テラーノベル
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あの日、組員たちとの「会議」で、元貴への「色気」という言葉を認識してしまった滉斗は、それ以来、元貴を見る目が変わってしまっていた。
(俺…元貴のこと、そういう目で見てたってこと…? キモくない…?)
自己嫌悪にも似た感情が胸を過ぎる。元貴は、あくまで好意で、純粋に接してくれているだけなのに、自分はそんな相手を性的な目で見ていたのではないか。
そう思うと、罪悪感と、訳の分からない熱がこみ上げてきた。
それからというもの、滉斗は元貴と二人きりになる度に、妙に緊張してしまうようになった。
これまでは、どんな話でも淀みなくできたのに、言葉が喉に詰まる。視線も落ち着かず、元貴の顔をまともに見ることができない。
「ねぇ、滉斗。今日の授業、面白かった?」
元貴は、いつものように無邪気な笑顔で問いかけてくるが、滉斗は「あ、えっと…はい…」と、しどろもどろに答えるのが精一杯だ。
(やばい、なんか変だぞ、俺…)
滉斗は、自分の変化に戸惑っていた。元貴は、そんな滉斗の様子を不審に思う素振りを見せたが、特に問い詰めることもなく、いつものように振る舞う。
元貴が、今日あった出来事を朗らかに話している時だった。
彼の袴の襟元が少しだけ開き、そこから覗く白い首筋に、小さな黒子を見つけた。ふわりと揺れる、柔らかそうな黒髪。
その一つ一つが、滉斗の心をザワつかせ、心臓がトクン、と大きく鳴る。
(なんでこんな時に…!)
自分の意識の変化に、滉斗は内心で頭を抱えた。
元貴は、話の途中で突然立ち上がった。そして、何の躊躇いもなく滉斗の膝の上にすとんと座り込む。
「ねぇ、滉斗。ちょっと疲れたから、これでいい?」
元貴はそう言うと、滉斗の腕を掴み、自分の腹のあたりに巻き付けさせた。
元貴の体が、完全に滉斗に預けられている。背中から伝わる体温、そして柔らかい腹の感触。それは、普段の元貴の行動だった。
実際、何度かこうして甘えられたことはあった。しかし、昨日、元貴に対して抱いていた気持ちを自覚してしまった滉斗は、心臓が高鳴り、全身の血が逆流するような感覚に襲われた。
元貴のお腹に回した腕が、ガタガタと震えだす。こんなにも簡単に、自分の理性は壊れてしまうのか。
元貴はそんな滉斗の動揺には気づかないフリをして、まるで子供のように甘えてくる。
滉斗の肩に頭を乗せ、彼の髪が滉斗の首筋から鎖骨のあたりを、ふわりふわりと擽る。その甘い感覚に、滉斗は身動きが取れなくなる。
「あー、あったかい…滉斗の手、気持ちいいね」
元貴は、滉斗の手を握ったり、指を一本一本揉んだり、手の甲を柔らかく撫でたりと、滉斗がどれだけ恥ずかしがっているかなんて知らないフリをして触れ続ける。
彼の指先が、滉斗の震える腕を伝って、さらに心臓を締め付ける。
(や、やめろ…これ以上は…!)
滉斗は、目の前の元貴という男に、なすすべなく翻弄されていた。彼に抱いているこの感情が、一体どこへ向かうのか、滉斗には全く分からなかった。
ただ、目の前の温かさと制御不能な心の高鳴りだけが、今の現実だった。
元貴は、滉斗の震える腕を自分の柔らかな腹に巻き付けさせ、満足げに目を閉じている。その瞳は、まるで深い海のようで何処か掴みどころがない。
しかし、元貴はやはりただの無邪気な青年ではない。組の若頭として、人の感情の機微には鋭い。滉斗の尋常ではない震えと、言葉に詰まる様子に、ゆっくりと目を開けた。
「ねぇ、滉斗」
元貴の声は、いつものように穏やかだった。しかし、その声には滉斗の心を射抜くような、鋭い響きが含まれていた。
「…どうかしたの? 今日、なんか変じゃない?」
元貴は、首を傾げ、不思議そうに滉斗の顔を覗き込んだ。その顔は、本当に滉斗の異変を心配しているように見える。
(や、やばい…! バレてる…!?)
滉斗は、一瞬で顔面蒼白になった。心臓がドクドクと警鐘を鳴らす。
元貴の視線が、まるで心を見透かすように真っ直ぐで、滉斗はごくりと唾を飲み込んだ。
「い、いや…その…別に、何でもないけど…?」
滉斗は、必死で平静を装おうとするが、声が上ずってしまう。視線は泳ぎ、元貴の顔を見ることができない。
元貴は、そんな滉斗の様子にフッと眉を下げた。本当に心配しているような、困惑したような表情だ。
「何でもないのに、そんなにガチガチなの? 手も震えてるし、顔も赤いよ。」
元貴の指が、滉斗の頬にそっと触れる。その指先から伝わる熱に、滉斗の体はさらに硬直した。
「そ、それは…部屋が…!部屋がちょっと暑いから…!」
滉斗は、苦し紛れにそう答えた。しかし、快適な温度に空調設備してある屋敷の部屋が暑いというのは、どう考えても無理がある言い訳だ。
元貴は、滉斗の必死な言い訳を聞きながら、じっと滉斗の顔を見つめていた。
その瞳の奥に、僅かながら楽しそうな光が宿っているのを、滉斗はもう見逃さなかった。
(こいつ…やっぱり、気づいてるのか…!?)
滉斗の脳裏に、昨日の元貴の悪戯っぽい笑顔が蘇る。もしかして、元貴は滉斗のこの動揺を、最初から楽しんでいるのではないか。
そう思うと、羞恥心と悔しさで滉斗はますます身動きが取れない。
元貴は滉斗の膝の上から降りると、くるりと振り返り、悪戯っぽく微笑んだ。その視線は、まだ滉斗の心を弄んでいるようだ。
「ふーん。暑いんだ? じゃあ、冷たいお茶でも淹れてあげようか?」
元貴はそう言いながら、お茶を淹れる準備を始めた。いつも通りの、無邪気で優しい元貴。
しかし滉斗はもう、彼がただの「優しい青年」ではないことを、嫌というほど思い知らされていた。
この状況が、一体どこへ向かうのか。滉斗の心臓は、まだ激しく高鳴ったまま。
ごめんなさいこの話もエッチまで時間かかりそうです
原因: 若井がピュアすぎる
コメント
7件
ドゥワアアアアアアアア
ピュアな若井さんかわいいね(^^)
見透かしてるの😻😻