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コメント
2件
めちゃどきどきする。。♥︎ 早く続き見たい、!
⚠キス表現🈶
「いいか?これから行く場所は危険だから絶対オレから離れるなよ。」
もう軽く100回は聞いた言葉に深いため息を吐く。
どうやらこの後イザナさんと一緒にどこかへ出掛けるらしい。
『分かりましたって…』
まるで幼子に言いつける親のように何度も何度も同じことを約束してくるイザナさんに形だけの相槌を打ち、息を吐き出す。ここまでくると最早めんどくさい。
『私の事いくつだと思ってるんですか』
はあ、と何度目かの肺の奥底から湧き出てきたような重いため息をつく。
「15はまだガキだろ。」
そう言うイザナさんの顔には先ほどの酷く疲れきった虚ろな表情は消えており、いつもように綺麗なのか不気味なのかよく分からない、濁った甘い笑顔が表情を彩っている。
『18もガキだと思うんですけど。』
ガキだガキだと煽って来るイザナさんにジトッと目と唇をとんがらせ言い返す。
3歳の壁はそんなに高いのだろうか。自分の手のひらとイザナさんの手のひらの大きさを見つめながらそうぼんやりと考えていると突然、グッと両頬を片手で持ち上げられ、自身の顔がイザナさんの方へと無理やり近づかされる。
そのまま、え。と困惑の言葉が零れるよりも早く、柔らかい何かで口を塞がれた。
キスされたと理解する先に唇を離され、数秒間、軽いパニック状態に陥る。
『…は、え……な…っ』
人生2回目のキスは冗談のように軽いものだった。
1秒も無いほど短い、数秒触れるだけの軽いキス。
それだけでも15の私にとっては未知な感触で、羞恥心によって湧き出って来る熱の塊のような感情に耳に火が付いた様にカッと熱くなる。
「顔真っ赤」
止まらない羞恥心を押し殺し、庇うように唇を手で隠し距離を開く私と反対に余裕そうな笑みを浮かべるイザナさんを涙の滲んだ目で軽く睨みつける。
「…これがオトナとガキの差」
そんな私の感情を見透かすようにイザナさんは自身の唇をなぞり意地悪に笑った。
「悪かったって。でもまさかキスだけでそんな赤くなるとは」
『もういいです、ごめんなさい、あのキスって言わないで!!!』
数十分経ってもまだあのキスの生々しい感触が唇にこびりついている。ほん一瞬だけ、それに加え、2回目だというのに全然消えないキスの感触にため息が零れる。
今日でもう何度目のため息だろう。幸せ全部逃げちゃったかなぁなんて、喉を掠める空気にふとそんなどうでもいいことが脳裏を過る。
『……はぁ』
そんな私の重いため息に被せるように突然、ピリリと無機質な携帯電話の音が室内に響いた。
『うわ、びっくりした』
びくりと体を震わせ、目に悪そうな光と甲高い呼び出し音を頼りに音の聞こえる方へと視界を映す。視界の先にはテーブルに置かれていたイザナさんのであろう携帯電話が上下左右に小刻みに震えているのが見えた。
「わり、電話」
『お気になさらず。』
そう一声かけ合い、イザナさんは電話に出た。
しばらくしてカメラや電話など機械特有のあのノイズがかかった誰かのぐぐもった声が微かに電話のスピーカーから聞こえてくるのに気付く。距離があるからボソボソとしか聞こえず会話の内容は分からないが、イザナさん真剣な表情と声を見て真面目な話なんだろうな、とぼんやりと察する。
イザナさんの喋り声と、時折電話から聞こえる誰かの声をBGMに、私はホテルの窓から覗く久しぶりの青空の眩しさに目を細めた。
「…分かった、今すぐ行く。車用意しとけ。」
短くそう呟くとイザナさんは手早く電話終了ボタンを押し、携帯を耳から離した。
そして、私の方へ視線を向け、
「○○、出掛けンぞ。」
珍しく何かを決意したようにそう言った。
続きます→♡500