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「初兎ちゃん、またまろのこと見てた」
「……別に、見てないよ」
「ふーん。じゃあ、俺のこと見て?」
僕の顎に指が添えられたのは、ほんの数秒前のこと。
りうらの距離は、いつもおかしい。
男子同士なのに――とか、そんな常識、この人には通用しない。
「ねえ、初兎ちゃん」
唇が、触れる。
キス。柔らかくて、あざとくて、でも……優しい。
「っ……りうら、それは……」
「付き合ってないのにキスするの、だめ?」
「……だめっていうか……僕たち、まだ……」
「でも俺は好きだよ。本気で。初兎ちゃんの全部、ちゃんと欲しい」
そう言って、またキスを落とす。今度は首筋に。
ずるい。
ずるいよ。僕は、まろちゃんが好きだったのに。
けど、まろちゃんは僕を見てくれない。
友達以上には、なれなかった。
気づいたら、僕の心の中にいるのは、毎日声をかけてくれるりうらだった。
「こんなに好きって伝えてるの、俺だけなのに」
「……うん」
「今日も、初兎ちゃんに会えたから嬉しいよ」
僕は、返事ができなかった。
かわいく笑うりうらに、心がぐらぐらしてた。
もう、たぶん――
僕は、まろちゃんじゃなくて。
「りうら……」
「ん?」
「……また、キスして」
りうらの目がふわりと細くなる。
「やっと俺に堕ちてくれた?」
そう言って、優しく、深く唇を重ねた。
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