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※今まではずっとフランスのお菓子の名前でしたが、今回のバウムクーヘンはドイツのお菓子です。
仁人side
『仁人はお兄ちゃんだから…ね』
我慢することは得意だった。
そもそも世の中、思い通りにならないことなんてごまんとあるって子供ながらに理解していた。
弟のことは可愛いと思ってたし、家族仲も悪くなかった。
だけど、そう言われて弟が優先される度に本当の自分が薄れていく感じがした。
本当の俺ってどんなだろう?
時々そう思う。
星座、血液型、MBTI…いろいろツールがあるけどさ、共感できる部分もあればできない部分もあるわけで。
こういう仕事をしていると、ブランディングとかパブリックイメージもあるから
そういう役割を期待されると、ついビジネスとして演じてしまうよね。
そういう部分を切り取られて、『仁人君はこうだよね』って言われてもさ。
それは俺だけど、俺じゃないから。
…だから時々自分がわからなくなる。
🩷「これ仁人にやるわ。こういうの好きだろ?」
勇斗があるキャラクターのキーホルダーを投げて渡してきた。
勇斗がCMに出ているブランドとのコラボで今では手に入らない非売品のやつ。
「…まぁもらっとくわ」
なんて言ってはみたものの内心めちゃくちゃ嬉しい。
この黄色のゆるキャラが可愛くてこっそり集めていたから。
キーホルダーを眺めると自然と顔がニヤけた。
🤍「ほら、仁ちゃん嬉しそう」
🩷「あいつ可愛いって言われるの嫌がってる割に、可愛いの好きなんじゃん」
🤍「仁ちゃんは天邪鬼だからね。でもそこが可愛いよね」
🩷「…まぁね」
俺に聞こえないところで柔太朗と勇斗がこそこそ話していたらしい。
「あーラーメン食いてぇ…」
❤️「仁ちゃん、一緒に行こか?」
「は?ひとりで行くからいい」
❤️「…え?そーなん…」
舜太が見えないけど犬みたいに耳と尻尾をさげてしょんぼりする。
俺はまた独り言が声に出ていたらしい。
🤍「ラジオまで時間あるでしょ?勇ちゃんと太ちゃんも誘ってみんなで行こうよ」
「…しゃーねぇなぁ」
❤️🤍「やったー!」
舜太の後ろから柔太朗も誘ってきて、俺の返事を聞いたふたりは顔を見合わせてハイタッチする。
どうせお財布担当なんでしょ?ってしぶしぶ行くフリをしてしまうのは、ご飯に誘ってもらうことがあまりなくて照れてしまうから。
本当はすげー嬉しいのを抑えてる。
なんか俺って…面倒くさい奴かも。
ご飯を食べてからみんなと別れてラジオ放送局へ向かう。
今日はなんと勇斗が車で送ってくれた。
この前納車したばかりの車で、まだメンバーを乗せたことがないらしい。
そんな些細なこともちょっと嬉しかったりして。
このままドライブが続いたらいいのに…
ラジオ局が見えてきた時、勇斗が低い声で切り出してきた。
🩷「仁人には伝えておかなくちゃいけないと思って」
「何…?改まって言われると怖いんだけど…」
🩷「あのさ、俺。付き合ってるんだ」
「え…と、誰…?」
🩷「柔太朗」
「……あー、そう、なんだ。おめでとう」
一瞬で目の前が暗くなる。
勇斗の声も自分の声も遠くに聞こえた。
胃の中でさっき美味しく食べたラーメンが一気に冷たくなった気がした。
「あ、車…俺が一番に乗っちゃっていいの?気にしない?」
🩷「たぶん、あいつはそういうの気にしないから」
「そっか…なら、いいけど…」
そのあとのことはあまり覚えていない。
気がついたら朝だったから。
マネージャーに聞いたら、いつも通りラジオをこなして帰っていったらしい。
起きたら目が重くて、鏡で確認したら見たことないくらい腫れていた。
どうやら俺は、勇斗のことが好きだったらしい。
気付いた時にはすでに失恋してた。
なんてセンチメンタル…
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