチよりタチが悪いやつなのに、
と思っていた。
そのとき、場に並べているおのれの手札を指さし、壱花が言った。
「よしっ、鉄砲で300点です!」
「何処がだっ」
と全員がその札を見て叫ぶ。
鉄砲とは普通、桜、月、杯だが。
壱花が並べたのは、高尾、化け狸、うさぎだった。
「なんでこれで、鉄砲だっ」
と倫太郎は叫んだが、壱花は、
「鉄砲で撃たれて。
煮たり焼かれたりして、食われそうな方々です」
とそれらの札を手で示して言う。
「高尾さんも食われてるじゃないか……」
と札を覗き込んで冨樫が言った。
「ちょっと、化け化けちゃーんっ?」
と札の中から高尾が叫び、倫太郎の前に並んでいる札の中で、キヨ花が笑っていた。
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