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藤澤サイド
「わかっ、…ごめっ、…!!」
隣から、魘される声が聞こえてくる。
起きて隣の元貴を見る。
苦しそうに顔を歪めて、浅い呼吸を繰り返している。
頰にはたくさんの涙が伝い、元貴は首を抑えて蹲る。
さっきから繰り返されている言葉は、『若井、ごめん』だろうか。
「元貴、」
背中を摩ると、元貴は苦しそうに浅い呼吸を繰り返しながら僕に抱きついてきた。
「ごめっ、ゆるしてっ、…離れないから、!まだ満たすからぁっ、!」
「元貴、大丈夫。安心して」
元貴のぎゅっと瞑った目からは透明な涙が何筋もこぼれ落ちていた。
辛くて、苦しそうで、悲しい表情。
「いや、!…まだイけるっ、…!嘘ついてごめんっ、ゆるしてっ、…!まだ、満たしてあげるからっ、だからっ…!」
僕に抱きついて大粒の涙を溢しながら泣きじゃくる元貴。
許しをこいて、『離れない』『満たすから』を繰り返す。
「大丈夫、元貴。怒ってないよ」
「…っ、ごめんっ、若井、」
やっぱりだ、
元貴は若井の夢でうなされていた。
「大丈夫、元貴。吸って、吐いて」
「ゆるしてっ、俺が悪かったからぁっ…」
元貴が今までにない以上の強さで抱きしめてくる。
僕の足がテーブルにあたり、テーブルの上のマグカップが床に落ちる。
茶色いココアがフローリングを濡らしていった。
「元貴、大丈夫。僕だよ」
元貴の顔を掴んで僕の目をみさせる。
元貴と目が合う。
元貴は大きく目を見開いて、抱きしめる力を抜く。
そしてまた、強く抱きしめた。
「涼、ちゃぁっ、…」
「よしよし、元貴、怖かったね」
「若井にっ、首、締められてっ、俺、ずっと若井のために腰、振ってっ、…」
「大丈夫、僕がいるから」
元貴は幼子のように泣きじゃくった。
目からたくさんの涙を溢して。
口からは嗚咽を漏らして。
若井の甘い言葉に踊らされて、尽くしてボロボロにされた元貴。
傷ついている。
元貴は、若井に心を壊されて、
若井の悪夢をみて、
眠れずに、食事も取れず、毎日のように寂しさに埋もれて。
「大丈夫、僕は、離さないから」
「涼、ちゃん…ありがとっ、…」
いいんだよ、元貴。
窓の外を眺めると、もうすっかり日が昇っていた。小鳥の声が聞こえてくる。
♡&💬よろしくお願いします
コメント
1件
胸がすんごくギュッとなった…!!マジで最高神作品