テラーノベル
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おら子が住む集落は、アストラルの高度な技術とは対照的に、素朴で自然に寄り添った生活を営んでいた。木とつたで編まれた住居、手作りの道具。そして何よりも、皆んなが互いを思いやり、助け合う暖かさがあった。
おんりーは集落の隅に与えられた小屋で、アストラルへの帰還方法と、おら子の能力について調査を始めた。
「………。」
彼の頭の中は、論理と分析で埋め尽くされていた。しかし、そんな彼の研究生活は、おら子の無邪気な好奇心と、ぽわぽわとしたドジによって常に妨害された。
「ねぇおんりー!これ見て!私が作った花冠!似合うかな?」
ある日は、彼の研究資料の上に、草花で作られた妙な輪っかが置かれていた。
「おんりーも付けてみてよ!絶対似合うよ!」
「そんな得体の知れないもの身につけられるか…」
「え〜、ひどい…。せっかくおんりーの分も作ったのに、、」
「………。」
「…隙あり‼︎」
「うわっ」
「えっ…すごく似合ってるよ…!」
「…頼むから邪魔しないでくれ」
「顔赤い〜初めておんりーのそう言う顔見た!」
「…⁉︎いつのまに…」
またある日は、彼が精密に分析していた石板を、おら子が「きれいだから」と撫でた途端、模様がわずかに変化してしまい、おんりーは頭を抱えることになる。
「君は…もう少し注意というものを持たないのか?」
おんりーはいつも冷たく突き放すように言う。しかし、おら子は「ごめんなさーい!」と謝りながらも、すぐにけろっとしてしまうのだ。彼の冷たい言葉は、彼女の天真爛漫さには効かない魔法のようだった。
だが、そんな日々の中で、おんりーの心にも微かな変化が訪れていた。
無意識のうちに、おら子の動きを予測し、危険を察知するようになっていた。
ある日、集落の子供達がかけっこをしている最中、急に現れた魔獣に襲われそうになる事件が起きた。
子供達の叫び声に、集落の人々が慌てて駆け寄る中、誰よりも早く動いたのはおんりーだった。
彼は迷うことなく魔獣に立ち向かい、あっという間に魔獣を倒し、子供達を安全な場所まで避難させた。魔獣と戦いながらも表情一つ変えないおんりーに、集落の人々は驚きと感謝の目を向けた。
「おんりー、すごい‼︎」
おら子は目を輝かせ、彼に駆け寄った。おんりーは軽く息を吐き、「取るに足らないことだ」と一蹴した。
しかし、その時おら子はおんりーの足元に「水の結晶」のようなものを見つけた。それは、彼が魔獣に攻撃するするために使った、アストラルでは初歩的な魔法の痕跡だった。
グラウンドの民には理解できない現象。
おら子は何も言わず、その結晶を拾い上げ、手のひらでそっと温めた。やがて結晶は水滴となり、彼女の指先から、かすかに光を放ち始めた。
おんりーは思わず、その光に見入った。彼の魔法の痕跡を、彼女の能力がわずかながら変質させたのだ。
「不思議だね。おんりーの魔法。私にもちょっとだけ、わかる気がする。」
屈託のない笑顔でそう言うおら子に、おんりーは初めて僅かながら戸惑いの感情を覚えた。アストラルでは感情を制御することが当然とされてきた彼にとって、おら子ような純粋な感情の揺れ動きは、まるで未知の領域だった。
そんな、おんりーの日常におら子が少しづつ染み込んできた頃だった。集落の長老が、顔色を変えておんりーの元へやってきた。
「若者よ…空の民の船が、この地に近づいている。数は……相当なものだ。」
おんりーは顔色を変えた。それは、アストラルがグラウンドに大規模な部隊を送り込む際に使う、特有の紋章を掲げた船団だと直感した。まさか、自分の行方不明が原因で、こんな大部隊が派遣されたのか。
そして、その船団の中心には、一際大きく、高貴な紋章を掲げた船がいた。
その船室では、おんりーの婚約者候補であり、アストラル貴族の令嬢である藻舞美(もぶみ)が、冷たい笑みを浮かべてグラウンドの地図を睨んでいた。
「ようやく見つけたわ、オンリー。そして……あの忌々しいグラウンドの汚れた血を根絶する、絶好の機会だわ」
藻舞美の瞳には、アストラル人としての絶対的や優越感と、おんりーへの執着が燃え上がっていた。
1700字も書いたわ
集中するとあっという間ね
コメント
1件
藻舞美と書いてもぶみは草 めっちゃ面白いです!