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「それにしても盲点だったな。シーカー以外の人と一緒に遠征というのが、こんなに快適になるとは」

「だからって連れ出せないよ? 体力は違いすぎるし、危ない所にもいくんだから」

「わーってるよ……」


ロンデルから直接帰還命令を受けたシーカー達は、クリムの身の安全に気をつけながら、シュクルシティへと順調に向かっていた。

山に向かう時は、半分ほど子供の足に合わせた為に2日かかっていたが、大人だけで移動した今回は、のんびりとクリムが料理していても1日半で街へとたどり着く事が出来た。

そしてシュクルシティが目前という丁度その時だった。


「お~い、クリム~!」

「ん? ……あ! パフィだし!」


シーカー達と一緒に街を目指していたクリムは、背後から聞こえた声に反応し、振り向いて手を振る。


「なんだ、もう終わったのか? さすが総長だな」

「終わったとは限らんだろ。進展は間違いなくあっただろうが」


リーダーが後ろから接近するピアーニャ達を見て、笑みを浮かべながらそう呟く。というのも、山に向かった時にはいなかったはずの太った人々が乗っていると、どうしても目立つからである。何かあったと思うのは、当然の事だった。


「うわー、すっかり育っちゃった人達が……」

「なんかすげーな……ああなると悪魔に攫われるんだな」


シーカー達が口々に、見たモノの感想を呟いていく。偶然居合わせた通行人も、何事かとチラ見していく。


「おまえたちゴクロウだったな。ちょうどこんなところで、おいつくとはおもわなかったが」

「ああ、お陰で報告も楽そうだ」

「でも、私達は別に報告出来る事無いでしょ?」

「……言うな」


ピアーニャがシーカー達に指示を出し始め、ロンデルが太った人達を降ろし、パフィ達とクリムは再開の挨拶。そして置いて行かれたくないアリエッタは、必死にミューゼにくっついて行動する。


「おつかれだし、パフィ、ミューゼ。アリエッタも怪我とかないし?」

「アリエッタのお陰で、すぐに助けられたのよ。その後が大変だったのよ」

「う……」

「どうしたし? ミューゼ顔色悪いし」


移動しながら酔っている間の事を聞いていたミューゼは、恥ずかしそうに目を逸らす。顔色が悪いのはもちろん……


「お酒の飲みすぎで二日酔いなのよ」

「……ミューゼにはまだ少し早いし。何してるし」

「そんなこといわれてもぉ……」


青くなった顔を赤らめながら、モジモジし始める。しかしパフィは構わず、山での出来事をかいつまんで話す。

耐えきれなくなったミューゼは、膝を抱えて落ち込んでしまった。


(みゅーぜが落ち込んだ? よく分からないけど、ここは男を見せる時だ!)


早くも名誉挽回の時が来たとばかりに、真剣な顔で意気込むアリエッタ。

少し悩んだが、まずはミューゼにいつもやってもらってる通りに、ぎゅ~をしてみる事に。


(ちょ、ちょっと恥ずかしい。僕のギュ~で元気でなかったらもっと恥ずかしい……でもやるしかない!どうか嫌われませんように!)


前世の影響か、情けない方面に考えをシフトしつつも、ミューゼの為に勇気を振り絞って手を伸ばす。緊張しながら、丁度胸の高さにあるミューゼの頭を抱き込み、引き寄せ……られないので、自分からくっつきに行く。そのまま頭を撫でた。


(で、できた。えっと、ここからどうしたらいいんだろう……元気になるまで撫でればいいんだっけ?)


次にどうすれば良いか悩みながら、頭を撫でていた…その時だった。


ふにっ

「あぇ?」


不意に妙な感触に包まれるアリエッタ。すぐに冷静になって横を見てみると、ミューゼの手が背中とお尻に伸びている。


(えっと……いくらみゅーぜでも、ちょっと恥ずかしい……かも)


撫でていた手を止め、困った顔でミューゼの頭を眺め、アリエッタは声をかける事にした。


「みゅー…──」

「ああありえったあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ひっ!?」


ゆっくりと……アリエッタの胸にくっつけていた顔を上げ、濁った上目遣いと地の底から這い出るような声で、いたいけな少女の名を呼ぶミューゼ。

アリエッタは思わず手を放してのけ……れずに、視線を合わせてしまう。


(ひぃぃぃ!? なんでなんで!? もしかして滅茶苦茶怒ってるの!? 怖いっ!)


前世で見たホラー映画を彷彿とさせるミューゼの行動に、アリエッタは体を強張らせる。そして次の瞬間、2人の叫び声が街の前に響き渡った。


「ぅぁあありえったああああああああああ!!」

ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾ

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」


ミューゼによる、色々物理的に歪みそうな程の頬ずりが、アリエッタを襲う。

しかしアリエッタは逃げない。逃げる事を許されない。そして逃げたら嫌われるという思い込みが、最初から退路など無い事にしている。

つまり、少女には変態を受け入れる道しか無かった。


「ああもうかわいいかわいいカワイイカワイイィィェェェァァァァ!!」

「ごべっ…なさ…ごめな…ぃ」(やっぱりミューゼ怒ってるんだぁぁ!! 謝るだけじゃ許されないんだ! これお仕置きなんだ!)


