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鷹槻れん/鷹槻うなの

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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2人が打ち合わせを始めたのを確認して、事務作業を再開する。年々右肩上がりの成長を遂げる弊社だが、急成長の弊害としてワークフロー系が脆弱だ。
社内イントラネットを右往左往してようやく必要なページに辿り着く。これは総務にお願いして改善してもらわないと…。
事務系の作業はただでさえ煩雑なのに、処理の出だしがこんな迷路だと…そりゃみんな私に丸投げしてくるわけだ。
「よーし」
非効率な操作を繰り返して、ようやく作業を1つ終えた。1つ終えるだけでどれだけ時間がかかったのか、考えるとつい泣きたくなる。だから、考えてはいけない。無心で時間を溶かすしかない。
少し伸びをして、お茶を飲んで。再び気合いを入れ直して作業をする。そんなことを繰り返していれば
「あれ、お前これ食ってねーの」
また背後から声をかけられる。どうやら紫水たちの打ち合わせは終わったようだった。
「あ、うん。紫水の食べ物を奪ったのが申し訳なくなって」
「そういうのは奪る前に気づきましょうネ」
「だから返すよ」
「えー…」
なんか逆にムカつくな、食えよ。
いや、だから悪いから返すって。紫水の方がエネルギー必要でしょ。
俺のパンが食えねえっつうのかよ。
「なーにイチャついてんの」
紫水とパンの所有者で揉めていれば、今度は豆さんが首を突っ込んできた。こんな低レベルな会話、豆さんに聞かれていいものではない。
「豆さん、それはありえないです」
「イチャつくなら相手は選ばせてください」
「…君たちまあまあ仲良しだね?」
反論が見事に重なった状況を見て、豆さんが呆れた顔をする。
「紫水からもらったパンを、紫水に返却しようとしただけです」
「俺から奪い取ったパンを、責任持って食えと説得してるだけです」
「…弓家さん、ランチまだなの?」
さっき俺に昼メシ買ってきてくれたじゃん、とあっさりバラされて紫水の顔が見れない。
「買ったんですが…自分の分忘れてて」
「バカかよ」
紫水からすかさず入るツッコミはもはや想定内。痛くも痒くもない。
「あーわかったわかった」
スーツのポケットをゴソゴソと漁りながら、状況を理解したらしい豆さんは気楽に続ける。
「このパンは紫水君持って帰って」
「は、でも弓家…」
「弓家さんのご飯は今から俺が買ってくる」
「なんで!?ちょっと、豆さん次の打ち合わせもう始まりますよ?」
「遅れるって言っといて」
爽やかな笑顔で、片手を軽く振ってフロアを出ていく豆さん。
「…パートナーにメシ買いに行かせてんじゃねーよ」
「…おっしゃる通りです」
じゃ、これは返してもらうわ、とパンを持ってくるりと身を翻す紫水。
「お前溺愛されてんな」
「え、なんて?」
「なんでもねーよ」
去り際に何かをつぶやいた紫水は、「じゃ」とこれまた軽やかに自席に戻ってゆく。またね、と言えば「しばらくは会いたくねーな」と、やっぱりよくわからない奴だ。
案の定、数分と経たないうちに次の会議の参加者たちが豆さんの個室の前にやってくる。
「あれ、豆さんは?」
「…すみません、今ちょっと席を外してしまっていて」
いつも以上に”すみません”に気持ちを込め、すぐ戻ってくると思うんですけど、という言い訳も付け足しておく。
「あータバコか」
「…そうかもしれません」
コンビニに私のランチを買いに行かせてます、なんて言えるわけがない。勝手に居心地の悪さを感じて、化粧室にでも逃げてしまおうかと弱気な心が主張する。
「おまたせー」
あと20数えて帰ってこなかったら戦略的撤退を決めようと思っていたところに、待ち望んだ朗らかな声が聞こえる。すがるように目を向ければ、白い小さなビニール袋を持った彼がこちらに向かって歩いてくるところだった。
「コンビニですか」
「そうそう、ちょっとタバコ切らせちゃってて」
ごめんね、中入って。
彼が歩きながら皆を促して、メンバーはゾロゾロと部屋に入っていく。
その姿を見ていれば、苦いシトラスがふわりと香り、次の瞬間デスクの上でカサリと音が鳴る。
視線をデスクに動かせば、そこには豆さんが持っていた白い袋があって。
彼は私をチラリと見て僅かに口角をあげる。その顔に呼吸が止まりかける。お礼を言うタイミングを逃したと気づいたのは、彼がそのまま歩を進め、個室内に吸い込まれていった後だった。
「うわ…」
袋の中身が気になって机に出してみれば、いつかの仕返しかと思うようなお菓子の数々で。日頃あまりお菓子を食べない豆さんが、お菓子の陳列棚にいる図は想像できない。
お菓子の中に紛れていたおにぎりを取り出して、ありがたくいただくことにする。
それこそ、パートナーにご飯を買いに行かせたなんてとんだ重罪だと思うので、せめて私にできることはおいしくいただくこと、かな?