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翌日、目覚まし時計通りに叩き起こされ、こうして家の外へ放り出されている。
胃痛の記憶しか残っていない通勤に向かう道中は、昨日よりも幾分か身体が軽くなった。
『明日面談?全部吐けよ』
あっけらかんという勇斗に嫌な顔をした。
『は?お前就業経験ないからって人事の力過信しやがって』
『それが仕事だろそもそも』
『それ「だけ」じゃねえよ。労務の管理だの採用だの総務も兼業してたりとか。ほんっとに忙しいよ』
『いやでもそこで面談ってことは絶対そうじゃん。前の部分は省いてもいいと思うけど、俺はマジで言ったほうが会社のためだと思う』
『まあね?まあね?いやまあそ…うーん…でも…』
『後輩にお釣りが来たらまずいって?』
思わず勇斗の顔を見た。
『…お前、天使なのに普通の提案しかできないんだな』
「よっしーおはよ」
会社のエントランスに入ると、後ろからポン、と叩かれて振り返ると、柔太朗の爽やかな笑顔と対面した。
「おはよう」
「今日は顔色いいね。なんかあった?」
「いや、なんも…」
まさか昨日の話をするわけにはいかない。
「てかいつももっと早く来てなかった?」
「いやー、昨日タカシくんに見つかっちゃって」
「あーね。まあ普通にルール違反だからね。今どきそういう働き方の方がダサいっしょ」
「おま…」
なぜか自分を否定されたような心地に柔太朗はいつものようにクールに笑った。
「じゃ、また後で…なんか騒がしくない?」
いつもの事務室がザワザワとしている。
嫌な予感に胸を曇らせながら部屋に入ると、各々がこちらには目もくれず慌ただしく走り回っていた。
大変申し訳ございません。
その件に関しては…。
ご迷惑をおかけして、…。
様々な謝罪の言葉が行き交う中呆然と立っていると、ドタバタと走り回ってたうちの1人、潤から「あっ!」と声を上げて駆け寄ってきた。
「おはようございます!」
「あ、うん…てかこれ何?」
「あの、すいません仁人さん!昨日俺がやったやつ数値が間違ってたみたいで」
そこでスッと血の気が引いた。
間違いなく、退勤前に処理していたものだ。
…どうしてだ?あんなのマクロ使ってやればミスるものでもないのに。
「…俺が確認したやつ?」
「…はい、松尾です。…あ、お疲れ仁人。…え?…そっか、ほんならまた予定立て直そ」
「なんかあったんすか」
「あ、いや…面談の約束あったんやけど、総務が立て込んでて行けそうにないって。総務部長からも面談リスケの連絡きとったし…昨日何かあかんことしてもうたかなあ…」
「ん?…でもあれ、そもそもの数値が…」
雲行きは徐々に怪しくなってきた。
一つ頭抜けて高いビルのところから見える窓越しに、大きく翼を羽ばたかせながら、頬杖をついてその様子を眺める。
…雨降りそうだな。
洗濯物仕舞うか。
曇天の下を翼を広げ飛んで行った。
…思ったより早かったなあ。
これなら空に帰る日もすぐかもしれない。