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視点 🐼
第七セクター、第三区画。
いつもの集合場所。
「……で?」
腕を組んだ時也の第一声は、それだった。
「勝手に第六セクター行って、ボコられて、勝手に仲間増やして帰ってきたってこと?」
目が笑っていない。
た、助けて〜?
「ごめんって……」
「ごめんで済むと思ってるのが問題なんだよ」
ぴしゃり。
横で瑠久があわあわ小声で言い、玲央は溜め息をつく。
きんときは苦笑いだ。
その視線の先に立っているのは、瀬斗。
「えっと……俺は桐谷瀬斗。回復魔法……っていうか光魔法が使えます。よろしく……?」
軽く頭を下げる。
「なんで疑問形なんだよ」
玲央がじっと見る。
「その魔法でnakamuの肩治したんだろ?」
じゃあ実力は確かだろ。
時也は数秒黙ってから、俺を見た。
「……次やったら、もう一発殴るからな」
「それは理不尽じゃない?」
「理不尽なのはお前」
即答だった。
場の空気が、少しだけ緩む。
「でもさ」
瑠久が瀬斗に近づく。
「紫音くんのこと、よく知ってるんだよね?」
その問いに、瀬斗は一瞬だけ視線を伏せた。
「うん。たぶん今、教会にいる」
「教会?」
「第六セクター第七区画の外れ。廃墟みたいなとこだけど、あいつ……よく行くんだ」
祐希の胸が、どくりと鳴る。
「……行こう」
時也がじろりと睨む。
「今度は言ってから動け」
「だぁから今言ったじゃん!」
「そういう問題じゃない」
コレに関しては何も言えない。
__________________
第六セクター、第七区画。
再び降り立つ。
前よりも足取りは重々しい。
瀬斗が先を歩く。
薄暗い路地を抜け、崩れた建物の影を曲がると、石造りの小さな教会が現れた。
屋根は一部崩れ、ステンドグラスは割れている。
けれど、中から微かに光が漏れていた。
「いるわ」
瀬斗が静かに言う。
扉を押す。
軋む音。
中央の長椅子に、ひとり座っていた。
紫音。
膝の上に本を開き、淡々とページをめくっている。
「……騒がしいな」
顔も上げずに言う。
「図書館ならまだしも、ここまで来るとは」
「迎えに来た」
紫音の指が止まる。
「帰れ」
「帰らない」
「命が惜しくないのか」
「惜しいよ。でも——」
一歩、前に出る。
「地面の血、見てきた」
静寂。
紫音が、ゆっくりと顔を上げる。
「……何を」
「ボコられた。財布も取られた。痛かった」
「馬鹿か」
「うん。馬鹿だった」
認める。
「でも、見たよ。あそこがどんな場所か」
視線を逸らさない。
「だからこそ思った。あのままでいいわけないって」
紫音の瞳が揺れる。
「綺麗事だ」
「そうだよ」
今度は、瀬斗が前に出た。
「でもさ、スマイル」
軽い声。でも、目は真剣。
「お前、ずっと一人で背負う気?」
「関係ない」
「あるよ」
瀬斗は笑わない。
「俺が乗った船なんだから」
空気が張り詰める。
「……俺は、夢なんて信じない」
紫音の声は低い。
「信じなくていいから」
「信じなくてもいい。疑ったままでいい」
一歩。
「でも、一緒に来てほしい」
また一歩。
「俺一人じゃ無理だから」
沈黙。
割れた窓から差し込む光が、紫音の横顔を照らす。
「……死ぬぞ」
「死ぬつもりないし」
「守れる保証はない」
「守られるつもりもない」
真っ直ぐ。
「隣に立ってほしいだけ」
「隣で一緒に、世界を見たいだけ」
瀬斗が、小さく息を吐いた。
「ほら。こういうとこ、嫌いじゃないだろ?」
紫音が、ゆっくり目を閉じる。
長い沈黙。
やがて。
「……お前らは、本当に愚かだ」
本を閉じる音。
「だが」
立ち上がる。
「愚かさに付き合う余裕くらいは俺も持ってるさ」
祐希の心臓が跳ねる。
「つまり……」
「期間限定だ」
紫音はぶっきらぼうに言う。
「理想が現実に踏み潰される瞬間まで。そこまでは見届けてやる」
瀬斗が、くすっと笑った。
「素直じゃないなぁ」
「黙れ」
でも、その声は少しだけ柔らかかった。
祐希は拳を握る。
やっと。
やっと、一歩。
「……よろしく、紫音」
紫音は視線を逸らしながら、小さく言った。
「足を引っ張るなよ」
それは。
確かに、了承だった。
第六セクターの空は暗い。
それでも、教会を出る足取りは
ほんの少しだけ軽かった。
「そういえばさぁ。瀬斗が言ってるスマイルって紫音くんのこと?」
瑠久が突然、瀬斗に聞く。
「そうそう。俺が紫音につけた渾名。」
「じゃあ瀬斗の渾名は?」
紫音が少し間を開けて話す。
「………きりやん」
「きり……なんて?」
「き、り、や、ん!」
「あぁ桐谷だからね」
納得したように頷くきんとき
「じゃあきりやん!スマイル!改めてよろしく!」