ズリズリされながら必死に謝ろうとするも、声になっていない。さらに怒られているという思い込みが、アリエッタから抵抗する力を失わせている。

もちろんミューゼは怒ってなどいない。落ち込んでいる所にアリエッタに慰められて、うっかり理性をふっ飛ばしてしまっただけである。

そんな光景に、周囲の人々は完全に引いていた。


「はぁ……ミューゼ、ミューゼ。……こりゃダメなのよ」


パフィはため息をついて、高速でズリズリしているミューゼの背後から……


「ふんっ!」

べしっ

「へぐっ!?」


手刀をミューゼの頭に振りおろして、強制的に止めた。


「アリエッタが限界なのよ。いい加減にするのよ」

「ぇうぅ……」


急いでアリエッタを奪い取るが、異常で異様な愛情表現ほおずりの直撃を受けてグッタリしている。

少女は最後の力を振り絞り、目の前にいる大好きな恩人達に向けて、口を開いた。


「みゅーぜ……ぱひ……ご……」(ごめんなさい、次はがんばるから捨てないで……)


だが、せっかく覚えた「ごめんなさい」は言葉にならず、アリエッタは真っ白になりながら、カクリと力尽きた。


「アリエッタアァァァァァァ!」


パフィの悲痛な叫びが、辺りに響き渡る。せめて謝る事が出来ていたら、お互いの考えている事が違う事に気付く機会もあったかもしれない。しかし残念な現実は、そんな機会を遠ざけてしまった。

そんな3人のやりとりを、少し楽しそうにロンデルが眺め、ピアーニャは憂鬱そうにため息をついていた。


「……あいつら、ワケのわからんコトと、アホなコトしかせんのか?」

「本当に、見ていて飽きないですね」




リージョンシーカー・シュクル支部。

パフィ達とは一旦解散し、クリムと一緒にいたシーカー達と、シュクル支部の組合長を含めた上層部数名、そしてピアーニャとロンデルは、奥の一室で報告会を始める事にした。


「……なんで俺達も呼ばれたんですか」

「わちらがトウチャクするまえの、ゲンバのはなしもききたいからな」

「なるほど?」


一応納得し全員座ると、シーカー達から順に報告が始まる。


「山に入ると夜になる事はもちろん知っていましたが、そうか悪魔は光の中では姿が見えるのか……」

「しかしそれほど強力な光を用意するのは、外では難しいかもしれませんな」


光についての論議が軽く行われるが、その光の出どころについては触れられる事はない。その理由はもちろん……


(ぐぬぬ……総長の命令じゃなかったら全部喋ってるのに!)

(喋りてぇ! 喋ってなんとなく自慢してぇ!)

(あの子が狙われるかもしれないって言ってたのに、こいつら喋りたそうにしてるわね……)


喋りたそうにしている仲間と、それをジト目で睨むクリムと一緒にいた女性。

ピアーニャはアリエッタを守るために、しっかりと口止めをしていたのだった。


「悪魔達は姿さえ見えれば、特に戦う力などはありませんでした。理由は…このラスィーテが平和だからです。危険な存在と戦う事が無かったのでしょう。これからも夜の中でのんびりと暮らしていくそうですよ」

「悪魔に詳しいですな、副総長」

「ええ、その悪魔本人に聞きましたから」

「ヤツらは喋れるのですか!?」


驚愕する一同に、ピアーニャとロンデルは静かに頷く。

山の上でウッドゴーレムを破壊した後、人型の悪魔はジュルデレーフェと名乗り、2人と話し合いをしていた。

その時に『悪魔』と呼んでいた存在の本当の意味を知り、そしてこの世界ラスィーテの真実を知ることとなった。だが、ピアーニャはそこには触れず、太らなければ悪魔からは何もしてこない事、夜からは基本出てこない事を告げ、今回保護した者達は一旦ファナリアで預かり、痩せさせてから送り返す旨を伝えた。


「では、今後太った者が攫われてしまったら……」

「そんなのはジゴウジトクだ。さらわれるコトがわかってるんだから、ウンドウくらいするようにテッテイしろ」


ピアーニャもロンデルも、この件については中立を決め込む事にしていた。しかし、その理由は語られる事は無かった。


「アリクルリバーについてですが、悪魔の偉い方と交渉した結果、濃度を元に戻していただける事になりました。その代わり、ファナリアから家畜をいくらか悪魔に贈呈します。そしてシーカーからは出来る限り悪魔の領域に関わって欲しくないそうです」

「だからリージョンシーカーには、ヨルのリョウイキにいくシゴトはうけつけないコトになる。できるかぎりテッテイしてくれ」

「承知しました」


最後にロンデルは、掌に悪魔を乗せて一同に向けて警告をする。


「こちらの小さな悪魔を、リージョンシーカー本部で預かる事になりました。友好の証であるとともに、不干渉でいる為の監視役でもあります。不正に侵略行為などをした場合は、厳罰となりますのでご注意を」


組合長達は渋々納得するが、元々悪魔がいるとされている場所にはあまり関わってこなかった為、現状維持ということで落ち着いた。

話が終わった後、シュクル支部の体制やシーカー達の仕事について報告を聴いたり、ラスィーテの他の近況の話をしたりして、施設を出る頃にはすっかり夜になっていた。

保護した人々は支部預かりという事で、今日のところは攫われないようにと地下で寝てもらう事になり、夜が明け次第ファナリアの本部へと送られる事になった。

一方ピアーニャとロンデルは、ミューゼ達と合流し、橋が壊れて渡れない川を空を飛んで渡り、ムーファンタウンへと向かう事になる。当然ピアーニャは不機嫌である。


「ぴあーにゃ」


暗くなるまで街を見て回っていたミューゼ達は、会議が終わる直前に支部へと戻ってきていた。そして復活していたアリエッタは、でピアーニャの姿を見ると駆け出し、当たり前のように手を取って笑顔でエスコートし始めたのだった。

ピアーニャが支部から去って姿が見えなくなるのを確認した組合長。眉間にしわを寄せる程の力の入った顔で扉を閉め、肩を震わせるシーカー達や口を押える受付嬢達を見て頷いた。


──その夜、リージョンシーカーから笑い声が絶えなかったそうな。

からふるシーカーズ

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