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やがて彼女は、これ以上待っても期待はできないと考えたのか、諦め混じりのため息をついた。
「そう。つまんないの。あの時あなたが大声で店長のこと大好きって言い張ったから何か面白いことになるんじゃないかと期待したんだけど。」
「あ、あれは…」
忘れかけていた記憶が蘇り、一気に羞恥心が全身を駆け巡る。
そんな私の様子を気づかれたくなくて、誤魔化すように声を張り上げた。
「思ったことを言っただけで別に、恋愛感情があるわけじゃないですから!!大体…店長結婚してるし、おじさんだし…そりゃ、いいとこはありますけど…私は、人として好きだと言っただけですから。」
何だか、同じようなやり取りをつい最近姫菜とした気がする…。
みんなしてそんなに私と店長をくっつけたいのか。
そして私は何故こんなに必死に否定しているのか。
そんな私とは対照的に、雛瀬さんは腕を組んで私のことを冷静に見つめてる。
てっきりイジってくると思ったのに。これじゃ私が馬鹿みたいだ。
やがて雛瀬さんは吐き捨てるように口を開いた。
「……ま、あなたがそう言うならそれでもいいわ。ただ、私の話に少し付き合ってくれる?」
「…はい?」
いきなり何を言い出すのか。困惑する私を横目に、彼女は話し始めた。
「私ね…店長には、私が離婚した理由…夫の浮気が原因って話したけどあれは嘘。どうしても知られたくなかった理由があったのよ。」
そう話す彼女の表情は至って真剣で、からかう様子は微塵もなかった。
そんな彼女が嘘をついてまで隠したかった理由とはなんなのか。
初めて彼女に芽生えた興味を抱えながら、私は固唾を飲む。